人手不足が深刻なトラック運送業界でもっと女性に活躍してもらうにはどうしたらいいか?
そんなテーマを掲げて、7年前から試乗会等を通じて女性ドライバーの交流の場を拡げているトラックメーカーがある。UDトラックスである。
業務用トラックの女性ドライバーの比率は2~4%と依然低く、国土交通省でも「トラガール促進プロジェクト」など女性の活躍の場を拡げようとしているが、それには現役の女性ドライバーとの交流の場を設け、意見を出してもらいアピールするのが一番。
そんな催しが6月26日・27日の2日間、埼玉県上尾のUDエクスペリエンスセンターで開かれた。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
2年ぶり5回目の開催となる女性ドライバー試乗会
「UDエクスペリエンス 女性ドライバー試乗会2024」と題されたこの催しは、UDトラックスの上尾本社工場にあるUDエクスペリエンスセンターで開催された。
2017年に第1回を開催しており、今回は2年ぶりの開催で第5回目となる。
UDトラックスとしては、試乗会を通じて大型トラック「クオン」に搭載された電子制御式トランスミッション「ESCOT‐Ⅵ」や電子制御操舵システム「UDアクティブステアリング」などの機能を体験してもらい、女性でも運転しやすいトラックを訴求するのが狙いだ。
ただ、そういった「商売っ気」もさることながら、回を重ねるごとに女性ドライバーとの交流の場としての役割を強めており、他社にないUDトラックスのユニークな取り組みとして認知されてきている。
6月26日・27日の両日の参加者は計22社32名で、これは今までで一番多い参加人数だ。参加したドライバーは、フリートユーザーおよび地域の大手顧客ユーザーの女性ドライバーである。
プログラムは、ワークショップ、試乗、バック競技(ミニエクストラマイルチャレンジ)、工場見学などを実施。ちなみに、このイベントをサポートするスタッフもUDトラックスの女性社員が中心だ。
人間工学性能をプレゼン、さらに各テーマでディスカッション
ワークショップは、まずUDトラックスの車両開発部車体設計担当の田中茂美さんが「クオン」の人間工学的な性能をプレゼンテーション。ちなみに田中さんは現在、内装設計グループにおいて人間工学性能を担当している。
人間工学性能とは、運転姿勢や居住性、働きやすさ、乗降性、操作・表示など、人間工学に基づいたデザインやレイアウトがなされているかどうかを計画し評価するもので、女性にとって最も気になるところだろう。同性の田中さんからの説明に参加者も真剣に聞き入っていたのが印象的だった。
続いてワークショップでは、2班に分かれて「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方」「女性の大型ドライバーを増やすには」をディスカッション。
「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方」では、ミラーの見やすさ、乗り降りのしやすさ、シートの調整量など改善の要望の多い順に議論を深めていった。
また、「女性の大型ドライバーを増やすには」では、給料の向上、子育て支援、制服の改善などが話し合われた。
試乗とバック競技を楽しむ
次は野外に出て試乗である。試乗は、UDエクスペリエンスセンターのテストコースで「新型クオン」に試乗し、最新の装備を体験してもらおうというもの。
参加者の一人であるバンテックイーストの須田裕美子さんは、ふだんは旧型の「クオン」で一般貨物を運んでいるそうだが、やはり新型「クオン」のUDアクティブステアリングが感銘深かったという。
「ハンドルの操作が本当に軽いですね。いま乗っているクルマだと風にあおられたり路面の凹凸でハンドルを取られることがあるけれど、それがまったくない。感動ものでした」と語る。
ちなみに須田さんが女性ドライバーになったきっかけは、「昔は女性が高収入を得るには水商売かトラックドライバーかと言われていた時代なので、それが魅力でドライバーになりました。両親もトラックドライバーの経験がありましたし、何よりも私自身運転が好きだったので、今では天職かなと思っています」とのこと。
ふだん気を付けていることは、「荷物を大切に運ぶこともそうですが、大型は『走る凶器』にもなるので、事故は絶対に起こさないという気構えで運転しています」という。
続いてのプログラムはバック競技だ。これは全日本トラック協会主催の「全国トラックドライバーコンテスト」で実施している「車庫入れ」競技と同様、バックで衝立にどれほど近づけるかを競うというもの。こちらは中型トラックの「コンドル」を使って行なわれる。
「ミニエクストラマイルチャレンジ」と銘打っているように、競技として実施しているのだが、この頃になると他社の選手とも打ち解け、お互い応援したり笑いあったり、いかにも女性らしい和気あいあいとした雰囲気が好ましく感じられた。
前述したUDの車両開発部の田中さんは、「なかなか直接ドライバーさんとお話する機会がないので、このイベントは非常に貴重だと思っています。私自身勉強になるし、何よりもとても楽しいので毎回心待ちにしています」と語った。
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