2024年3月31日をもって特定整備認証の経過措置期間が終わり、電子制御装置整備に関するルールが明確になった。この経過措置期間を有効に活用し自社の電子制御装置整備に関する体制を確立したのが、石川県でガソリンスタンドを19店舗、車検・整備工場を9店舗(指定4、認証5)、鈑金塗装工場を1店舗運営する総合自動車アフターマーケット事業者の株式会社金沢丸善である。同社は、昨年12月に本社近隣に自動車ガラス&エーミング専門店を開設し、鈑金塗装や整備作業からガラス交換、エーミングまで、自社で一気通貫に作業できる体制を構築した。
株式会社金沢丸善の担当者 南達也氏に話を伺うと「弊社は鈑金塗装を多くやっているので、自社のお客様の安全を守ろうと思うと避けては通れないと考えました。また、自動運転など進化が続く中で“エーミングなら金沢丸善”という自社のブランドを確立させたいと考え開設に踏み切りました」とその経緯について語られた。
ARCネットワークサービスで情報収集
そんな同社が工場を設立するにあたり情報収集のためにサービスの利用を開始したのが、自動車の進化とルールの変化に対応するための情報提供を行う「ARCネットワークサービス」である。ARCネットワークサービスが主催する研修会や視察会に積極的に参加することで、作業場の環境についてや機材の選定についてなど多くの情報を収集し、エーミング工場設立に活かしている。中でも、作業場の床を測定し誤差を±5mm以内にしている点や、国産メーカーの純正診断機を揃えている点は特筆すべき点であり、“入庫した国産車には100%自社対応したい”と語る同社の意気込みが表れている部分だろう。
山形部品でエーミング技術を学ぶ
さらに同社は、ARCネットワークサービスの研修センターを務める株式会社山形部品による個別研修を受けることで、エーミングの技術を習得したという。山形部品は、東北エリア(山形、秋田、宮城)において自動車部品商社を営む企業だが、2013年より地域の整備事業者にとっての新しい収益源確保を目的にサービス部門(Y-PIT)を立ち上げており、その中のメニューとして存在しているのがエーミングである。山形部品のサービス部門では、2019年2月のエーミング請負開始から累計9,000台以上のエーミング施工の実績を持つという。本来は地域事業者の支援を目的としているが、ARCネットワークサービスの斡旋をうけ、地域外の事業者にも門戸が開かれた。
個別研修を受けた金沢丸善の南氏は「工場設立にあたり経験値を上げていかなければと考え、自社の中古車を活用し1年位前から累計100台程のエーミングをやってきたので多少の自信はあったのですが、山形部品様の研修を受けて“FAINESを活用できていなかった”と感じました」と、独学で学んできたこととの圧倒的な差があったことに言及された。
今更ではあるが、衝突被害軽減ブレーキは2021年11月から国産車の新型車に、2025年12月からは全ての新車に搭載が義務付けられており、今後は対象となる車両が占める割合は高くなる一方だ。来るべき未来に対して、準備を進めてきた事業者と、特定整備認証を取得しただけで満足してしまった事業者、そもそも何もしてこなかった事業者、その差はこれから明確になっていくだろう。
とはいえ、金沢丸善のような事業者は全国的に見てもまだ稀な存在である。まだ準備が整っていない事業者でも挽回は可能だ。前述したARCネットワークサービスでは、集合形式で開催する通常の研修以外にも、様々な個別研修プログラムが用意されている。自社の環境に合わせたオリジナル研修を行うことで、地域における強みを創出することが可能だ。気になる方は、一度調べてみると良いだろう。
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