今から約20年前、まだまだ電気自動車が一般的ではなかった時代に登場したハイパーミニ。確かそんなクルマあったよなーという認識の人が多いだろう。しかし、このクルマは日産の将来のEVを左右することとなる偉大なクルマだったのだ。

文:ベストカーWeb編集部/写真:日産、ベストカーWeb編集部

■衝撃の400万円スタートのハイパーミニ

現在で言うところの「街乗りEV」的なポジションだが、当時としてはその見た目も相まって間違いなく異端な存在だったであろう

 ハイパーミニは、全長2665mm、全幅1475mm、全高1550mm、車両重量840kgの超コンパクト2人乗り都市コミューターで、当時の電気自動車としては珍しい「軽電気自動車」としての登場であった。

 現在で言うところの「街乗りEV」的なポジションだが、当時としてはその見た目も相まって間違いなく異端な存在だったであろう。

 その前にも日産のプレーリーをベースとした1997年登場の「プレーリーEV」があったが、そちらはプレーリーをベースとした電気自動車で、そこそこ大きいボディサイズだったが完全新規設計のコンパクトEVはハイパーミニが初だ。

 そんなハイパーミニだが、発売は2002年の2月で、当時の新車価格は衝撃の400万円。今だとリーフと同じくらいの価格なのでその差は歴然だ。

 また、当時はまだ普及率が低い事もあってか200V充電器が付属しており、200V充電器付車が400万円、キャスター付200V充電器付車が401万5千円となっている。

 まぁそれでも今と比べても格段に高い。だがその分当時から補助金が存在しており、軽自動車は最大で150万円の補助金が受けられたのである。

■最先端技術がモリモリだった

 そんなハイパーミニだが、搭載している技術がヤバいのだ。

 まず、アルミスペースフレームを使った軽量で高剛性の専用ボディにランフラットタイヤの採用によるスペアタイヤレス、当時としては世界標準の約4時間でフル充電が可能だった充電システム、樹脂リサイクル材の採用等、優れた技術を数多く採用した。

 また、日産が開発したリチウムイオンバッテリーを搭載し「いっぱい走れる1km、1円。100km走って、たったの100円」をキャッチコピーに1回の充電で15km走り、最高速は時速100km、航続距離が115kmもあり、街乗りEVとしては申し分ないスペックを誇っていた。

 因みに、この1km1円は当時の深夜電力料金で充電した時の金額となっている。

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■間違いなくサクラで活かされたよね

2023年度のサクラの販売台数は3万4083台と2022年度に引き続き、2年連続で47都道府県EV販売台数ナンバーワンを獲得している

 ハイパーミニは登場から2年後の2002年に販売が終了し、その後はプレーリーEVやハイパーミニのから得た技術を活かし、2010年に日産から「リーフ」が発売された訳だが、その間に軽電気自動車が出ることはなく少々寂しい気持ちがあった。

 ところが、2019年東京モーターショーで軽EVコンセプト「IMkコンセプト」が発表された。これがのちの日産 サクラとなるのだが、当時現地で実車を見た筆者は思わず「あのハイパーミニが時を超えて帰ってきたぞ!」と驚いた。

 その3年後に販売が開始され、展示車をいち早く日産グローバルギャラリーで見に行った。当たり前だがその完成度は高く、当時は2人だけだった乗車店員が4人となり、充電時間は急速充電を使用すれば約40分、さらに航続距離は180kmにまで増加と格段に進化した。

 また車両価格もエントリーグレードのXグレードなら約260万円で、補助金を使用すれば自治体によって最大約120万円の補助金が出るので、実質的な金額は140万円からとハイパーミニと比べて圧倒的に安い。

 そんなこともあり、2023年度のサクラの販売台数は3万4083台と2022年度に引き続き、2年連続で47都道府県EV販売台数ナンバーワンを獲得している。

 これは、軽自動車だけでなく、輸入車のEVも含めた中でのトップで、なんと2023年度のEV販売台数の約41%をサクラが占めており、実にEV新車の5台に2台がサクラなのだ。

 この快進撃には間違いなくハイパーミニが遺したリチウムイオンバッテリー技術や、フロントパネルに充電口の設置、サクラのプラットフォームを作る上で少なからず影響しているだろう。

 かつて自らの手で切り開いた「軽電気自動車」というジャンルを20年越しに形にした日産、これからのEVがどうなるのかは全くの未知数だが、是非これからも「日本電気自動車の先駆け」として陰ながら応援していきたいと思う。

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