毎年のように酷暑と言われているが、今年の夏もやはり暑くなりそうだ。熱中症にも気を付けたい毎日だが、夏は車両火災が起きやすい時期でもある。最近ではモバイルバッテリーなどの誰でも持っているものが発火の原因になるなんてことも……

文:佐々木 亘/写真:Adobe Stock(トップ画像=Denis Chubchenko@Adobe Stock)

■明らかな危険物は絶対にクルマから降ろすべき

ペットボトルは乗り降りの際に持って歩くという基本行動は、徹底しておこう(yamasan@Adobe Stock)

 日本国内での車両火災の件数は、けっこう多い。令和5年の消防白書によると、令和4年中に発生した車両火災は3,409件で、死者は92名・負傷者197名となっている。また車両火災による損害額は、19億5670万円と大きい。

 多くの車両火災は、排気管に着火物が漏洩したり、高温物・可燃物が接触したりして発生する。また、電線の短絡やスパークによる引火等も多いが、この辺りは日頃の点検で、異常箇所を早期に見つけておきたいところだ。

 そして、ユーザーの不注意や逸失で発生する車両火災もある。具体的には、高温の車内にライターやスプレー缶などの危険物を放置したことによるものだ。また収れん火災という、太陽光を集めてしまい発火する原因になるのが、ペットボトルやサングラスなど。ガラスに貼り付けた吸盤などにも注意が必要である。

 こうした車両火災の原因になるものは、クルマに積んだままにしないことが一番の火災予防だ。夏はライターやスプレー缶をクルマから降ろす、ペットボトルは乗り降りの際に持って歩くという基本行動は、徹底しておこう。

■バッグに入れっぱなしじゃない? 意外なアレも火災の原因に

 最近の車両火災で多いのが、リチウムイオン電池からの発火だ。スマートフォンやモバイルバッテリーといった、日常的に持ち歩くものから発火するケースが増えている。

 リチウムイオンバッテリーは、強い衝撃を加えたり、高温の状況で放置したりすると、火が出る可能性があるという。製品評価技術基盤機構(NITE)の実験では、夏にクルマのダッシュボードへモバイルバッテリーを放置して、発火する現象が確認されている。

 モバイルバッテリーは気温45度以下での使用や保管が適切とされているが、夏場の車内は簡単に50℃を超えてくる。僅か1時間ほどで、車内温度は50℃以上になることもあるので、リチウムイオンバッテリー製品の車内放置は厳禁だ。

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■コロナで車内に常備している人も多いのでは?

アルコール消毒液は濃度90%程度のものも多い、高温で容器が破裂すれば火災に繋がる(Hiroyuki@Adobe Stock)

 また、消毒用アルコール液の車内放置にも注意をしておきたい。揮発性の高いアルコールは、高温の車内に放置すると容器が破損し、アルコールの揮発した可燃性ガスが車内に広がることにつながってしまう。

 消毒用アルコールの濃度は70%以上であり、最近の効果が高いとされるアルコール消毒液は濃度90%程度のものも多い。いずれも立派な危険物であり、高温の車内に放置することは絶対にダメだ。

 モバイルバッテリーや消毒用のアルコールは、車内に積みっぱなしにしていなくても、外出時に持ち歩くバッグなどに入れたままになっていて、そのバッグを車内に放置してしまい火災に発展するというケースもあるという。

 ここまで取り上げてきたものは、身近にあり便利なものだが、その危険性を十分に理解し、適切な使用と保管を行うことが、私たち一人一人に求められている。大切な愛車が無くなり、ケガや命の危険もある車両火災は、普段の気遣いで防ぐことができるものだ。

 夏のセーフティドライブのために、車内の整頓と持ち物の確認は、しっかりとしておこう。

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