昔は車名を見ればおよその排気量が一目で分かったため、購入者にとってグレード名は非常に重要なポイントだった。メルセデス・ベンツの500や600のように最上位(最も高い)クルマはエンブレムを見れば一目瞭然だったわけだ。だが現代は…だいぶ様子が変わってしまっている。

文:藤野太一/写真:メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン

■昔はわかりやすかったグレード名の意味

かつては2Lは320i、2.5Lは325i、3Lは330iなどわかりやすかったBMW。現在は同じ2Lエンジンで別のグレード名となっている。

 いつの頃からか、特にメルセデスやBMWの車名と排気量が一致しなくなったと感じている人は多いだろう。あらためてその流れを振り返ってみる。

 現行のBMW3シリーズセダンを例にみてみると、「318i」、「320i」、「330e」のいずれも「B48B20A」という同型式の2リッター直列4気筒エンジンを搭載している。

 「318i」と「320i」はターボのチューニングで出力とトルクに差をつけ、「330e」はプラグインハイブリッドとなっている。

 かつては318といえば1.8リッターの、330といえば3リッターのエンジンを搭載していることを表していたが、最近ではいずれもその数字“相当”の出力&トルクを発生することを意味している。

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■わかりやすい例がメルセデス・ベンツ

3.6Lだから車名がC 36。これぐらいわかりやすいほうが良いような気がするのだが…。

 メルセデスAMGの変遷も少し振り返ってみるとしよう。1993年、初代Cクラス(W202)をベースにAMGチューンの3.6リッター直6エンジンを搭載した「C36 AMG」を発表。

 その後、4.3リッターV8を搭載した「C43」、そして5.4リッターV8を搭載した「C55」が登場する。

 そしてW204の時代にはSLS AMGにも搭載された自然吸気の6.2リッターV8エンジンを搭載した「C63」が登場する。車名と排気量がマッチしていた時代だ。

 そののち、欧州メーカーのあいだでは“ダウンサイジング”というトレンドが活発になった。
年々厳しくなる排ガス規制に対応すべく、エンジン排気量を縮小してCO2排出量を抑え、ターボなどの過給機でパワーを稼ぎ出すというものだ。

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■きっかけになったのはやっぱりダウンサイジング化

2003年に登場したゴルフ5に用意されていたTSIエンジンは燃費性能、出力の高さで世界から絶賛された。ダウンサイジング化の象徴とも呼べるモデルだろう。

 その端緒となったのが5代目VWゴルフ。搭載する「TSI」エンジンは、1.4リッターエンジンにターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせ、2リッター並みのパワー&トルクを発生することで話題となった。

 2014年にCクラスがW205へとモデルチェンジすると、「C43」は3リッターV6ターボ、「C63」は4リッターV8ターボと、この頃から車名と排気量とが符合しなくなる。

 そして、現行(W206)Cクラスに登場したAMGモデルが「C 63 S E PERFORMANCE」。車名に「E」とあるように電動化モデルだ。

 パワートレインは、フロントに 2リッターターボエンジン、リアにバッテリーとモーターを搭載する。F1由来といわれる最新の技術で、2リッターエンジンながらモーターを組み合わせ、かつての「63」以上のパワーと、最新の排ガス規制をクリアする環境性能を両立している。

 現在、「63」はAMGのトップエンドモデルを意味する記号になったというわけだ。

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