近年、世界的に高い人気を誇るスタイルのひとつが、レトロな雰囲気とスポーティなスタイルを融合した「カフェレーサー」。特に、2024年には、往年のWGP(ロードレース世界選手権)マシンを彷彿させ、新機軸のカフェレーサーとして注目のヤマハ「XSR900GP」も登場。ラインアップの充実度は、ますますアップしています。
でも、ひと言にカフェレーサーといっても、例えば、フロントカウル付きもあれば、ないモデルもあるなど、スタイルや装備には違いもあります。また、クラシカルな雰囲気を持つ同様のモデルには「ネイキッド」もありますが、あえてカフェレーサーとは区別されています。
では、一体、このカフェレーサーとは、どんなバイクを意味するのでしょうか? 実は、その成り立ちをみてみると、1980年代~1990年代に人気を博した「レーサーレプリカ」や、現在の「スーパースポーツ」の元祖的な存在だといえます。その理由も含め、あらためて、カフェレーサーの基本的な特徴やルーツなどを検証してみましょう。
国産バイクのカフェレーサーにはどんなモデルがある?
まずは、国産バイクを例に、(2024年7月現在)新車で購入できるカフェレーサーにはどんなモデルがあるのか紹介しましょう。
【ホンダ】
「ホーク11」
1082cc・直列2気筒エンジン/セパレートハンドル/フロントカウル付き
「CB1000R」
998cc・直列4気筒エンジン/バーハンドル/フロントカウルなし
「CB650R」
648cc・直列4気筒/バーハンドル/フロントカウルなし
「CB250R」
249cc・単気筒/バーハンドル/フロントカウルなし
「CB125R」
124cc・単気筒/バーハンドル/フロントカウルなし
【ヤマハ】
「XSR900GP」
888cc・直列3気筒/セパレートハンドル/フロントカウル付き
「XSR900」
888cc・直列3気筒/バーハンドル/フロントカウルなし
「XSR700」
688cc・直列2気筒/バーハンドル/フロントカウルなし
「XSR125」
124cc・単気筒/バーハンドル/フロントカウルなし
【カワサキ】
「Z900RSカフェ」
948cc・並列2気筒/バーハンドル/フロントカウル付き
【スズキ】
「SV650X」
645cc・90°Vツイン(2気筒)/セパレートハンドル/フロントカウル付き
レトロでスポーティなスタイルが共通点
各モデル名の下には、エンジンのタイプや排気量、カフェレーサーとしての装備に関連する特徴なども入れてみました。ご覧の通り、フロントカウル付きもあればカウルなしもあるし、バーハンドル仕様があるかと思えば、セパレートハンドル仕様もありますよね。
これらの共通点は、前述の通り、レトロな雰囲気を醸し出しつつも、スポーティなフォルムや走りも合わせ持つことです。
たとえば、ホンダのホーク11は、FRP製のロケットカウルと呼ばれるフロントカウルを採用。ほかにも、カワサキのZ900RSカフェ、スズキのSV650Xにもフロントカウルがあります。
ちなみに、ヤマハのXSR900GPの場合は、カウル付きといいつつ、ほかのモデルとややイメージが違いますが、後述する理由により、ここではあえてカフェレーサーのひとつにカウントしています。
話を元に戻すと、ハンドルについても、ホーク11やXSR900GP、SV650Xがセパレートタイプを採用。そのほかは、バーハンドルを装備しています。ですが、バータイプのモデルについても、ハンドル位置は比較的低めに設定。セパレートハンドルのモデルと同様、やや前傾がきつめのスポーティなライディングポジションになることが共通点だといえます。
ルーツは60年代に流行した公道レーサーのカスタムバイク
カフェレーサーと呼ばれるモデルが、なぜこうした装備を特徴とするかについては、そのルーツが関連しています。元々、カフェレーサーは、1960年代にイギリスで生まれたカスタムバイクのスタイルを意味し、それらの特徴を採り入れているからです。
当時、イギリスでは、毎晩のようにカフェへ集まり、そこを起点に公道レースを楽しむ「ロッカーズ」と呼ばれる若者たちが数多くいました。
そうした若者たちの特徴は、レザー製のジャケットやパンツを履き、カスタムバイクに乗っていること。しかも、彼らが乗る愛車の多くが、当時のレーシングマシンを模倣したスタイルに改造されていたといいます。
ベース車両の多くは、トライアンフやBSA、ノートンといった、当時のレースシーンで大活躍した英国メーカーのモデルたち。公道レースなどでバイクのスピードやスリルを味わうことを好んだ当時の若者たちは、マン島TTレースなどバイクの世界選手権シリーズでダイナミックに走るレース用マシンに憧れ、それらを参考にしたカスタムを愛車に施すようになったそうです。
ちなみに、カフェレーサーという名前の由来は、当初、こうしたカフェに集まり、公道でレースをする若者たちを指していたそうですのが、いつの日か彼らの愛車も意味するようになったといわれています。
カウル付きとなしがあるワケ
そんなルーツを持つのがカフェレーサーというスタイル。当時の主な改造は、例えば、ハンドルをセパレートタイプやフラットなバータイプなど、低く幅が狭い仕様にし、ステップを後方にするバックステップなども装着。
また、シートも車体後方に座れるようなシングルタイプにするなどで、上体を伏せるライディングポジションになるようにしていました。
そんなカフェレーサーにカウルなしが多いのは、当時、ほとんどのバイクがカウルレスだったから。今でいうネイキッドのスポーティ版的なスタイルも多かったようです。
ですが、なかにはオリジナルのフロントカウルを装着するカスタムバイクもあり、こちらも人気だったようです。
そして、そうしたフロントカウルについても、当時のレーシングマシンを模倣した流線型のデザインが主流。ホーク11が採用するようなカウルですね。先端が突き出て丸味を帯びた形状がロケットに似ているからでしょう、先述したロケットカウルという愛称で呼ばれるようになりました。
つまり、現代のカフェレーサーにフロントカウル付きとなしがあるのは、実際に、当時、どちらの仕様もカフェレーサーと呼ばれていたからなのです。
ネイキッドとの違い
その後、こうしたカスタムスタイルは、北米や日本などへも波及し、数多くのカスタムビルダーがオリジナルのマシンを製作。世界的に波及し、カフェレーサーというスタイルが確立されます。
そして、そうした流行をキャッチした国内外のバイクメーカーでも、カフェレーサーのスタイルを採り入れた市販車をリリース。国産車でも、例えば、1983年に登場したホンダ「GB250クラブマン」などがそれにあたります。
さらに、2000年代に入ると、クラシカルなスタイルに現代的なテイストを融合させた「ネオクラシック」というスタイルが大流行。往年の名車をイメージした様々なタイプの市販車が登場します。
その流れのなかで、カフェレーサーも、ネオクラシックというジャンルの中でも、特にスポーティな雰囲気を備えたスタイルとして人気を博し、現在のように市販車でも豊富なラインアップを誇るようになったのです。
このように、カフェレーサーは、元々カスタムバイクが発祥。レトロな雰囲気を持つという点では共通点もある、いわゆるネイキッドと呼ばれるモデルとは成り立ちなどが異なります。
例えば、カワサキの「Z900RS」。2017年の発売以来、大型バイクのなかでも特に大きな支持を受けている大ヒットモデルですが、そのルーツは1972年に登場した900ccモデル「900スーパー4」、通称「Z1」です。ティアドロップタイプの燃料タンクやテールカウルなどを採用することで、Z1のスタイルを現代に蘇らせているのがZ900RSだといえます。
一方、それをベースに、カフェレーサー的スタイルにしたのが、Z900RSカフェ。Z900RSと同様にバーハンドルを装備しますが、ベースのZ900RSがアップライトなポジションになる高めのタイプなのに対し、Z900RSカフェでは、より前傾姿勢となる低いタイプを採用。また、フロントカウルやシングル風の専用シートなど、先に述べたカフェレーサーの特徴を採り入れた装備を持つことが特徴です。
つまり、Z900RSカフェは、メーカーが施したZ900RSのカスタム仕様だといえます。ヤマハのXSR900GPの場合も、バーハンドルやカウルレスのXSR900をベースに、カウリングやセパレートハンドルを装備したメーカー製カスタム仕様であることは同様です。
XSR900GPは、いわゆるカフェレーサー的なロケットカウルこそ装備していません。でも、成り立ちなどを考えれば、十分に同じジャンルに属するといえます。オマージュしたレーシングマシンの年代が、従来の1960年代や1970年代から1980年代にシフトしただけで、カフェレーサーの方程式に則っていることは間違いないからです。
レーサーレプリカの元祖であるワケ
カフェレーサーは、レーシングマシンがお手本という意味でいえば、前述した通り、1980年代半ばから1990年代前半に大流行したレーサーレプリカや、現代のスーパースポーツに近い存在だといえます。
もちろん、昔のカフェレーサーはメーカー製でなく、あくまでユーザーがカスタムしたバイクでした。でも、WGPなど世界のレースで活躍したマシンのスタイルをオマージュしている点は同じ。しかも、そのスタイルを、2輪メーカーが積極的に取り入れ、市販車として販売している点も似ています。
そうした観点からみれば、カフェレーサーは、レーサーレプリカやスーパースポーツの先駆け、もしくは元祖的な存在だといえるでしょう。
カフェレーサーは、ほかにも、例えば、トライアンフの「スピードトリプル1200RR」や「スラクストンRS」、ロイヤルエンフィールドの「コンチネンタルGT650」など、海外メーカーでも、近年ライアップを強化しています(残念ながらスラクストンRSは、2024年で生産終了ですが)。
ともあれ、魅力的なモデルがひしめくカフェレーサーのジャンル。排気量も、前述の通り、125ccの原付二種や250ccの軽二輪といった小排気量モデルから、1200ccのビッグバイクまでランアップされ、幅広いライダーが楽しめることも魅力です。
クラシカルなスタイルだけでなく、ワインディングなどでスポーティな走りも求めるユーザーには、とても気になるジャンルのひとつではないでしょうか。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/389255/
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