2013年のランキング企画をプレイバック。今回は日常の運転で楽しさを感じられる「ミドルサイズのスポーティセダンを徹底的」に斬る! 400万円台を上限に選出した14台を5人の選考委員が10点満点で採点、のち座談会を開催して最終的なランキングを決定する…のだが!?(本稿は「ベストカー」2013年6月10日号に掲載した記事の再録版となります)

選考委員:鈴木直也、国沢光宏、片岡英明、渡辺陽一郎、渡辺敏史

■定番BMW3シリーズに新進気鋭キャデラックATSが一矢報いるか?

5名の選考委員が10点満点で採点チェックをして合計点でランキングを決定したのが上の表(本座談会前)、なのだが……

【ベストカー(以下BC)】皆さんお集まりいただきありがとうございます。前もって採点していただいた結果、お手元にありますようにランキングが決定しました。
【鈴木直也(以下鈴木)】BMW3シリーズが人気だねぇ~。
【国沢光宏(以下国沢)】なんでノミネートされているのはアテンザがディーゼルでBMW3シリーズがガソリンなの!?
【BC】値段ですね。アテンザXDは290万円ですが、BMW320dだと470万円。ちょっと高すぎるので320iをノミネートに挙げました。
【国沢】いや、高くないよ! そもそも3シリーズの場合、320iと320dの価格差は20万円しかなくて、しかもディーゼルなら約8万円の補助金が出るから実質12万円の価格差。しかも、ハイオクと軽油の価格差、燃費差を考えたら車両価格差は完全に吸収される。
【BC】ところで皆さん、320iと320dの評価はいかがでしょう!?

1位:BMW320i…1位に選ばれたのは「やはりというか順当と言うべきか、BMW320iとなった。「ディーゼルの320dだったらもっと高得点」と選考委員が口を揃えたが、プラス20万円の価格は圧倒的にお買い得。なにより高いハンドリング性能が高評価の要因だ

【渡辺陽一郎(以下陽一郎)】価格差が20万円というのはものすごく高く評価できる要因。ディーゼルが魅力的。
【鈴木】本国だと価格差は!?
【渡辺敏史(以下敏史)】20万円以上あります。BMWジャパンが戦略的な価格設定をしている。
【鈴木】ま、だんぜんディーゼルだよね。ただアテンザのディーゼルと比べるとアイドル時の音がちょっと大きかったり……。
【国沢】ええっ! アテンザよりも音が大きい!?
【鈴木】車外放射音は明らかにアテンザのほうが静か。
【陽一郎】少なくとも室内で音が大きいのはBMWでしょ。

日欧米ミドルサイズスポーティセダンはいまや2Lクラスの過給エンジンが中心

【国沢】アテンザってカリカリってノッキングするでしょ。BMWはしない。
【敏史】アイドリング時はBMWのほうが静かです。
【国沢】320iはガソリンなのに上、回らないよね。以前のBMWらしさというか、エンジンを回す気持ちよさみたいなものはない。
【敏史】エンジンの回り方、フィーリングなどは、ガソリンとディーゼルで差が小さくなっている。これはアテンザにも言えるんですけどね。
【国沢】1秒も迷わずディーゼルを選ぶね!
【鈴木】アテンザが2位に入っているけど旧型時代だったら、このノミネート車のなかで2位に入るなんてあり得なかった。
【片岡英明(以下片岡)】ガソリン車だと、ま、普通ですよね。
【国沢】0.5秒も迷うことなくディーゼル!
【陽一郎】アテンザの場合、車両重量を考えると、ガソリンだと2.5Lを選びたいですよね。ところが2.5Lには「Lパッケージ」という装備てんこ盛りで300万円もする高いグレードしかない。ところがディーゼルだと290万円の素のグレードを選んで安全装備を中心にしたオプションを選んでいけばリーズナブル。

BMW3シリーズ、アテンザともにディーゼルエンジンをラインアップしていることがポイント。写真の車両は手前がガソリンターボの320iで奥が2.2LディーゼルターボのアテンザXD

【BC】ディーゼルが高い評価ですがハイブリッドはいかがでしょうか!? クラウンアスリートハイブリッドが3位です。
【敏史】やっと2Lクラスのディーゼルや2Lターボに立ち向かえるハイブリッドになった、ということかな。
【片岡】パンチ力は3.5Lハイブリッドが圧倒的だったから、動力性能面では物足りなく感じちゃうけど、トータルでは新型が圧倒的にいい。
【国沢】敏史さんのクラウンの得点、日本で使う前提の評価!?

3位:クラウンアスリートハイブリッド(38点:鈴木7点/国沢8点/片岡9点/渡辺7点/渡辺7点)

【敏史】アスリートなので7点にしました。ロイヤルだったら8点なんですが……
【陽一郎】このカテゴリーはスポーティセダンということなのでクラウンの評価は辛めになりました
【片岡】ボクは“フツーに乗って楽しい”というところで評価しました。充分に楽しいですよ、だから9点
【国沢】敏史さんに聞きたいんだけど、クラウンが7点で同じパワーユニットのIS300hが9点というのはなぜ!?

5月16日に発表/発売される新型レクサスIS。300hはクラウンと同じ2.5L直4+モーターのハイブリッド。ハンドリングはFスポーツの評価が高く、標準モデルの評価はクラウンと同等だった

【敏史】単純にアスリートのハンドリングの狙いがわからないということです
【国沢】ISはそんなにいい!?
【鈴木】Fスポーツはけっこういいぞぉ!
【国沢】Fはいい! けど、普通のISはそんなによくはない。クラウンと大きな差があるとは思えない
【敏史】クラウンに対する期待値ですかねぇ
【国沢】敏史さん、クラウンとマークX、スカイラインが同じ7点でいいんですか!?
【鈴木】ボクはクラウンに対してそんなに期待値が高いわけではないけれど、それでもちょっとガッカリした。プラットフォームは基本キャリーオーバーで、パフォーマンス系ハイブリッドをあきらめて燃費に振る決断をした。出来上がったクルマは悪くはないんだけど、そんなに高く評価するほどでもない。
【国沢】ISって古いよね。今このタイミングでモデルチェンジして衝突回避ブレーキがオプションすらない。クラウンにはオプション設定されているのに。
【敏史】アイドリングストップすらありません。ハイブリッドもニッケル水素。
【鈴木】トヨタにはいろいろ社内事情があるのわかるけど、それを客に押しつけるな、と。
【国沢】ISの点、2点減らして5点にして!
【片岡】なるほどね……。皆さんのご意見を聞いていると1点減らしたくなってきた。9点から8点にします。
【敏史】トヨタのクルマ全般に言えるんですが、要素要素はよくできているんだけど、それらをまとめたパッケージングとなるとイマイチという……。ISはそこが比較的よくできていると感じました。
【国沢】でもISってBMW3シリーズより高いんでしょ!?
【鈴木】3シリーズのシャシーを100点とすると、新型ISは65点程度でクラウンは55点。

■日本車には強烈な個性が感じられない!?

「ミドルサイズのセダンでは世界で一番のシャシー性能」と渡辺敏史氏は10点満点の評価するも、総合点は36点で6位にとどまったベンツC180

【国沢】ところで敏史さんはベンツCに10点を付けているのはなぜ!?
【敏史】ミドルセダンでナンバーワンのシャシーだと思います。
【国沢】そんなにいいかなぁ!? もの凄くフツーじゃない!?
【敏史】ベンツに色気はないし、普通だけどもの凄くいい、というのがベンツらしさでしょ。
【国沢】ボクは6点を付けていて、他もみんなそんなに高い点ではないけど敏史さんだけ最高点。
【敏史】いまのベンツのラインアップ中でベストはSかCです。
【国沢】Cクラスはスポーティセダンではないと思う……。うーん2点減点で4点にする!
【敏史】ドライバーの操作に忠実に動いてくれる点を評価しているんです。
【鈴木】「エンジンだけで比較したらC180のほうがBMW320iよりも好き。トルクの出方とか気持ちいい
【陽一郎】ボクもCクラスがスポーティセダンかというと、ちょっと違う気がする。それよりもプジョー508グリフがいいですよ!

渡辺陽一郎氏が9点を付けてイチオシするプジョー508グリフ。156㎰/24.5kgmの1.6Lターボを搭載し、価格は414万円。スタビリティが高く、安心感の高いハンドリングを高評価

【国沢】それはわかります。でも9点は高すぎない!?
【陽一郎】いえ、9点です。とにかく乗って気持ちがいい。キチンと操作に反応するし緊急回避をやってもビシッとしている。しかも乗り心地がとてもいい。
【鈴木】それを言ったらキャデラックATS! 思いっきり生まれ変わったキャデラックを見せつけてくれた。クラウンにはこのATSのような思い切った変革に挑戦してほしいんだ!

既存の「キャデラックイメージとはまったく違う超ハンドリングセダンに仕上がったATS

【国沢】うーん、鈴木さんとまったく同意見、悔しいけど……。
【鈴木】GMは一度会社がダメになって、いろんなしがらみがなくなったんだろうね。
【国沢】安全性もハイレベルなんだよね。片岡さん、5点は低すぎません?
【片岡】キャデラックらしさはないですよね、ATSには。
【国沢】ちょっとニュル走り過ぎた感じかな。あそこまでガチガチじゃなくてもいい。
【片岡】でも走ったら楽しいし、クルマハードとしては高く評価しているんですよ。……うーん、2点加えて7点にしましょう。
【敏史】デザインとかにメッセージ性は感じるけど、いわゆるキャデラックに乗るというイメージとはまったく違ったクルマ。
【鈴木】時代が変わったということ。アメリカ人だって世代交代してキャデラックを買う世代が若返ったということ。欧州車志向なんだろうね。
【陽一郎】だったらBMW3シリーズに乗ればいいという意見もある。

2位:アテンザセダンXD(42点:鈴木8点/国沢8点/片岡8点/渡辺9点/渡辺9点)

【BC】スカイラインやマークXの話題が出ませんね……。
【鈴木】完全にガラパゴスだよね。世界的な潮流に乗り遅れて明らかに時代遅れな感じ。ヨーロッパのこのクラスのクルマが軒並み2Lターボだディーゼルだと言っている時代に3.5Lとか3.7Lだからね。
【陽一郎】もともと2Lターボは日本車の得意ワザだったんですけどね……。
【鈴木】とはいえスカイラインなんか乗れば楽しいんだけどね。魂は感じる。
【国沢】片岡さんは6点と低い。
【片岡】愛のムチです。あんなに大きくなったスカイラインに高得点は与えられない。
【国沢】レガシィは2L直噴ターボを出してきたけど、正直イマイチ。
【鈴木】パフォーマンス狙いすぎ。なんであんなに馬力出すかなぁ……。300馬力もいらない。
【国沢】速いことは速いけどCVTが面白くない。
【鈴木】ホントはB4あたりがBMW320iとガチで勝負できないとダメなんだよ。
【国沢】シトロエンC5はいいクルマだよぉ。
【鈴木】何ものにも替え難い、あの油圧サスの独特の乗り味はC5でも健在。
【敏史】いまだに他のなにとも違う乗り味を醸し出しているのは凄いです。
【鈴木】乗ってすぐに“おおっ”と思えるクルマって、なかなかないよ。C5はそんな1台。
【国沢】クラウンやISにもそうした強烈な個性が欲しい!
【鈴木】同感だね

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【番外コラム】注目のスポーツセダン5台の動力性能と燃費をテスト!

日欧米のスポーティセダンの走りを試した!

 さて、このページで取り上げている「日欧米フツーに乗って楽しいスポーティセダンだが、実際のところ走ってどうなんだろう!? 動力性能はどんなもん!? 燃費は……!?

 ということで、ちょいと動力性能テストなどをやってみました。テストは全日本ラリーチャンピオンの田口幸宏選手。

 320i、キャデラックATS、レガシィB4の3台はいずれも2Lターボエンジンを搭載するが320iは上に同じエンジンのハイパワー仕様328i(245ps/35.7kgm)があるためややパワーを抑えたチューニング。キャデラックATSが276ps/35.9kgmなのに対し184㎰/27.5kgmとなる。いっぽうB4は300ps/40.8kgmとハイパワー志向なのが特徴的。

クラウンハイブリッドのゼロヨンは15秒3でBMW320iよりも速かった

 やはりというかB4の動力性能が圧倒的でゼロヨン14秒2! でもキャデラックATSも14秒7と僅差で追いすがる。320iは高回転がイマイチ伸びない印象で16秒0でディーゼルターボのアテンザよりも0.2秒、2.5Lハイブリッドのクラウンよりも0.7秒遅かった。

「BMWのハンドリングはやっぱり絶妙。狙い通りにクルマが動く。意外だったのがATSで、ビックリするほどシャープな操縦性で本格的スポーツセダン」と田口選手。

テスト結果一覧。

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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