「新車を注文しても届かない!」「年単位の待ちが発生する」という状況は、コロナ禍以降より顕著になってきた。こうした長い納期を背景にしてか、新型モデル登場時の売り方や情報公開の方法が変わってきている。情報先出しか、それとも発売日まで秘密厳守か。ユーザーのためになる新型モデルの売り方はどちらなのか、考えていきたい。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■秘密厳守?情報を漏らさず発売日から売り出すトヨタ陣営!!
名のある、クラウンやランドクルーザーシリーズは、発売前から大々的なワールドプレミアを行い、車両仕様をある程度公開するトヨタだが、その他のクルマでは、モデルチェンジが迫っていても、一切情報が出てこない厳戒態勢を取っている。
販売を行うディーラーに対しても、現場の営業マンに対しても、新型モデルの情報到着は発売日前のギリギリのタイミングであり、情報が洩れることを大きなリスクだと、トヨタ側は感じているようだ。
こうした状況では、これまで行ってきた予約販売・先行受注といったものが行えなくなってきたのがトヨタディーラー。
内容不明のまま、注文順だけを決める販売店もあるものの、最近では多くのトヨタディーラーが、情報公開に合わせた発売日からの一斉受注を行っている状況だ。
一方で、メーカー側の秘密主義をよそに、SNS等では不確かな情報が様々に飛び交う状況が続く。こうした情報に振り回されるユーザーと、何もわからないままにユーザーの鎮静化を任せられる営業マンを見ていると、あまりにも不憫だ。
秘匿を続ける状況は、ユーザーファーストとは言えないのかもしれない。
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■トヨタとは対照的に、バンバン先行公開するホンダ陣営
新型モデル情報の「先出し」を積極的に行うのが、ホンダだ。つい先日は、公式ホームページ内で新型フリードの情報を出した。
1画面程度の限定的なモノかと思いきや、内外装デザインやボディカラー、新設された装備類まで、簡易カタログ以上の情報を出している。
さらにホームページには、先行展示情報や、先行予約受付中の文字が並ぶび、ホンダディーラーに行くと、タブレットやPCの中ではあるが、新型フリードのかなり詳しい情報を知ることができ、もちろん注文も受け付けているのだ。
誰でも、どこでも、どんな時でも正しい情報が早く入手できるというのは、新型モデルを待ちわびるユーザーの気持ちとしては嬉しい。
トヨタとホンダ、どうしてここまで情報の扱いに差が出てしまったのだろうか。
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■どちらも情報は平等に与えられている。だがしかし…..
トヨタ側が新型車情報を頑なに隠し続ける理由は、新型モデルが転売されるという近年の問題にあると思う。
おそらく、トヨタとしても情報を先出しして、ユーザーニーズを早くつかんで起きたい気持ちは山々なのだろうが、いかんせん新型モデルに対する需要と供給の乖離が大きく、転売で儲けが出る状態になってしまうのだ。
車両供給量には上限があり、すぐに需要量と同じくらいのクルマを用意することは不可能。そのため、できるだけ多くの人が平等に購入手続きを踏めるように、情報公開を発表ギリギリに設定しているのだろう。
ユーザーにとっては、優しくない対応だが、自社の商品やディーラー、さらにはユーザーを転売問題から守るためには、そうせざるを得ない状況になっている。
不満は残るが、こうしたトヨタの対策には、一定の理解を示しておかなければなるまい。
ホンダのような先出しでも、トヨタのようなギリギリまで秘密保持でも、ユーザーに情報が与えられるタイミングが同じで、平等であれば問題はないと思う。
ただ、一部の人だけが先に情報を知りえて、注文する準備が早く整ってしまうのは、不平等であり問題だ。
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■クルマ業界、今後どうするのが正解!?
こうした問題を考えると、新型モデルの情報自体は、クラウンやランクルのように先出しする方がリスクは少ないのではないだろうか。
隠すからスクープになり、漏洩リスクも出てしまう。情報の取り扱いに対してディーラーもシビアになっており、厳重秘匿では誰も得していないように筆者は思う。
ユーザーファーストであり、売り手も作り手も困らないのは、メーカーが1年でも3年でも5年先でも、「こういうクルマをこういうカタチでつくるかもしれません。大体こんな感じで」と、どんどん公開していく手法だろう。
予定が変わって「新型を作らない」と引っ込めても、誰も文句は言えないのだから。
買う機会と情報は、常に平等にあるべきだ。それを実現するのもメーカーの役割だと思う。メーカーの都合で多くの人を振り回すのは、もうやめてもらいたい。
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