クルマに個性がなくなったと言われる昨今、余計に異色ぶりが目立つネオクラシックなモデルたち。では今あえてその茨の道を進むオーナーは、何を求めているのだろうか。今回はトヨタのガルウィングドアモデル【セラ】に今なお乗り続けているオーナのリアルな声をお届け!!!
文・写真:高桑秀典
■そもそもセラってどんなクルマ?
バブル好景気を追い風として、’80年代後半に個性的な国産車がたくさん登場した。1990年3月にデビューし、1996年1月まで販売されたトヨタ セラも、開発費が潤沢だったからこそ具現化することができた珍日本車のひとつだ。
車名はフランス語の「etrê(~である)」の未来形が由来で、未来に向けて羽ばたく夢のあるクルマとの意を込めて命名されたのだという。
ニューライブコンパクトビークルとも呼ばれたセラの最大の特徴は「あらゆる天候下でのオープン感覚の体験」を実現するために採用されたバタフライドア。
ドアガラスをルーフまで回り込ませ、ルーフの前端中央付近とAピラーの根元近くの2点を支点として斜め前上方に開くようになっている。
車体はスターレット用のプラットフォームに直列4気筒DOHC16バルブ1.5リッターエンジン(最高出力110ps)を横置きに搭載し、5MTまたは2ウェイオーバードライブ付4ATを介して前輪を駆動していた。
新車販売時はガルウィングドアを持つクーペと紹介されていたが、セラはランボルギーニのように走行性能を追求したスポーツカーではなく、あくまでも雰囲気を楽しむタイプのクルマだったので、ユーザーの多くがバタフライドアに魅せられて購入した。
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■デロリアンの代案としてセラを選択
1990年式の青いセラを4年前から愛用しているじぇじぇじぇさん(49歳)もガルウィングドアのクルマに乗りたくてセラをゲットしたそうで、詳しく伺ってみたら買った当初はフルノーマルで、本当に欲しかったのはデロリアンとのことだった。
「SFアドベンチャー映画のバック・トゥ・ザ・フューチャーを観てデロリアンを買いたくなったのですが、タマ数がない、壊れる、値段が高いという三重苦で断念しました。
そんなクルマを購入したら、奥さん側から別れ話をされることになりますからね。これはセラを買った人のアルアルなんですが、デロリアンが無理ならAZ-1だな、ということになって軽自動車のスポーツクーペが欲しくなったのですが、2シーターなので、これまた離婚に発展することを恐れて断念。
結果、4人乗れるガルウィングドアのクルマを探すとセラに行きつくわけです」
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■自分のスタイルでセラを楽しむ
今回撮影させてもらったセラはじぇじぇじぇさんにとって2台目で、愛息が生まれるちょっとだけ前となる22~23年前にワインレッドの個体に乗っていたのだという。
これは15万円で買った低年式車で、車検を取って半年後にもらい事故で廃車になったので、新たなファミリーカーとしてホンダ エディックスに乗りかえた。
デロリアン風にモディファイしたセラ2号機は、フロントにステップワゴンのバンパーやハリボテのリトラクタブルヘッドライト、リアにニューミニのフォグカバーやAE110型カローラレビンのウイングを付け、テールレンズをテスタロッサ風にするなど、いろいろ楽しんでいる。
車内に置いてあったプレステの筐体はティッシュボックスになっており、オーナーの写真を撮るときに手に持っていたモノはロックマン・シリーズ(アクションゲーム)に登場するE缶で、ファミコンのコントローラはセラのキーレスになっており、セレクトボタンで施錠、スタートボタンで解錠するそうだ。
手先が器用なじぇじぇじぇさんのカーライフは、これからも独自路線を歩んでいく。
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