2013年の本誌・ランキング企画をプレイバック。今回は、最も激戦が予想されたコンパクトカークラスのランキングをご紹介! 5人の選考委員がエントリーされた17車種を10点満点で採点。さらに各人の採点について特になった点を直撃してみたゾ!(本稿は「ベストカー」2013年6月10日号に掲載した記事の再録版となります)

選考委員:鈴木直也、国沢光宏、片岡英明、渡辺陽一郎、渡辺敏史

■このカテゴリー ここがポイント

評論家陣による採点結果はこんな結果に!

 採点の基準が違えば結果が異なるのはどのクラスも同じだが、今回の5人の評論家の採点基準が微妙に違ったのがこのクラス。燃費が最優先なのか、パッケージングか、あるいはクルマの原点である走りの楽しさか、価格か。そして総合的なコストパフォーマンスか。

 そうしたなか、スイフトスポーツが合計得点で僅差の1位となった。大方の予想でトップだろうと思われたアクアが1点差の2位。さらにスポーツじゃないノーマルのスイフトも3位タイに食い込むという意外な結果となった。

 確かに、国産車のなかではハンドリングのよさが光るが、果たしてクラスを代表するクルマとしてふさわしいのか。そのあたりから聞いてみよう。

■片岡英明に訊いた!「スイフトスポーツに9点、スイフト8点と高得点の理由は?」

1位…スズキ スイフトスポーツ(価格168万~174万8250円)

 スイフトは日本などのアジア市場だけでなく、走りにうるさいヨーロッパ市場も見据えて開発されたスズキ自慢の国際戦略車。だからベースモデルから基本性能は高いレベルにある。シャシーとボディはしっかりしているし、足の動きもしなやかだ。

 ファミリー系グレードでも正確なハンドリングと軽快なフットワークを身につけている。リアタイヤはしっかりと路面に食らいつくし、先代より危険回避性能も大きくレベルアップした。

 特別仕様車のRSは、ヨーロッパ仕様に限りなく近い性格だ。運転して楽しいし、高速道路でもワインディングロードでもバランスの取れた走りを見せる。コストパフォーマンスも飛び抜けて高い。インテリアの質感が高いのも魅力のひとつだ。1.2Lは実用燃費もいい。

 フラッグシップのスイフトスポーツは、切れ味鋭い高回転型の1.6Lエンジンを積み、サスペンションもファインチューニングしている。日本車らしくない、ヨーロッパ風味のホットハッチで、気持ちいい走りを存分に楽しめる。

 狙ったラインに無理なく乗せることができ、乗り心地にも粗さがない。懐が深く、コントロールできる領域が広いから絶大な安心感がある。ビギナーでも持て余さない。

 サーキットでも気持ちいい走りを味わえるくらい潜在能力は高い。スズキの本気度がわかる、傑作コンパクトカーだ。ヨーロッパ車よりもヨーロッパ車的で、しかも買い得感がメッチャ高いから高い得点を与えた。

3位…スズキ スイフト(価格124万4250~165万3750円)

■国沢光宏に訊いた!「5人で唯一アクアに9点。アクアは燃費はいいが装備や居住性に難ありともいわれている。それでも高得点?」

2位…トヨタ アクア(価格169万~185万円)

 このカテゴリーで最も大切なのはコストパフォーマンスだと思う。改めて書くまでもなくアクアの凄さって実用燃費のよさ。燃費のことなど考えずに走って20km/hなど軽い。

 同じクラスのコンパクトカーの生涯燃費を考えれば12km/hといったあたりだろう。すなわち走行1万kmごとに5万円も浮くということだ。加えて購入時にもECOカー減税を受けられるため、同じクラス&装備内容の1.3リッター車より5万円くらい安くつく。 

 売れ筋のグレードの『S』は179万円。購入時に5万円節約できるため、174万円。10万km走るとすれば、燃料コストで50万円浮く。174万円から50万円を引けば124万円!

 なんと! アクアの価格は124万円の普通のエンジン車と同じになってしまう。

 今や1台のクルマを買ったら10年/10万km乗ることなど当たり前。日本車の耐久性、驚くほど高いですから。私が乗っていた2代目プリウスも10年になるが、まだピンピンしてる。

 10万km以上乗ろうモノなら、そこから1万kmごとに5万円ずつ浮く。といったことを考えれば、アクアの9点は当然のことでしょう。

 もちろん専門的に言えばプリウスのほうが圧倒的にいいクルマだと思うけれど、アクアを買っている人はそこまで考えていない。

 また、居住性や装備でイマイチだという同業者も多いけれど、今まで上級モデルを買っていた人たちはプリウスを選んでいる。軽自動車や古い世代のクルマからの乗り換えならまったく不満なかろう。

■渡辺敏史に訊いてみた!「他の4人が3~5点のトヨタ IQに9点。IQのよさはどこに?」

シャープなハンドリングに渡辺敏史が惚れ込んだトヨタ IQ。ただし販売面では苦戦

 IQはもはやトヨタにとっては商売の一員になり得ないという判断がなされたクルマなのかもしれない。スマートがバカ売れしているヨーロッパの一部都市で、じわじわとその票田を伸ばしているのが数少ない明るい話題だろうか。

 開発時はヴィッツ級、すなわち3.8m程度の全長で3列シートのパッケージングが成立するという試算までなされ、試作車が充分な結果を出すほど思慮がなされたプラットフォームはトヨタのBセグメント以下級の中核を成すに充分なポテンシャルを持っていた。

 が、状況を一変させたのはIIHSやユーロNCAPなど、各国の衝突安全基準の急激な改変。

 せっかく苦労して設えたプラットフォームは余力をもってこれらに対応するに至らず、ミッション上方レイアウトのステアリングギアボックスや、センターコンソール内に完全に収まるエアコンユニットなど、数々のエクイップメントも含めてIQのみに与えられた水泡と化しつつある。

 IQは今乗っても、恐らくCセグメント以下級のトヨタ車のなかで最も芯のあるクルマだ。

 ディメンジョン的にやむを得ないピッチングも極力抑え込んだ乗り心地の上質感、標準的なBセグメントと比較してもまったく見劣りのないスタビリティ、異様なホイールベース/トレッド比からくるシャープなハンドリングを充分に活かせる足回りの接地感など、少なくともパッソやヴィッツあたりとはモノの素性と作り手の根性が違うというオーラをビシビシと感じる。

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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