北陸新幹線が延伸開業して周辺地域ではあの手この手で観光客誘致が活発化している。何もしなくても来る場所と、そうでない場所とではかなりの違いがあるようだが、離れた場所ではバスで送客するしかなくそうした努力が続けられている。

文:古川智規(バスマガジン編集部)
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■実証実験をさらに充実!

ダイヤ改正の上でバス停新設で便利に!

 小浜市、おおい町、高浜町の3つの市町と各観光協会で構成する「小浜・おおい・高浜広域観光推進協議会」は、北陸新幹線福井・敦賀開業を契機に、JR敦賀駅と若狭西部の各地を結ぶ直通バス「若狭メモリーライナー」を実証運行している。そして「若狭メモリーライナー」の利便性をさらに向上させるために、敦賀駅西口方面にバス停を追加しダイヤを改正した。

 若狭おばま観光協会では「観光だけでなく、夏休みの帰省にもご利用してほしい」としている。ただし、路線を開設しただけでは乗車が伸びない現実もある。

■若狭西部がもっと近くに、もっと便利に

 「若狭メモリーライナー」の運行により、北陸新幹線やサンダーバード、しらさぎ等を利用した若狭西部観光がもっと近くに、もっと便利になっているとしている。バスの運行時間帯は、JR小浜線が運行していない時間に設定しており、地域の二次交通補完の役割を狙っているようだ。

 4月からの運行実績を分析し、直行バスの認知度をより高めること、利用者の利便性をより高めることを目的とし、集客効果が期待できるJR敦賀駅西口側にバス停「白銀乗車口」を新たに設けた。さらに運行ダイヤを変更し、乗車人数の増加効果や敦賀駅周辺の路線バスから若狭西部への乗り継ぎ効果を検証する。

■週末に1.5往復運転

ダイヤと運賃

 運行はJR敦賀駅東口を出発し、今回のダイヤ改正で追加となるJR敦賀駅西口方面の「白銀乗車口」を経由し、道の駅「若狭おばま」、JR小浜駅、SEE SEA PARK、JR若狭本郷駅、JR若狭高浜駅、UMIKARAの順に停車する敦賀発便(往路)と、JR若狭高浜駅を出発し、JR若狭本郷駅、JR小浜駅、JR敦賀駅の順に停車する高浜発便(復路)がある。

 敦賀発便は金曜日が午前9時50分発と午前10時50分発、土日祝日は午前10時50分発と午前11時50分発の各2便を運行し、高浜発便は金曜日と土日祝日ともに午後3時発の1便を運行。

 各便の定員は27人で、運賃は敦賀、中学生以上1,500円、小学生750円、未就学児は無料。小浜高浜間は、中学生以上500円、小学生250円、未就学児は無料と、地域間の移動にも利用可能だ。

■若狭メモリーライナー運行情報詳細

 運行期間は、2024年12月29日(日)までの金曜日・土曜日・日曜日・祝日に下り2便、上り1便の1.5往復を運行する。

 夏休み期間中のうち臨時便は2024年8月9日(金)から同8月18日(日)まで、往路は毎日運行、復路は毎日運行に加えて増発する。

■ダイヤに加え運賃支払いもネックになるか?

運賃の支払いは現金で乗車券購入

 運行会社はワコーサービス(福井県敦賀市)。運賃の支払いは現金のみで、乗車券は発車5分前までにバス乗降口近くのスタッフより購入しなければならない。また乗車は先着順で予約はできない。

 デイリー運行ではなく1.5往復しか運行されないのも利用が伸び悩む原因なのかもしれないが、運賃が現金のみで乗車券を購入しなければならないのもネックだろう。貸切車で運行するバスに実証実験でわざわざIC対応の運賃箱を用意するのは難しいのかもしれないが、新幹線をICカードで乗ってきた乗客に現金支払いを求めるのは面倒だと感じられるかもしれない。

 また予約できないので、1便しかない復路便に乗れなくなると予約した新幹線に間に合わなくなる不安もあるかもしれない。地元の区管利用ならばさほど問題にはならないだろうが、新幹線でやってきた観光客のことを考えるとリスクが大きいと感じてしまうのかもしれない。

■新幹線開業効果を高めるための二次交通の充実

 地域では、北陸新幹線福井・敦賀開業の効果を高めるため、観光客の受入環境整備や、観光施設、宿泊施設の整備など様々な取り組みを行なっているが、敦賀駅から若狭西部への二次交通の充実が大きな課題になっていた。

 そこで、小浜・おおい・高浜広域観光推進協議会では敦賀駅と若狭西部を直接結ぶ直通バスの運行について検討を進め、新幹線開業効果を高めるための二次交通の充実策として、直通バスの実証運行を行うことにした。

 実証運行では、敦賀駅と3市町の観光施設やJR各駅をバス停として設定しており、JR小浜線の運行していない時間帯の運行とすることで、二次交通の充実を図っている。今後は実証運行期間中のバス利用状況を調査しながら正式運行に向けた検討を進めるとしている。

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