中国政府は4月3日、自家用車を所有する個人がクルマを買い替える場合に限り、頭金ゼロでも自動車ローンの提供を認める規制緩和を実施した。中国人民銀行(中央銀行)と国家金融監督管理総局が連名で、金融機関に対して自動車ローンの融資基準変更を通達した。
この措置は、中国政府が景気テコ入れのために推進する「以旧換新」(訳注:旧型製品の買い替え促進)キャンペーンの一環だ。通達によれば、自家用の新エネルギー車およびエンジン車(の新車)へのローン提供に関して、金融機関は借り手の信用状況や返済能力などに応じ、車両価格に対する貸付比率を(頭金ゼロを含めて)任意に設定できるようになった。
(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、プラグインハイブリッド車[PHV]、燃料電池車[FCV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
貸付比率の上限を撤廃
中国人民銀行と中国銀行業監督管理委員会(現国家金融監督管理総局)の2017年の通達では、自家用の新車に対するローンの貸付比率を新エネルギー車は最高85%、エンジン車は同80%と定めていた。
今回の通達はこの上限を撤廃し、金融機関が独自に決められるようにすることで、ローンの貸付比率を最大100%に引き上げられるようにした。
自動車ローンの借り手の立場では、金融機関の審査で返済能力などに問題がないと判断されれば、以前は車両価格の最低15~20%を用意しなければならなかった頭金が不要になる。購入時の負担を軽減することで、自家用車オーナーの買い替え意欲を刺激するのが中国政府の狙いだ。
中国政府にとって、個人消費の安定成長の確保(による中国経済の下支え)は経済政策の重要な柱の1つになっている。
日系自動車メーカーも「頭金ゼロ」を積極的にアピールしている(写真は東風ホンダのウェブサイトより)そんな中、国家金融監督管理総局は2023年10月、金融関連政策を通じて個人消費を喚起するための一連の方針を発表。消費拡大効果が大きい自動車に関して、ローンの融資条件の最適化、借り入れ手続きの簡素化、ローン商品の品揃え充実、新エネルギー車への支援拡大などを打ち出した。
さらに、金融機関の法令順守と適切なリスク管理を前提に、「ローン審査基準の適度な緩和、頭金比率の引き下げ、ローン期間の延長などによって、自動車購入のハードルを下げる」方針を示していた。今回の通達は、それを具体化したものにほかならない。
金融機関は商機獲得に手ぐすね
自動車の買い替え促進は、国務院が2024年3月に発表した「大規模設備の更新と消費財の買い替え促進に関する行動計画」でも必要性に言及した。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら政府主導で「以旧換新」が奨励される中、金融機関各社はこの商機を逃すまいと手ぐすねを引いている。中国郵政貯蓄銀行のリテール部門の責任者を務める梁世棟氏は、4月2日の決算説明会で次のように述べ、事業拡大に意欲を示した。
「以旧換新の主な対象分野は、自動車や(パソコン、スマートフォン、デジタル家電などの)エレクトロニクス製品、(家具などの)インテリア製品などだ。これらは消費者ローンの事業領域と完全に一致している」
(財新記者:丁鋒)
※原文の配信は4月3日
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