中国のスマートフォン大手の小米(シャオミ)が3月19日に発表した2023年の通期決算から、EV(電気自動車)などの新規事業に関連した財務数値の一部が明らかになった。決算報告書によれば、EV向けが大半とみられる同年の新規事業への支出額は67億元(約1388億円)だった。
シャオミは独自開発したEVの第1号モデル「SU7」を、3月28日に発売する。同社のEV参入に対しては、巨額の先行投資の負担を懸念する声が絶えなかった。しかし今回の決算では、同社の2023年末時点の現預金残高が過去最高の1363億元(約2兆8236億円)に上ったことが示された。
「潤沢な手元資金は、わが社の(スマホなどの)主力事業と新規事業のよりよい発展を支えている」。シャオミのCFO(最高財務責任者)を務める林世偉氏は、決算説明会でそう胸を張った。
「ディーラーの反応は上々」
「全国29都市の59の販売店で、3月25日からSU7の車両展示を開始する。3月28日の発売イベントでは価格を発表するほか、同日から販売店での試乗も始める。シャオミ・カーの特約店募集に対する各地のディーラーの反応は上々だ」
シャオミ総裁(社長に相当)の蘆偉冰氏はそう述べ、SU7のスタートダッシュに自信を示した。
SU7に関する自動車業界の最大の関心事は、何と言ってもその価格だ。シャオミの創業者の雷軍氏は、2023年12月に開催したイベントで「価格はやや高めだが、高い理由を納得してもらえるはずだ」と強気のコメントを発していた。
財新記者の取材によれば、シャオミ社内では「第1号モデルはたとえ採算割れでも市場シェアを取りにいく」との覚悟を固めているという。
(訳注:SU7の価格は3月28日、標準モデルで21万5900元[約447万円]からと発表された)
シャオミは(出荷台数ベースで)世界第3位のスマホ・メーカーであり、総売上高の約6割をスマホ事業から得ている。
決算報告書によれば、2023年の通期の総売上高は2709億7000万元(約5兆6134億円)と前年比3.2%減少したものの、調整後純利益は192億7300万元(約3993億円)と前年の2.3倍に増加。同社が取り組んできた事業効率改善の成果を示した。
シャオミのスマホ事業は業界平均を上回るパフォーマンスを示している。写真は2024年2月に発売したハイエンド機種「Xiaomi 14 Ultra」(同社ウェブサイトより)「消費者向け電子機器のグローバル市場は、2023年10~12月期から緩やかな回復を見せている」。蘆総裁は決算説明会でそう述べ、スマホ市場はすでに最悪期を脱したとの認識を示した。
市場調査会社のデータも、蘆総裁の見解を裏付けている。カナリスによれば、2023年10~12月期のスマホのグローバル販売台数(メーカー出荷ベース)は3億2000万台と前年同期比8%増加。直前の7~9月期まで7四半期(1年9カ月)続いた前年同期割れに終止符を打った。
スマホ事業の収益力が向上
そんななか、シャオミのスマホ事業は業界平均を上回るパフォーマンスを示した。通期決算と同時発表した2023年10~12月期決算によれば、同四半期のグローバル販売台数は4050万台と前年同期比23.9%増加。その結果、売上高は732億4400万元(約1兆5173億円)と同10.9%の増益を確保し、調整後純利益は49億1000万元(約1017億円)と前年同期の3.36倍に拡大した。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら大幅な増益に寄与したのは、製品ラインナップの上級シフトによる平均販売単価のアップや、海外市場での在庫消化の進展、半導体メモリーなど部品の調達コスト低減といった要素だ。
それらの相乗効果により、2023年10~12月期のスマホ事業の粗利率は前年同期の8.2%から16.4%に改善。また、2023年末時点の在庫の総額は444億2300万元(約9203億円)と、前年同期比12%減少した。
(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は3月19日
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