初代オデッセイを彷彿とさせるヒンジドア3列シートミニバンだったイプサム。専用キャラクターであった「イプー」で覚えている人も多いのではないだろうか? 初代と2代目が発売されていた本モデルは、ファミリー向けのクルマとしてめちゃ高い完成度を誇っていたのだ。

文:西川昇吾/写真:トヨタ

■イプサムってどんなクルマ?

イプサムは3列シート車でありながら、走りの良さを予感させる演出が多くされていた

 初代モデルは1996年5月に登場した。開発テーマは「フレンドリー&ファミリー」であり、多様な用途に応える要素満載のファミリービークルを目指したモデルであった。

 イプサム登場の引き金となった存在にオデッセイがあるだろう。ヒンジドアながら3列シートを有するオデッセイは、「3列シート×高い走行性能」というこれまで無かった特徴がウケてヒットモデルとなった。

 イプサムも3列シート車でありながら、走りの良さを予感させる演出が多くされていた。グリルと丸目4灯異形ヘッドランプはスポーツセダンを思わせる顔つきであり、躍動感のあるリアピラーやワイド感を強調するクオーターウインドウなどはこれまでのトヨタミニバンとはまた違った印象を与えるものであった。

■5ナンバーでも広々とした室内

 しかし、イプサム最大の特徴は5ナンバーサイズでありながら、7人がしっかり乗車出来て、かつ9通りのシートアレンジで優れた機能性を有していたことだ。

 フロントシートからサードシート間の寸法を大きく設定することで、多人数乗車でも快適と過ごせるように配慮されており、ウォークスルーが可能となっていたのも実用面を意識した造りとなっていた。

 特にセカンドシートは34mmのロングスライドを可能としていて、広々とした足元でゆったりと座ることができたのだ。

 また、新開発のトーションビームリアサスペンションは、車内への張り出しを最小限にとどめることが意識された。これによりラゲッジスペースの幅と奥行きを大きく取ることを可能としたのだ。

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2代目からは3ナンバーでさらに高級感アップ

上級セダンに匹敵する操縦性や走行安定性を実現していると発表された

 2001年にはコンセプトを変更して2代目へとフルモデルチェンジ。大きくなったボディは3ナンバーになり、インテリアを高級感がある雰囲気に。ワンランク車格を上げてのフルモデルチェンジとなった。

 車格が上がったことは走りやメカニズムにも表れていて、新設計のサスペンションは、上級グレードにロール抑制制御付き電子制御サスペンションである「H-TEMS」が採用された。

 高剛性になったボディや、効果的に配置された制振・遮音材、エンジンのバランスシャフトの採用によって優れた静粛性を実現していて、上級セダンに匹敵する操縦性や走行安定性を実現していると発表されたのだ。

 ミニバンらしい機能性の進化もあり、サードシート後方床下に第四量のスーパーラゲッジボックスを設定。利便性が更に高まった。

■CMなどに登場していたキャラクター「イプー」

 そういえばイプサムを思い出す上で忘れられない存在がCMなどに登場していたキャラクター「イプー」だ。ディーラーでもらえる各種グッズでイプーは大活躍していた訳だが、このイプーの存在が、「家族でディーラーにクルマを見に行ってみよう!」の流れのはしりだったように思う。

 子供向けのグッズを作りやすいキャラクターを確立させ、ファミリーでディーラーに足を運ばせるというマーケティング戦略だ。

 最近話題になったデリカミニのキャラクター「デリ丸」や、もはやダイハツの顔となった「カクカクシカジカ」など、今では様々なメーカーからキャラクターが誕生しているが、その先輩と呼べる存在はこのイプーだったと言えるだろう。

 イプサムは新たなマーケティング戦略に挑戦したモデルでもあったのだ。

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