F1の王座をほしいままにするレッドブルレーシングが、新たなクルマを発表した。お値段10億円超という究極のハイパーカーだが、我々も知ってる人気ゲームとの意外な接点があった!

文:ベストカーWeb編集部/写真:Oracle Red Bull Racing

■レッドブルF1の欠番「17」を背負うクルマ

レッドブルRB17

 レッドブルレーシングは自らのF1マシンに番号を振ってきた。RB1に始まり現在はRB20なのだが、なぜかRB17だけが欠番だった。なぜか。RB17は、別のマシンとしてリザーブされていたからだ。

 2024年7月12日、イギリスで開かれた「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で、そのRB17が姿を現した。限定50台、お値段600万ユーロ(約10億3200万円)というハイパーカーである。

 RB17の存在そのものについては、実は2022年6月に発表が行われている。同チームのチーフテクニカルオフィサーであり「空力の鬼才」といわれるカーデザイナーのエイドリアン・ニューウェイはその場で、「(現実的な制約は受け入れつつ)ルール無用のクルマを作る」と説明していた。

 つまりRB17とは、安全性やタイヤのスペック、複数乗車といった条件を受け入れたうえで、パワーや空力面でかつてないパフォーマンスを生み出すクルマということになる。

■4.5L自然吸気で1200馬力を発生!

床下はトンネル形状となっておりベンチュリ―効果を生み出す

 そのRB17の姿だが、一見大型のカウルに覆われているものの、前後のサスアーム部分はくりぬかれており、基本骨格はフォーミュラーマシンに近い。つまり現代のF1マシンにタイヤフェンダーと2人乗りのキャノピーを被せたものといえるだろう。

 エアロダイナミクスからもそれが分かる。フロントの吊り下げウイングや巨大な花弁のようなリアディフューザーを見ても、車体前方から取り入れた空気をフロア下のトンネルとボディ側面に振り分け、ベンチュリ―効果によって強烈なダウンフォースを生み出す仕組みだ。車重は900kg未満と発表されている。

 リアミッドシップに搭載されるエンジンは、4.5L自然吸気のV型10気筒。驚くべきは許容回転数でなんと1万5000回転! これはF1エンジンが求められるスペックだが、RB17はこのエンジンにより、1200馬力を絞り出すという。エンジン開発をレッドブル パワートレインズが担うのかどうかは不明だ。

■原点は「グランツーリスモ」のX2010!

人気ゲーム「グランツーリスモ」のためにレッドブルが協力したX2010

 かつてエイドリアン・ニューウェイは、このRB17と同種のクルマを設計したことがある。アストン・マーティンと共同開発したハイパーカー「ヴァルキリー」がそれだ。同車とRB17はボディ構造も非常に似ているが、RB17のほうが数年新しいだけに空力的な進化が反映されているに違いない。

 そしてもう一つ、RB17を語るうえで外せないクルマがある。エイドリアン・ニューウェイが人気ゲーム「グランツーリスモ」のためにデザインしたバーチャルマシン「X2010」だ。

 X2010は、あらゆるレギュレーションから解き放たれた究極のレーシングカーとして開発されたクルマだが、ボディ後端に備えた巨大なファンで床下の空気を吸い出し、ダウンフォースを得る仕組みまで備えていた。現実世界でもブラバムのF1やシャパラル2Jが採用し、あまりの速さから禁じ手となったテクノロジーである。

■ボディカラーから内装まであらゆる部分が特注!

床下のトンネルを通ってきた空気を巨大なディフューザーから解放する

 実際エイドリアン・ニューウェイは「(RB17は)2010年にデザインしたプレイステーションの一人乗りマシンを二人乗りにしたようなクルマだ」と話している。このことからも、RB17がいかに貪欲に速さを追求してきたかが分かるだろう。

 RB17の生産は、関連会社レッドブル・アドバンスド・テクノロジーが手がける。価格は前述の通り10億円余だが、ボディカラーから内装の素材まであらゆるオーダーが可能なほか、サーキットでのドライビングイベントなどにも招待されるらしい。

 現時点では公道走行は出来ないという情報だが、ナンバーが取得できる可能性もないわけではない。前代未聞の怪物マシンが公道を走ることを期待したい。

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