「大変だ! 物が運べなくなる!」なんて大騒ぎした「物流の2024年問題」だが、世間の関心はそれほどでもない、ということなのだろうか?

 神奈川県トラック協会は、このほど神奈川県の運送関係者と一般消費者に「物流の2024年問題」に関する意識調査を実施したのだが、一般の3人に1人が「2024年問題」を知らないという結果が明らかになった。

 「2024年問題」をはじめ数々の物流課題は、日本経済や物流の既存サービスにも大きな影響を与えることが予想されており、一般消費者にとっても他人事ではないハズなのだが、果して……。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、図/神奈川県トラック協会

物流の2024年問題に関する意識調査のあらまし

一般消費者では3人に1人が「2024年問題」を知らないと回答

 今回の調査は、神奈川県トラック協会が神奈川県の運送関係者1035人および神奈川県の一般消費者3000人を対象にインターネットアンケートで「物流の2024年問題」に関する意識調査を実施したもの。

 この調査で「物流の2024年問題」について尋ねると、神奈川県の運送関係者の約85%は内容まで理解しているいっぽうで、神奈川県の一般消費者の約3人に1人が「名称も知らない」と回答。

 また、運送関係者が求める再配達の有料化に対し調査を行なったところ、一般消費者の約3人に1人は「有料化は考えられない」と回答。

 運送関係者と一般消費者の間で「2024年問題」に対する理解や意識の差があることが明らかとなった。

 以下は、その調査結果の詳細である。

「2024年問題」を理解している一般消費者は運送関係者の半分以下

 「物流の2024年問題」について尋ねたところ、一般消費者の35.6%が「名称も内容も理解している」、29.2%が「名称も知らない・内容も分からない」と回答した。

 一般消費者の中でも20代一般消費者に限ると、約2人に1人が「名称も知らない・内容も分からない」と答え、若年層の理解が低い結果となった。

 いっぽう、運送関係者においては85.5%が「名称も内容も理解している」と回答し、「名称も知らない・内容も分からない」は0.7%と、運送関係者のほとんどが「2024年問題」を理解。運送関係者と一般消費者の間で理解の差が生じていることが明らかとなった。

「再配達の有料化」への理解では一般消費者の約3人に1人が「考えられない」

 昨今、「2024年問題」やEコマースの急速拡大による運送件数の増加(および少ロッド化)への対応策として、再配達を削減するなど効率的な運送に向けた機運が高まっている。

  意識調査では、運送関係者から「再配達の有料化」への理解を求める声があがるいっぽうで、一般消費者の約3人に1人が再配達の有料化について「追加で支払うことはできない・考えられない」と回答し、ここでも運送関係者と一般消費者の意識にギャップがあることが明らかになった。

 また、宅配の運送事業関係者からは「再配達を希望する方に対しては2回分の運賃として1000円以上は負担してほしい」「置き配ができる施設を充実させたり、不在の場合は受け取る側が自ら引き取りに来る制度を導入してほしい」など、有料化やトラックドライバーの負担を軽減するための対応策を求める声が多くあがった。

国交省による令和6年4月の調査では宅配の再配達率は10.4%(大手3社総合)。徐々に減少しているが、政府が定める令和6年度目標の6%まではほど遠い

運送関係者からは「運賃・送料の見直し」や「ドライバーの待遇改善」を求める声

 いっぽう「2024年問題」や、その一因とも言えるトラックドライバー不足を解決するために必要だと思うことについて運送関係者に尋ねると「荷物を運ぶ適正な運賃や送料の値上げに理解を示す(71.2%)」「トラックドライバーの待遇を改善する(71.1%)」という回答が上位になった。

 具体的には「ドライバーの賃金面での待遇と待機時間の問題を改善しないと、これから先さらに人手不足になっていくと思う」「輸送会社だけでは解決できないので、荷主も理解して待機時間の削減や運賃値上げを積極的に協力してほしい」など、トラックドライバーの人手不足を懸念する声や荷主に改善を求める声が多く寄せられた。

運送関係者の「運ぶ以外の仕事」では、1日平均「2時間以上」の荷待ち時間も

 「2024年問題」の課題のひとつとして、トラックドライバーの運送以外の附帯作業である「運ぶ以外の仕事」も問題視されている。

 「運ぶ以外の仕事」には「手作業での積込み・取り降ろし」「荷物を定刻に届けるための長時間待機」などさまざまな労働があげられる。

 中でも、指定された時間から積込み・取り降ろしをはじめるまでの「1日の平均荷待ち時間」に関しては、運送関係者の約15%が「2時間以上」と回答。また、トラックドライバーの「運ぶ以外の仕事」に関して、一般消費者は半数近くが認知していないことが明らかになっている。

荷役作業をドライバーが担っている割合は半数以上。アンケートでは無償サービスかは不明だが、先ごろ改定した国交省が定める「標準的な運賃」では待機時間料に加え、荷役作業ごとの「積込料・取卸料」を運賃に加算することが明記された

 これらのトラックドライバーの実態について、運送関係者からは「法改正によってトラックドライバーの労働時間に上限が課されているが、予定外の待機や商品の持ち帰りなど発荷主・着荷主都合により拘束時間が増えてしまっている」など、改善を求める声が多く寄せられた。

 さらに「拘束時間の規制が厳しくなったことに伴い、1日に走行できる時間も限られるため、高速道路の利用は必須、高速料金の負担を発注者負担(荷主負担)にしてほしい」などの声も見受けられた。

 物流課題解決への第一歩は、これまでトラックドライバーや運送事業者の負担となっていた当たり前のサービスは、実は当たり前ではないということを再認識することだろう。商習慣を見直し、荷主も一般消費者も意識や行動を変えることができれば課題解決に向かう糸口になるのではないだろうか。

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