なぜ日本では愛車を大切に乗り続けたにもかかわらず、一定期間が過ぎると大幅に税金が上がるのか? 私たち自動車ユーザーがどんな税制に晒されているかを再認識しつつ、今のクルマにあと何年乗ったら税金がアップするのか、自動車税以外にどんな税金がアップしているのかを確認してみたい。

文/鈴木喜生、写真/写真AC

■乗用車の自動車税は13年過ぎると15%アップ!?

 現行の自動車税(自動車税種別割)では、新車登録が「2019年9月30日」の「以前」か「以後」かによって税率が違ってくるが、どちらにしても新車登録から13年以上が経過すると約15%上がるしくみになっている。

 例えば、「2019年9月30日」以前に新車登録をした排気量1.5~2リッターの普通乗用車の場合、新車登録から13年未満であれば税額は3万9500円だが、13年以上経過すると4万5400円(14.9%)に跳ね上がる。 

 また、同じ1.5~2リッターの普通乗用車で「2019年9月30日」以後に新車登録をした車両の場合では、新車登録から13年以上経つと現在は2万5000円の自動車税が2万8700円まで上昇する。

 こちらもおおむね15%(14.8%)の上昇率だ。この上昇率は大型トラックなどの普通貨物自動車(1ナンバー車)も同様だ。

 軽自動車税(軽自動車税種別割)の場合はさらに上昇率が高い。通常は年1万800円の税金が、13年以上経過すると1万2900円になり、約2割(19.4%)のアップとなる。

 税金が安いからこそ軽自動車を選択する人も多いだろう。しかし発泡酒と同様、いったん税金を上げると決めたら取りやすいところから取るのがお役所の常套手段だ。

■自動車税をもし5月末までに納付していなかったら?

もし自動車税を5月末までに払わないと送付された振込用紙ではコンビニでの支払いができなくなり、遅延料として2.5%が加算。6月末までに支払わないと8.8%が加算される

 自動車に関する税金は2019年10月に大幅に改定され、それまで自動車税と呼ばれていたものは「自動車税種別割」に、軽自動車税は「軽自動車税種別割」に名称が変更された。

 車両の排気量に応じて課税され、車両の登録時期や、登録からの経過年数、用途区分によって納付額が異なり、毎年4月1日時点でその車両を所有している者が税金を支払うことになる。

 徴収は年に1回。車検証に記載された住所へ納付書が5月に送付され、通常であれば金融機関やコンビニのほか、自治体によっては電子決済で支払うのだが、その納付期限は原則5月31日。

 もし支払いが遅れている、つまり滞納した場合には、手元に届いている納付書ではコンビニでは支払えず、各金融機関や各都道府県の税事務所などへ出向いて納付する必要がある。

 また、その際には延滞金も発生。納付期限から1カ月以内であれば2.5%の加算ですむが、1カ月を超えると、つまり6月末を過ぎると8.8%に跳ね上がるので注意が必要だ。

■自動車重量税の場合は経過13年と18年で2回アップ!

 新車登録から一定期間が過ぎると税率が上がる税制度は一般的に「旧車増税」などと呼ばれている。

 それは「自動車重量税」も同様。自動車重量税とはクルマの重量に応じて支払う税金であり、車両重量が0.5トン上がるごとに税額が上昇する。その支払いタイミングは新規登録時に3年分、それ以降は車検時に2年分をまとめて納付する。

 ただし、BEV(バッテリー電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)など、エコカー減税が適用される車両は免除され、課税対象となるのは純ガソリン車やLPG車などだ。

 前述した自動車税の場合は振込用紙に書かれた税額を直接的に確認するのでその金額や上昇率を意識しやすいが、重量税の場合は車検の請求額にブレンドされるので「ステルス増税」に近い……。

 しかも重量税は13年だけでなく、18年経過時にも新たな関所が設けられている。

 例えば、1トン超、1.5トン以下でエコカー減税の適応がない車両の場合、新規登録から12年間は登録時または車検のたびに1万2300円を支払うが、それが13年を経過すると1万7100円になり、18年を経過すると1万8900円まで上昇する。

 つまり13年経過時点で39%アップ、18年経過時点には登録時比較で54%まで上昇するのだ。

 自動車重量税の税額は非常に複雑なので、車検時に重量税がいくらになるのか正確に知りたい場合は、国土交通省の照会サービスを活用してほしい(要車検証)。

次回自動車重量税額照会サービス(登録車)

次回自動車重量税額照会サービス(軽自動車)

■世界のなかでも日本の自動税はダントツに高い!?

1台のクルマを13年間乗り続けると、日米との税金総額差は2021年の時点で約54万円。これを2024年6月時点のドル円に換算すると、なんと約81万円!

 自動車に関する税金を各国で比較すると、日本が異常に高いことがわかる。

 自動車関連21団体で構成され、一般社団法人日本自動車会議所が事務局を務める組織として「自動車税制改革フォーラム」があるが、以下はその資料。

 これは「車体を購入し、13年間保有した場合の税金の総額を、各国間で比較」したデータであり、同組織が2021年春にまとめたものだ。数値はすべて当時レートで「円」に換算されている(※JAF作成)。

○日本/自動車税46.8万円、重量税16.0万円、環境性能割2.2万円、消費税24.2万円。総計89.2万円
○イギリス/自動車税29.2万円、付加価値税48.4万円。総計77.6万円
○ドイツ/自動車税12.6万円、付加価値税46.0万円。総計58.6万円
○フランス/登録税4.6万円、付加価値税48.4万円、総計53.0万円
○アメリカ/自動車税2.1万円、小売売上税21.5万円。総計23.6万円

※上記比較条件

○車両タイプ/排気量2000cc、車両重量1.5トン以下
○価格価格/車体価格242万円(軽は140万円)
○燃費/JC08モード燃費値:20.1km/L(CO2排出量:116g/km)
○為替レート/1ユーロ125円、 1ポンド143円、 1ドル107円(2020年4月~2021年3月の平均値)
○税制/2021年4月時点に基づく試算(日本のエコカー減税などの特例措置は考慮せず)

 昨今は大幅な円安傾向にあり、他国との税額を比較する際には他の経済指数を考慮する必要があるが、ちなみに2024年7月7日時点での為替は1ユーロ174円、1ポンド205円、 1ドル161円なので、上記の税額よりも大幅にその差は開き、日本の税金の高さがさらに際立つことになる。

 自動車ユーザーにとっては自動車税、自動車重量税だけでなく、ガソリン税に関しても想うところが多々あるだろう。多くの専門家をはじめとして誰もがおかしいと感じるこれら「タチの悪い」ルールを改善する手段は、国政選挙で一票を投じるしかないのだろうか?

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