夏は雷の発生が多い季節。気象庁によると、雷監視システムによる雷の年間総検知数の大部分が、6~8月に発生したものだそう。雷に遭遇したら、できるだけ早く鉄筋コンクリートの建物などの中に避難をしたいところですが、雷に対してはクルマの中も比較的安全とされており、「クルマにいてもいいのか、避難をしたほうがいいのか」は、判断に迷うところ。はたして、雷に遭遇した際は、クルマの中にいたほうが安全なのか!? それとも、別の場所に避難するべきなのか!??
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_ Joyce/写真:Adobe Stock、写真AC
■JAFの実験によると、落雷したクルマは走行が不可能に
落雷時における、クルマやクルマの中にいる人への影響については、2023年8月に、JAFが、人工的に雷を発生させる装置を使用してクルマに雷を落とし、クルマや乗員に与える影響を検証する、というユーザーテストを実施しています。
【参考記事】落雷時、車や車内にいる人への影響は?(JAFユーザーテスト)
被験車両は、ハイブリッド車(トヨタアクア)とバッテリーEV(日産リーフ)。エンジン(EVシステム)はONの状態でエアコンは25度内気循環、カーナビも起動中で、スマホも充電中という状況で、全身にアルミホイルを巻き付けたマネキンが乗車。
一般的な雷の電圧を模擬した1200万ボルトの衝撃電圧発生装置により、ギャップ長3mでインパルス電圧(放電電流:約2万A)を加え、クルマに気中放電を発生させる、という実験方法で行われました。
その結果、ハイブリッド車バッテリーEVともに、エンジン(EVシステム)がシャットダウンしてしまい、再始動することができなくなりました。ラジオも機能しなくなり、インジケーターの警告灯も2台とも複数点灯しましたが、パワーウインドウやドアロック、ワイパーやルームランプ、灯火類は問題なく作動。エアコンに関しては、ハイブリッド車が送風のみの稼働となりましたが、バッテリーEVは稼働できたとのこと。
また、ハイブリッド車バッテリーEVともにタイヤに雷の痕跡がみられたそうで、クルマに放電した電流が地面へ流れたようすが確認できたそうです。
本実験をまとめた大学教授によると、エンジン(EVシステム)のシャットダウンは、ECUが壊れたり異常な電流を検知してセーフティシステムが作動したことが原因とのこと。
今回の実験では、クルマに落雷してしまうと、クルマは走行が不可能となるという結果となりました。タイヤに関しても、今回の実験では痕が残っただけだったものの、場合によってはパンクする可能性もあるとのことで、やはり落雷はクルマに大きな影響を与えるようです。
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■マネキンは問題なし ピラーなどの金属部分に触れなければ車内に電流は流れにくい
ただ、車内のアルミホイルを巻き付けたマネキンには、ハイブリッド車バッテリーEVともに焦げ痕などもみられず、車内に雷が入り込んだ様子はなかったとのこと。
前出の教授によると、「過去の実験でも乗員が直接大きな被害を受けた例はなく、クルマに落雷してもクルマの金属部分を通ってタイヤから放電するため、車内に電流は流れにくい」とのこと。ただ、車内でもピラーなどのボディの金属部分に接触すると安全とは言い切れなくなるそうなので、金属部分には触れないようにすることが大切だそうです。
雷には建物やアンテナなどの「高いものに落ちる」という傾向があり、より安全な場所へと避難するために車外へ出たところで落雷に遭ってしまうという可能性もあります。
今回の実験でも、クルマのそばにクルマよりも背の高いマネキンを置いて落雷実験をしたところ、雷はマネキンの頭をめがけて落ちてきたそう。急な雷雨の際は無理をせず、車内で待機することがもっとも安全のようです。
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■運転中に雷に遭遇したら、安全な場所に停車して待機しよう
ただ、実験にあるとおり、落雷によってクルマは安全に走行することができなくなる可能性があるため、運転中に雷に遭遇したら、できるかぎり屋内の駐車場など安全な場所に避難したいところ。
それが難しい場合も、一般道であれば路肩や駐車場に避難し、高速道路では最寄りのサービスエリア、パーキングエリアで待機するなど、できる限り危険を回避する行動をとることが必要です。
ただやはり、不安定な天候の際はできるかぎりクルマでの外出は控えるようにしたいところ。やむを得ない場合も、気象情報を確認してより安全を確保できる時間帯・ルートを選んで出かけるようにしてください。
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