スマートなパッケージングと先進的な技術・性能を持つトヨタのミドルセダン「SAI」は、小さな高級車として名を馳せた「プログレ」の正統後継車のように見える。上級ハイブリッドモデルとして登場したSAI、追い求めた究極のセダンは、現在のクラウンクロスオーバーにも引き継がれているだろう。当時は目立たない存在だったが、その中身は今でも才(かど)めいていた。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■登場から8年の間に積み上げた存在感!
2009年末から販売がスタートしたSAIは、2013年にマイナーチェンジを受け、2017年11月まで販売が続けられた。
プリウス以来のHEV専用車であるSAIは、プリウスよりも上質なクルマとして、トヨタ全チャネルで販売されている。
ほぼ同時期に登場したレクサスHS250hの存在により、レクサスの廉価版のようなイメージがついてしまったため、販売はそれほど好調ではなかったが、その存在感は年々大きくなっていた。
この時期にトヨタ車を販売していて、SAIの存在に助けられなかった営業マンはほとんどいないだろう。
プリウスとクラウンの間に位置するSAIは、ある時は上級セダンとして、またある時は経済性が高く上質なクルマとして、メイン販売車種では物足りないというユーザーのニーズに応えていた。
記事リンク
前の記事巨匠が残した含蓄に富む名台詞を振り返る!! 小さな高級車論ほか 【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
次の記事トヨタ唯一の[ガルウィング]がヤバすぎたのよ! 80年~90年代のトヨタが出した[一代限り]のクルマ達を一挙に
■セダンだけどセダンじゃない!?なんだこのパッケージング!
SAIの魅力は巧みなパッケージングにある。ボディサイズは全長4,605mm×全幅1,770mm×全高1,495mmと、3代目プリウスを少し長くした程度。ホイールベースにいたっては、2,700mmでプリウスと同じなのだ。
しかしながら、プリウスよりも圧倒的に広い車内。ゆとりのある室内長と余裕のあるヘッドクリアランスを確保した室内高によって、クラウン並み、いやそれ以上の居住性を持っていた。
それでいて上級セダンとしては比較的小さなボディサイズと、短い前後オーバーハングが、取り回しの良さを実現する。最小回転半径は5.2mと小さく、狭い道や街中での取り回しも良かった。
見た目は明らかにセダンなのだが、一度ステアリングを握ると、また後部座席に収まると、セダンのそれとは違った雰囲気を感じられるのだ。
特に高めのヒップポイントで乗り降りがしやすく、見晴らしのいい視界はSUVのようにも感じられる。
こうした感覚は、最近もクラウンクロスオーバーで感じられた。クラウンの場合は明らかにSUVなのだが、SAIはセダンでありながらSUVのように感じられる作り方がニクイ。
SAIは、セダンによるクロスオーバーの原点だったのかもしれない。
記事リンク
前の記事巨匠が残した含蓄に富む名台詞を振り返る!! 小さな高級車論ほか 【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
次の記事トヨタ唯一の[ガルウィング]がヤバすぎたのよ! 80年~90年代のトヨタが出した[一代限り]のクルマ達を一挙に
■既定路線ぶっ壊し!クルマづくりの原点に立ち返る
SAIが実現した高い居住性や近未来感のある操作系は、のちのクルマに大きな影響を与えている。
セダンでありながらFFのHEVであること、「低さや長さ」ではなく「高さと短さ」を特徴にしたこと、リモートタッチのような新たなインターフェイスを与えられたこと、その全てがSAIらしさであり、それはセダンの既定路線から大きく外れた、SAIのこだわりなのだ。
まさに「セダンを時代に合わせてゼロから作ったらこうなりました」と言わんばかり。こうした新しい発想の集合体を発表することが、クルマづくりの原点だったように思える。
今でもSAIやHS250hからは、古さを感じない。むしろ時代がやっとSAIに追いついた感じ。SAIによって作り上げられたニュースタンダードは、現代のスタンダードとなっている。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。