最安モデルのガソリンZであっても税込540万円もする高額車でありながら、月間登録台数は平均で6,000台を超えるミニバン界の帝王、トヨタ「アルファード」。ミニバンファンの期待に120点で応えた完成度が最大の強みだが、だとしても価格を考えるとこれほど売れているのは異様。はたして、アルファードの強さの源はどこにあるのか、アルファードの実力と価値について考えてみよう。

文:吉川賢一/写真:TOYOTA

新型でさらに強くなった!!

 いまや、ヤリスシリーズやカローラシリーズ、シエンタ、プリウスに次いで、トヨタ車の中で「5番目」に売れているモデルにまで成長したアルファード。爆売れモデルとなった先代3代目のよいところを踏襲しつつさらに盛ることで、新型アルファードはさらに「強いモデル」になった。

 先代と同じく全幅1850ミリに抑えながら、大型化したように見えるデザインとなっており、フロントフェイスの方向性も、基本的には先代モデルを踏襲してはいるが、キラキラしたフロントグリルや、細目のヘッドライトなど、さらに威厳さが感じられるよう、ブラッシュアップされている。後席にVIPを乗せるようなショーファードリブンカーとしても似合う、王道のスタイリングだ。インテリアも、運転席前のメーターはフル液晶タイプとなり、全車に14インチの大型センターディスプレイを標準装備するなど進化をしている。

 もっともユーザーの心を鷲づかみにしているのは、後席エリアだろう。豪華なつくりの2列目シートは手動調整タイプと、エクゼブティブラウンジ向けの電動調整タイプがあり、後者は肘置き部分にある操作パネルによって、後席用モニターやエアコンの操作が可能となっている。2列目シートはまた、シートを倒していくとオットマンがせり出し、ほぼフラットな姿勢にまで倒すことも可能。このエクゼブティブラウンジには、14インチの後席用モニターも標準装備だ(Zはディーラーオプション)。

 ただ、標準グレードの価格を比較すると、新型は先代よりも100万円ほどアップしており、もっとも安い仕様で税込540万円(ガソリンZ 2WD)、もっとも高い仕様だと税込872万円(ハイブリッド エグゼクティブラウンジE-Four)にもなる。新型アルファードがいいクルマであることは間違いないが、これほど高いクルマがこのようにうれているのは、はっきりいって異常だ。

より豪華に見える新型アルファードだが、こう見えて、全幅1850mmは先代モデルと同じく変えていない
巨大な14インチ液晶モニターが鎮座する新型アルファードのインパネ周り。幅の広いセンターコンソールも優雅さが伝わってくる
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アルファードは残価率が異次元 残価設定ローンでの返済額が抑えられる

 この異常な現象には、とある「からくり」がある。某中古車買い取り専門店の担当者によると、アルファードは、新型に限らず、残価率がかなり高いという。たとえば、業者向けの中古車オークションでは、新車時価格が税込500万円程だった2019年式の先代アルファード2.5Lガソリン車(S_Cパッケージ、走行距離3万km)が、平均で450万円(税抜)で落札されているとのこと。まさに異次元だ。

 もちろん好条件がそろったクルマでなければ高額にはならないそうだが、これほどの残価率の乗用車は後にも先にも見たことがない(一部のプレミア価格の付くスポーツカーは除く)という。もちろんこれは業者向けオークションでの結果であり、一般ユーザーが下取りに出す際には条件が変わってくるのだが、アルファードの残価率が驚異的であることは変わらない。このため、残価設定ローンでの返済額が低く抑えられ、高額車であっても比較的手が届きやすくなっているのだ。

エグゼクティブラウンジの豪華な2列目シート。肘置き部分にある操作パネルによって、後席用モニターやエアコンの操作が可能
2列目シートからの見晴らしは、明るくまた圧倒的な広さを感じる

最後まで「いい思い」ができるクルマ

 ちなみに、新型アルファードは、デビュー直後には、ペナルティ覚悟で業者向け中古車オークションへ出品された個体が数台、1500万円を超えたこともあったが、2023年6月のデビューから1年が経過したことで、流通個体数が増え始めてきており、たとえば、2023年式(1年落ち)の極低走行車は、オークションだと800~900万円で取引されている。新車時価格は700万円程度なので、いまでも売れば利益がでてしまうかもしれない、という状況。

 ただ、せっかく手に入れたアルファードなのだから、目先の利益にとらわれることなく、存分に楽しんでほしいと思う。多少のお金よりも価値がある経験ができるのではないだろうか。最後までいい思いができる新型アルファード。その強さを武器に、今後もますます売れていくことだろう。

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