最近何かと話題のカスタマーハラスメント(カスハラ)。サービス業に従事する人の約半数が、2年以内にカスハラの被害にあったという。最近では自車販売業もカスハラが横行する場所である。当時はカスハラという言葉すらなかったが、筆者が実際に受けてきた顧客からの問題行動をいくつか挙げながら、自動車ディーラーが従業員をカスハラからどう守るべきなのかを考えていこう。
文:佐々木 亘/写真:ベストカー編集部
■営業マンとサービスフロントが特に危険!?本当にあった顧客のこわ~い問題行動
オープンなスペースに見える自動車ディーラーの中には、顧客とスタッフが1対1になるシチュエーションが多くある。その筆頭格が、営業マンが行う「商談」だ。
商談専用のスペースが用意され、間仕切りだけならまだいいが、個室や半個室のような場所で行う商談も少なくない。また、最近では減ったものの、顧客宅へ出向き注文を受けるというケースもあるだろう。
周囲の目が無くなると、途端に態度を変える客は多いものだ。若手営業マンや女性営業マンが相手と見るや、「バカ」・「〇〇しろよ!」・「ふざけるな」などの暴言が飛び出し、高圧的な態度でスタッフを言いなりにしようとする輩がいる。
サービス車両の受付や引き渡しを行うサービスフロントも、同様に「口撃」を受ける立場だ。正当なクレームならまだいいが、言いがかりや過大な要求に日々悩まされている。
筆者が販売現場にいたときは、顧客が思ったよりも、「値引きが少ない」「修理費用が高い」「時間がかかる」といった事象が起きると、罵詈雑言が飛んでくるのが日常だった。
こちらとしては、正統な理由があって話をしているのだが、そんなことには聞く耳を持たずに、一方的に要求を繰り返される。
果ては、顧客宅へ軟禁、しつこい来訪や電話で仕事にならない状態に陥ったことも。「死ね」と言われたことは何度もあるし、「お前の住所を言え、家族ごとヤッてやるよ」と脅されたこともある。
こうした顧客の問題行動は、人の目に触れない場所で行われるから始末が悪い。
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■ここが一番大事!スタッフを一人にしない工夫!
カスハラの被害を少なくするには、まず顧客とスタッフがタイマンになる機会を減らすことが重要だ。そして、担当という概念はあるものの、顧客は全て、店舗全体で担当するくらいの気概を持ってほしい。
おそらく、これまで問題になっていないカスハラ被害のほとんどは、被害を受けた当人と加害者しか知らないものがほとんどだろう。
辛い苦しい思いをしても、その事象を他の人は見ていないし聞いていない状態だ。被害を当人から言い出すことも難しい。
そこで、店舗責任者や役付者は、常に店舗で何が起きているのかに目配りし、耳を立てるべきだ。店舗内のモニタリングはもちろん、この瞬間に「誰が何をどこで」行っているのか知っておく必要がある。
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■恥ずかしくなんてない!声を上げることが大事
顧客から叱責されることは、恥ずかしいことではない。スタッフは声を上げるべきだし、「困った」の声に対して上席者はすぐに行動を起こし、事態の収拾に勤めるべきだ。
また、個々のスタッフも「一人にならない」ことを念頭に置いて仕事をしてほしい。脅された、強要された時には、誰かに助けてもらえる場所にいることが大切だ。
また、一人になってしまった時に危険なことが起きたならば、携帯を通話にするでもいいし、スタッフ用のインカム(無線機)のスイッチを入れっぱなしにするでもいい。
第三者が会話を聞ける状態を作り出してほしい。自分の身は自分で守ることも必要になる。
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■勘違いだけはしてはいけない、相手も人間なのだ
営業スタッフへ会社から貸与されている携帯電話がある場合は、その使用にも管理職は気を配るべきだ。顧客と直接つながっている社用携帯で、カスハラが行われることも往々にしてあるし、一番危険なケースだと思う。
会社側としては「営業時間中以外に電話に出る必要は無い」くらいの、思い切った対応が必要になるだろう。本気で従業員をカスハラから守りたかったら、社用携帯など持たせない方がずっと安全だ。
スタッフ個人の判断・個人の裁量では追いつけないほどに、ハラスメントは横行している。だからこそ、会社という集団で立ち向かっていく必要があるのだ。
全国の自動車ディーラーには、カスハラに対する行動規範を早急に取りまとめて周知し、いち早く現場のスタッフを守る行動に出てほしい。
お客様は何をしても言ってもいい神様ではないのだ。
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