ホンダの車名が他社と違う点、それはズバリ英数字車名だ! WR-VにZR-V、もっと言えばS660など英数字のみを用いてそのクルマを体現する。そんなホンダの英数字車名だが、始まりはかなり古い。今回はそんなホンダお墨付きの車名の歴史を追っていこう。

文:佐々木 亘/写真:ホンダ

■数字だけのシンプルな車名がホンダの小型乗用車のはじまり

ホンダ 1300は、MTがあたりまえの時代にATのツーペダルドライブを楽しめた希少な小型セダンだ

 シンプル車名の名車第一弾は、ホンダ初の小型乗用車「ホンダ・1300(せんさんびゃく)」だ。特にセダンタイプの「77」シリーズは、のちに単一車名の「ホンダ・77」となって、ホンダ乗用車の礎になった。

 エクステリアデザインはシンプルだが、ロングノーズが象徴するスタイリングは、フレッシュな印象を与え、ソフトな丸みがファミリーカーとしての落ち着きも醸し出している。

 1970年代に人気を集めたクルマでも、オートマチックトランスミッションを売りにしているがホンダらしい。エンジンそのものをオートマチック用に作り上げ、ミッションと一体になった機構は、スムーズでソフトな変速を楽しむことができる。

 MTがあたりまえの時代に、ツーペダルドライブを楽しめた、希少な小型セダン77。数字だけのシンプルな車名だが、ホンダらしさを全面に出した、稀代の名車である。

■アルファベットと数字の名作は結構多いぞ

 数字だけの車名から、アルファベットを組み合わせたものへ変化していったホンダ車の名称。中でも車名にSを冠したSシリーズ第2弾、「S600」は現在でもファンが多い。

 エンジンには4キャブレターのDOHCが採用され、57馬力を叩き出す。当時のカタログによると、ゼロヨン加速は18.7秒だったらしい。606ccの限られた排気量ながら、レッドゾーン9,500回転という高回転エンジンでしっかりと馬力を出す特性は、レースエンジンさながらだ。

 また、Sを冠したモデルでは、S2000も忘れることはできないだろう。フロントミッドシップレイアウトで、車体の前後重量バランスが50:50となり、VTEC搭載のF20C型エンジンはレッドゾーン9,000回転で、250馬力を出す。

 「S+数字」も、ホンダの名車の方程式か。シンプル車名の素晴らしいクルマは、まだまだ出てくるぞ。

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■アルファベットだけの名車といえば「NSX」とアレだよね

NSXには、ホンダのレーシングテクノロジーがすべて入ったと言っても過言ではない

 WR-V・ZR-V・CR-Vといったアルファベット車名の代表格は、やはりNSXをおいてほかにあるまい。

 1000万円近い車両本体価格、オールアルミボディで駆動方式はMRという日本が誇るスーパーカーだ。1989年にデビューし、16年間フルモデルチェンジなしで売り続けられた。

 NSXには、ホンダのレーシングテクノロジーがすべて入ったと言っても過言ではない。このクルマを、ホンダ最高の一台に上げる人も多くいるだろう。

 さらにアルファベットだけで構成された車名をもつ、あの名車(迷車かも…)も忘れてはならない。1996年登場のS-MXだ。

 ホンダのしなやかな発想による、クルマの新しい姿へのトライだったS-MX。2Lエンジンにベンチシート、スクエアなパッケージデザインは全長4mを切るボディサイズで、余裕の室内空間を生み出す。

 ドアは助手席側に2枚、運転席側は1枚の1×2(ワンツー)ドア。音にもこだわったS-MXは、ノーマルで直径65mmの大径エキゾーストパイプを採用し、サイレンサーを専用設計にしたことで、伸びやかでクリアな排気音を生み出す。

 これまでにない、ホンダが創造するあたらしいクルマをカタチにしたS-MXも、英数字だけの名車に入れておこう。

 英数字だけで構成されるホンダ車の名前には、何か不思議な魔法があるようだ。歴代の英数字ホンダ車と同様に、WR-VやZR-Vもホンダらしさが全面に出た、歴史的なモデルになっていくことだろう。

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