スバル6月18日、オンラインにてメディア向けのテックツアー(技術説明会)を実施した。2023年度の自動車安全性能評価「JNCAP」において、『クロストレック』と『インプレッサ』がファイブスター大賞を受賞したしたことを受け、事故低減に向けた取り組みをアピールした。
ファイブスター大賞を受賞した2台は、ターゲットカスタマーを若年層とし、自分らしさや新しい価値・体験を得られるようにと、共通のコンセプトが設定されている。クロストレックはアクティビティへの冒険心をかき立てる外観と機能性、インプレッサにはスポーティーな外観デザインが、商品コンセプトとして挙がった。スバルの商品進化のポイントには「デザイン」「走り」「安全」「ユーティリティ」の4つの要素がある。そして、今回のテックツアーにおいて特に強調されたのが、「安全性」だ。
スバル 商品事業本部の只木克郎プロジェクトゼネラルマネージャー。「スバルの開発思想が総合的に評価いただけた」と喜びを語ったスバルは、2030年にスバル車乗車時の死亡交通事故ゼロを目指し、安全技術を3つのステージに分けて技術開発を行っている。1つ目のステージには「0次安全」と「走行安全」、2つ目のステージには「予防安全」、3つ目のステージに「衝突安全」と「つながる安全」が含まれる。これらの安全技術がステージごとに詳しく紹介された。
2030年死亡交通事故ゼロを目指す3つのステージ視界の良さは、事故を起こしにくい車両作りの基本
まず、危険な状況に陥らせない、良好な視界を確保するという「0次安全」について、技術本部 車両安全開発部の荒井英樹 部長が説明。視界を遮らないピラー構造にすることによって歩行者を視認しやすくなり、後退時に他車が隠れる量を少なくする。これにより、運転者の負担を減らし、そもそも事故を起こしにくくするための取り組みだ。また、進化したヘッドライトも採用されている。「アレイ式アダプティブドライビングビーム(ADB)」や「LEDコーナリングランプ」が採用され、夜間や降雨雪時にも距離に関わらず視界を高める。
クロストレック、インプレッサの「0次安全」「広角単眼カメラ」でより広い範囲をカバー
次は、特に注目された「予防安全」に関してだ。事故といっても、交差点での事故や高速道路での事故など、様々なケースが考えられる。幅広いシーンで、どのように事故が起きるか分析し、中でも事故の多くを占める交差点での飛び出しや、出会い頭での事故に着目することで、安全運転をサポートするという。
クロストレック、インプレッサの「予防安全」その中で、スバルの運転支援システム「Eyesight(アイサイト)」に「広角単眼カメラ」が追加された。この広角単眼カメラは広角エリアで、対象を検出する役割を果たす。歩行者や、右左折時に高速で向かってくる自転車も、視野の広い広角単眼カメラが認識する。それに加えて、距離を正確に検出する「ステレオカメラ」を組み合わせることにより、様々なケースに対応する。これらの安全技術に関して、技術本部 ADAS開発部の金子法正 担当部長は「距離レンジ外や、後方にも注意を向けたい。カメラにこだわらず、レーダーやソナーなども使い総合的でフラットな対応を目指す」と述べた。
事故要因を考察し、事故を回避または被害削減できる機能を開発自分だけでなく、衝突相手も守る技術
最後に、予防安全で防ぎきれなかった点を補うものとして「衝突安全」が技術本部 車両安全開発部 衝突安全二課 中瀬哲也 課長より紹介された。クラッシュゾーンとキャビンゾーンを分け、高強度材の効果的な配置や、荷重の伝達・分散を向上させたスバルグローバルプラットフォームが、衝突時に変形することによって衝撃を軽減する。クロストレックではバンパービーム拡大や、サブフレームを配したマルチロードパス構造によって、相手車両への加害性も低減するという。また、歩行者との事故時に備え、乗員だけでなく相手の保護も目指す歩行者用エアバッグも搭載している。
クロストレック、インプレッサの「衝突安全」社内外でのコラボでさらなる進化
今回のテックツアーではAMDとの協業による、「予防安全」の進化について言及があった。AMDとの開発を通し、スバルの安全技術にAIエンジンを搭載させることによって、交差点の右左折時などドライバーが迷ってしまうような、複雑なシーンに対応する。
「予防安全」の今後の進化また、スバルの航空宇宙カンパニーと自動車事業のコラボレーションも紹介された。航空宇宙カンパニー 防衛航空技術部の丹羽史彰氏によれば、かつてはスバルの前身、中島飛行機での航空機における乗員安全技術が自動車に用いられたが、現在は逆の取り組みが行われている。ダミー人形を用いた障害値の計測、評価技術、ハイスピードカメラ撮影や衝突解析などの、これまで自動車部門で蓄積してきた技術を航空機に活用。今後については詳細な説明はなかったが、社内での協業により一丸となって、航空機やモビリティの安全性向上に努めていくとした。
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