2022年1月に登場した現行モデルのトヨタ「ノア」/「ヴォクシー」。2023年年間の販売台数は、ノアが約9.5万台で登録者全体の7位に、ヴォクシーも約8.9万台を売り上げ、ノアに続く総合8位にランクイン。両モデルあわせて約18.4万台は、登録車トップの販売台数を誇るヤリス(約19.4万台)にも迫る数字だ。

 そんな大人気モデルノア/ヴォクシー兄弟だが、先代にはもうひとつ、「エスクァイア」という兄弟車もあった。フルモデルチェンジで姿を消してしまったエスクァイアだが、いま中古車市場では、このエスクァイアが圧倒的に人気だという。

文:吉川賢一/写真:TOYOTA

「高級路線」がウリだったエスクァイア

 2014年1月デビューの先代ノア/ヴォクシーから遅れること9ヵ月後の、2014年10月に登場したエスクァイア。標準グレードの「Xi」と、上級グレードの「Gi」の2つがあり、それぞれにガソリン車とハイブリッド車が用意されていた。ノア/ヴォクには存在したエアロ仕様は設定がなかったものの、3兄弟のなかでも高級感ある内外装デザインが魅力で、メッキ多めのフロントフェイスによって、ワンランクもツーランクも上の高級ミニバンにみえた。

 しかしながら、冒頭でも触れたように、2022年1月に登場した新型ではエスクァイアは用意されず、1世代で姿を消すことに。2020年5月にトヨタの販売店が統合された影響もあったようだが、エスクァイアの高級路線が、ミドルクラスミニバンユーザーのニーズには、いまいち合致していなかった(高級路線ならアルファード/ヴェルファイアがあった)、というのもエスクァイア廃止の理由となったようだ。

80系エスクァイアは、2017年9月に後期モデルへマイナーチェンジ。フロントマスクやインテリアの修正など、大掛かりな改良がなされた。写真はエスクァイア後期型「Giプレミアムパッケージ」
エスクァイアのインテリア。ブラウンの本革シート地は、高級感があって大人の雰囲気にあふれている
エスクァイアの中古車をもっと見る ≫

その「高級」ぶりが、バングラデシュで人気に

 そんなエスクァイアだが、冒頭で触れたように、いま中古車市場で人気となっている。7月中旬時点、中古のエスクァイアの市販価格は、ガソリン車の2019年式は164~300万円、2020年式は190~320万円、2021年式は235~348万円。ハイブリッド車だと、2019年式は255~389万円、2020年式は255~368万円、2021年式は275~359万円といったところ。4年落ち、5年落ちであっても300万円台という高値をつけて販売する中古車屋もある。

 これは、南アジアのバングラデシュで、エスクァイアが爆発的人気となっているため。中古車輸出に詳しい自動車買い取り専門店の担当者によると、ノア/ヴォクシー/エスクァイアの3モデルのなかでもっとも煌びやかなフロントマスクのエスクァイアは、派手なクルマを好むバングラデシュの人に非常に好まれているそう。実際、ノアとヴォクシーがバングラデシュに行く台数は、エスクァイアに比べて遥かに少ない。

 なかでもハイブリッド車の需要が高く、業者向けオークションで落札されたエスクァイアハイブリッドのほとんどが、ほとんどがバングラデシュへと輸出されているという。エスクァイアハイブリッドのほかにも、カローラクロスハイブリッド、50系プリウス、カローラアクシオハイブリッド、C-HRハイブリッドなど、日本のハイブリッド車が数多く輸出されているようだ。

 ただ、どんな個体でもいいかというとそうではなく、バングラデシュには「製造5年落ちまで」という中古車の輸入に関する規制が設けられており、この基準をクリアしたもののみが、バングラデシュに輸出が可能。今年2024年の場合は、2019年製造車までとなる。

 エスクァイアの製造は2021年までなので、このバングラデシュの規制にかかるまであと3年。この「限定品」ぶりも、バングラデシュでのエスクァイア人気に拍車をかけているようだ。

人気のボディカラーは、ブラキッシュアゲハガラスフレーク。次いでホワイトパールクリスタルシャイン
モデリスタからエアロキットも発売されていたエスクァイア。この手のエアロパーツ付きカスタムカーは、さらに高値で落札される

エスクァイアが欲しい人は5年落ち超を狙うべし

 そのため、エスクァイアに乗りたい人は、今年2024年の場合だと、2018年製造車以前のモデルを買うほうがお手頃価格で手に入る。そして、いまエスクァイアハイブリッドに乗っている人で、下取りに出すことを検討しているならば、製造年5年落ちまでにはいるうちに売却してしまうほうが、高値がつく可能性が高い。この年式規制を超えたとしても、エスクァイアは国内需要もあるので急な相場下落はないとのことだが、やはり製造年5年落ちまでほどの高値相場とはならないそうだ。

 「高級路線」を個性として登場したものの、その個性が理由となって廃止に追い込まれてしまったエスクァイア。バングラデシュで第二の「人生」ならぬ「車生」を謳歌してほしい。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。