梅雨が明ければツーリングに絶好のシーズン。夏休みやお盆休みを利用して、普段はあまりいけない遠方へのツーリングを予定している人も多いでしょう。
ツーリングといえば、よく大排気量バイクの方が疲れにくくて快適だといわれますが、実は、モデルの性格や装備、天候などの状況によっては、250ccなど小排気量モデルの方がいい場合もあります。
ここでは、大排気量モデルと小排気量モデルで、それぞれツーリング時にどんなメリットやデメリットがあるのかなどを紹介します。

文/平塚直樹 Webikeプラス

 

 

     

レブル1100とレブル250の比較でバイク旅の実力を検証

 大排気量バイクと小排気量バイクとの違いについて、まずは同一スタイルを持つ実際のモデルで比較してみましょう。

 例えば、ホンダの「レブル1100」と「レブル250」。いずれも、特に直線路などをゆったりとツーリングすることに適したクルーザーモデルと呼ばれるバイクです。これらはスタイルこそ似ていますが、レブル1100が排気量1082cc・2気筒エンジンなのに対し、レブル250は249cc・単気筒を搭載しています。

 では、どちらがよりツーリングに最適なのか? それを検証するために、2モデルの主なスペックを比較してみましょう。

 

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【レブル1100主要諸元】

■全長2240mm×全幅850【830】mm×全高1115mm
■シート高700mm
■車両重量223【233】kg
■エンジン:1082cc・水冷4ストローク直列2気筒
■最高出力64kW(87PS)/7000rpm
■最大トルク98N・m(10.0kgf-m)/4750rpm
■燃料タンク容量13L
■燃費:WMTCモード値19.4km/L
■タイヤ:前130/70B18M/C 63H、後180/65B16M/C 81H
■価格(税込)113万8500円~124万8500円
*【 】内はDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)車

 

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【レブル250主要諸元】

■全長2205mm×全幅820mm×全高1090mm
■シート高690mm
■車両重量171【172】kg
■エンジン:249cc・水冷4ストローク単気筒
■最高出力19kW(26PS)/9500rpm
■最大トルク22N・m(2.2kgf-m)/6500rpm
■燃料タンク容量11L
■燃費:WMTCモード値33.7km/L
■タイヤ:前30/90-16M/C 67H、後150/80-16M/C 71H
■価格(税込)61万500円~64万9000円
*【 】内はSエディション

 レブル1100の車体サイズは、レブル250と比べ、全体的に大柄であることは数値を見比べても一目瞭然ですね。これにより、高速道路の直進安定性が高いことがうかがえます。

     

●大排気量バイクは振動が少なく疲れにくい

 しかも、レブル1100のエンジンは、排気量がレブル250の4.3倍以上あるだけに、最高出力も約3.3倍、最大トルクは約4.5倍です。加えて、いずれも発生回転数がレブル250より低くなっています。

 特に、トルクは、レブル1100ではエンジン回転数が4750rpmのときに最大となり、最大トルク発生回転数6500rpmのレブル250よりかなり低い設定です。

 

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 そのため、例えば、高速道路の合流などで、速度を80~100km/hに到達させる場合、より低い回転数で加速させることが可能です。また、同じ速度で巡航する場合も、エンジン回転数をより低くできます。

 一般的に、加速や巡航時でエンジン回転数が低いバイクの方が、車体に伝わる振動も少なく、疲れにくいといえます。つまり、レブル1100は、レブル250より、走りに余裕がああるだけでなく、疲れにくいエンジン特性だといえるのです。

 また、車体サイズが大きいだけでなく、車両重量も1.3倍以上あるレブル1100の方が、走行安定性という意味では比較的高いでしょう。これも、あくまで一般論ですが、特に、強めの横風が吹いている時は、軽いバイクの方があおられやすく、ヒヤリとするシーンさえあります。

 対して、重い大排気量バイクの方が、風に対して強い傾向にあり、心理的な余裕も含め、結果的に疲れにくいことが多いのです。

 もちろん、駐車場などでの取り回しではレブル250の方が扱いやすいでしょう。でも、一旦走り出してしまえば、レブル1100もハンドリングは軽快な方だし、直線路などでの安心感はより高いといえます。

 なお、レブル250は足着き性の高さにも定評がありますが、シート高は690mm。レブル1100のシート高は700mmですから、意外にあまり差がないことも注目点です。

追い越しや2人乗りでも大排気量モデルは楽

 さらに、レブル1100のような大排気量バイクでは、前述の通り、エンジンに余裕があるため、高速道路などで前を走るクルマを追い越す際も比較的楽です。速度や道の勾配などにもよりますが、トップギヤや1段落としただけで加速できるケースも多々あります。

 一方、レブル250のような小排気量バイクでは、同様のシーンで、ギヤを2〜3段落として加速しなければならない場合も多いといえます。つまり、走行中にシフトペダルやクラッチレバーなどの操作回数が少なくすむことで、ロングツーリング時の疲労度が少ないのも大排気量バイクの方だといえるのです。

 ほかにも、例えば、たくさんの荷物を積んで走ったり、2人乗りをしてツーリングをする場合も、レブル1100の方が、エンジンにパワーがある分、発進時はもちろん、巡航時も余裕があるのは確か。また、車両重量も重いため、タンデムや重い荷物の積載時も、レブル250より安定して走ることができるといえるでしょう。

 

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価格が高い分ツーリングに最適な装備が充実

 ただし、レブル1100は、価格(税込)が113万8500円~124万8500円。レブル250の価格(税込)が61万500円~64万9000円ですから2倍近く高いといえます。でも、その分、ツーリングにも最適な装備がかなり充実しています。

 例えば、レブル1100には、高速道路などで設定した車速を一定に保つことが可能な「クルーズコントロール」を標準装備。ロングツーリング時の高速巡航時に、頻繁なアクセル操作を不要とする便利な装備です。

 また、ラインアップには、いわゆるAT(オートマチックトランスミッション)車である「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」仕様もあります。この仕様であれば、発進から加減速、巡航まで、すべての走行でシフトペダルやクラッチレバーの操作が不要。特に、長距離のツーリングでは、ライダーの披露を軽減してくれます。

 このように、大排気量バイク、特にツーリング向けのモデルは、パワーや重さといった元々の素性に加え、装備もかなり小排気量バイクと違ってきます。値段が高い分、快適性や利便性などもかなりいいのです。

 

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燃費や航続距離は小排気量バイクの方が上?

 では、ツーリングでは、やはり小排気量バイクよりも大排気量バイクの方が上なのでしょうか? いえいえ、実は小排気量バイクだって大排気量バイクに勝る点もあるのです。

 例えば、燃費や1回の満タンで走行できる距離。レブル250の燃料タンクは容量11Lですから、容量13Lのレブル1100より小さな燃料タンクを搭載しています。ですが、燃費は、いずれもWMTCモード値で、レブル250が33.7km/Lなのに対し、レブル1100は19.4km/L。

 

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 そのため、1回の満タンで走れる距離は、あくまでスペック上の計算ですが、レブル1100の252.2kmに対し、レブル250は370.7kmと、より長く走ることができるのです。

 特に、最近は、地方を旅する際に、ガソリンスタンドが少ないエリアも増えていますから、給油のタイミングも重要。そうした点では、レブル250の方がレブル1100よりも安心感は高いといえます。

 そして、レブル250に限らず、小排気量バイクの方が、大排気量バイクと比べると、燃費性能は比較的いい傾向にあります。ツーリング時の燃費面でいえば、250ccなどの小排気量モデルの方が、1000超の大排気量バイクに勝るケースも多いといえます。

 もちろん、燃費や航続距離は、走行時の天候や路面状況、ライダーの乗り方などで変わりますから、一概にはいえません。また、モデルによって違いもあります。

 例えば、レブル1100と同系のエンジンを持つホンダ「CRF1100アフリカツイン」。24Lもの大容量の燃料タンクを搭載する「アドベンチャースポーツES」の場合なら、WMTCモード値19.6km/Lなので、1回の満タンで470.4kmも走れる計算です。

 つまり、たとえ燃費性能で劣ったとしても、車体が大きな大排気量のツアラーモデルなどなら、大容量の燃料タンクを搭載することで、航続距離も長くなる傾向にあることも間違いないでしょう。

 

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小排気量バイクがハヤブサに勝るシーンも?

 ほかにも、モデルや状況によっては、大排気量バイクが、小排気量バイクに負けてしまうシーンもあります。

 例えば、筆者がかつて所有していたスズキの2代目「ハヤブサ(正式名称GSX1300Rハヤブサ)」。

 ご存じの通り、ハヤブサは、排気量1339cc・水冷4気筒エンジンを搭載し、最高速度300km/hを誇るメガスポーツとよばれるフルカウルモデルです。世界中にファンを持つスズキのロングセラーで、現行モデルの3代目が2021年に発売されています。

 2代目の装備重量は266kgで、駐車場などでの取り回しでは車体がかなり重い印象でした。でも、乗ってしまえば走りは軽快で、最高出力197PSのスペックを活かし、高速道路の巡航などでは余裕の走りと抜群の直線安定性を発揮。また、ある程度の風にも強かったことで、ロングツーリング時の快適性はかなり高いバイクでした。

 ところが、春先など、かなり強い突風が吹くときに高速道路を走行したときは、ハヤブサの車体があおられて怖い思いをした経験もあります。

 

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 特に、関東のライダーなどにはおなじみの東京湾アクアラインは最悪でした。海ほたるPAと木更津を結ぶ海の上にかけられた橋(アクアブリッジ)では、風速10m/秒を超える強風が吹くときもあり、その際に海から押し寄せる横風はかなり強烈で、通行止めになることさえあります。

 筆者は、一度、そんな強風時にハヤブサを走らせたところ、いきなりの台風級(と感じるほど強烈な)横風にあおられ、片側2車線の隣の車線まで飛ばされそうになったことがあります。そんな時、橫の車線にクルマが走っていたら……衝突して大事故になったかもしれません。

 その後は、あまりの恐怖からスピードを50km/h程度に落とし、走行車線を超ゆっくりと走行。心理的にはもちろん、飛ばされまいとハンドルに力を入れすぎたことで肉体的にもヘトヘトで、早く高速を降りたいと思いながら走行したことを覚えています。

 そんな時、追い越し車線の後方から、(モデルは忘れましたが)250cc・単気筒のオフロードバイクが接近。なにくわぬ顔(のように見えました)で、80km/h近い速度で筆者のハヤブサを抜いていったのです。筆者の愛車と比べ、絶対的なパワーで劣り、車両重量も軽いオフロードバイクに、なぜあれほどまで楽々と抜かれたのか? 通常時にはありえないことです。

 おそらく理由は、あくまで私見ですが、2代目ハヤブサは全長2190mm、全高1170mmという大柄な車体と、フルカウル仕様だったことが禍(わざわい)したのではないかと思います。

 特に、ハヤブサのカウリングは、現行モデルも同様ですが、最高速度を高めるための空力特性を考慮した、文字通りのフルカバード仕様。そのため、前から吹く走行風にはめっぽう強く、前傾姿勢でヘルメットまでウインドスクリーンの中に潜れば、走行風はほとんど体に当たりません。

 

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 ところが、サイドカウルなどはにまるで隙間はなく、大柄なバイクだけに、横風を受ける面積も大きめだといえます。橫からみたときに隙間も多く、全高はあるけれど、風を受ける面積自体は小さい250ccのオフロードバイクと比べると、ハヤブサは横風の影響を受けやすいのではないかと思うのです。

 

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 ちなみに、フルカウルモデルが横風に弱いという話は、1000ccスーパースポーツなどのオーナーからもたまに聞くので、筆者の推測もあながち間違いではないかもしれません。そう考えると、同じ大排気量バイクでも、ネイキッドやアメリカンなどと比べ、フルカウル仕様のスポーツバイクは橫風には弱い傾向にあるといえるかもしれませんね。

ゆっくりと景色を楽しめる小排気量バイク

 加えて、大排気量バイクは、ツーリング先の駐車場へバイクを停める際、駐車スペースに気を遣う場合もあります。これも、筆者がハヤブサに乗っていた時の話ですが、例えば、駐車スペースの奧が下りになっている場合。そこに、不用意にフロントから入れて車体をしまうと、再度乗るときにかなり苦労するケースもあったのです。

 特に、奧までの下り勾配がきついと、車体の左脇に立ち、サイドスタンドを戻した後、ハンドルを引きながら駐車スペースをバックするときに、装備重量が266kgもあるため、かなり力が必要になるためです。「ハヤブサにもバックギアが欲しい!」と思った事も一度だけではありませんでした。

 その点、車体が軽い250ccなどの小排気量バイクなら、あまり駐車する場所に気を遣うこともないでしょう。もちろん、これは、ライダーの体格などによっても違いますが、街中はもちろん、ツーリング先でも気軽に乗れるという点では、小排気量バイクの方が上ではないでしょうか。

 ほかにも、よく、小排気量バイクは、大排気量バイクと比べスピードが遅い分、ツーリング時に、のんびりと周りの景色を楽しめるという話を耳にします。また、大排気量バイクなら、シューンと行き過ぎてしまうような隠れた絶景スポットなどを、ゆっくり走れる小排気量バイクなら発見しやすいという声もよく聞きます。

 

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 これらを総合すると、大排気量バイクと小排気量バイクでは、旅の楽しみ方が違い、その意味で優劣はないといえるでしょう。そう考えると、自分がどんなツーリングをしたいのかによって、モデルや排気量を選ぶのが正解ではないかと思います。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/386265/

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