免許取りたての頃は、常に「人が飛び出して来ないか?」「前車が急ブレーキ踏むかも……」などを考えて運転していた。しかし、運転にある程度慣れてくると、いわゆる“だろう運転”で走っていることに気づく。
文/山口卓也、写真/写真AC
■よく耳にする“だろう運転”とは?
例えば、右折先の横断歩道手前に人がいるのを確認した。「歩道に立ち止まって携帯電話を注視しているから渡らないだろう」と、自分に都合良く勝手に想定するなどして運転することを“だろう運転”という。
しかしこの歩行者は、クルマが歩道にさしかかるという時に突然思い出したように横断歩道に向かって走り出し、クルマと衝突事故に……。
このような、事故の相手の存在を認識していた(見ていた)にもかかわらず、注視を怠る行為を“動静不注視”という。聞き慣れない言葉だが、対向車が接近中に強引に右折するなどもこれにあたる。
■“だろう運転”による動静不注視の実例
実は筆者、先日クルマを運転中に動静不注視による事故を起こしかけた。
歩道寄りの左車線を前車に続いて走行中、少し前方にトラックが駐車しているのが見えた。「前車は右に車線変更する……」と思い、右後方確認の後に前車に続いて右車線へ。数百m先で左折する予定だったので、右車線から元の左車線へ戻った。
すると、前車が少し加速したので、それに続くように加速開始……した途端、前車はブレーキをかけて左にあったコンビニの歩道手前で一時停止。こちらは加速開始直後だったのでフルブレーキ! なんとか事故は回避できた。
考えてみれば、おそらく前車は「コンビニに入るから、後方から近づく後車を少し離さないと危ないな……」と加速したのだと思う。それなのに、前車の動きのままに加速した自分がいた。
前車の存在をきちんと認識していたにもかかわらず、注視・注意を怠ったために危うく事故を起こしかけた。まさに動静不注視によるものだったのだ。
では、このような事例の他に、動静不注視による事故はどのような場所で起こりやすいのか?
■動静不注視による事故が起きやすい場所・シーン
●交差点で
交差点内で対向車がパッシングをして譲ってくれたので、右折できるだろうと進んだら対向車の陰からバイクが飛び出してきてバイクと衝突。
こちら側の信号機に右折矢印が出たので、もう対向車は来ないだろうと進んだら対向車が急加速してきて自車と衝突。
●ETCゲートで
ETCゲートで、前車は止まることはないだろうと前車に続いてあまり減速せずに進入したら、前車がカード不備もしくは入っていなかったか急停止して自車が追突。
●一時停止地点で
この公園に面した通りはクルマも歩行者もほとんどいないから、一時停止しなくても大丈夫だろうと進んだら、公園で遊んでいた子どもが急に公園から走り出してきて衝突。
●駐車場の出入り口で
施設の駐車場から出る時、大通りに出るために前車に続いて進んだ一時停止後、このまま進むだろうと進んだら対向車が勢いよく左折進入。前車はそれに驚いて急停止したため前者に追突。
■“だろう運転”から“かもしれない運転”へ
動静不注視による交通事故は、「安全不確認」「脇見運転」に次いで3番目に多い事故原因と言われている。
「安全不確認」や「脇見運転」は、危険な対象を視認できていない場合に起きるが、動静不注視は対象をしっかり視認できているのに起きるという特徴がある。
そして“だろう運転”を“かもしれない運転”に変えることが、動静不注視による交通事故を減らすためにもっとも効果的。
しかし、常に“かもしれない運転”に意識を変えたとしても、自車も他車も常に動いており、瞬時に適切な運転行動をとることは非常に難しいと思える。
だが、あらかじめ危険を予測しておくことで体の反応速度は大幅に向上すると言われている。
そしてさらに、危険を予測する習慣をつけることで「危険な場所は通らない」「危険な対象に近づかない」「危険な対象に近づく場合は速度を落とす」などの安全に運転する習慣も身につくといえる。
■危険予知トレーニングって何?
「認知(見る)」の欠如による事故は全体の7割、しかし「認知(見る)」していても、前出のような“だろう運転”では事故を減らすことはできない。
そこで「認知(見る)」と並んで「予測(かもしれない)」に意識を変えることで、事故を防ごうというのが“危険予知”の考え方。
この危険予知を身につけることで、運転時に潜む危険をあらかじめ予測して適切に対応できるようになる。
この “危険予知トレーニング”は事故防止効果が高いといわれており、JAFでは動画による危険予知トレーニングが可能となっている。免許取りたてのドライバーもベテランドライバーもぜひチェックしてほしい!
「実写版」危険予知・事故回避トレーニング
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