2024年も後半戦。前半には注目の新型車登場や、自動車メーカーの不正など、さまざまなニュースがあった。この先のキーとなる自動車界の事象は何か? ここでは、近年停滞気味といわれる「自動運転」について探ってみる。
※本稿は2024年6月のものです
文:鈴木直也/写真:ホンダ、日産、スバル、テスラ、メルセデスベンツ、BMW、ベストカー編集部、AdobeStock ほか
初出:『ベストカー』2024年7月26日号
■近いうち実現するハズだった「夢の自動運転」は今……
あれほど熱狂的だったBEVブームもさすがに最近は失速気味と言われている。
その理由として大きいのは、メーカー側に「BEV疲れ」と表現したい状況があること。つまり、電池の開発や工場への投資などでやたら金を食うばかりで、肝心の収益がぜんぜん上がらないという問題……。
いくら将来有望とはいえ、赤字事業は企業の体力を削り取る。これは、活況を呈している中国BEV市場でも同様で、彼らはいま壮絶な生き残りバトルを展開しているのだ。
いま、これと同じような状況に陥っているのが、「自動運転」の開発だ。
一般紙メディアは大袈裟な表現が得意だから、ホンの2〜3年前は「もうすぐ無人タクシーが自宅まで迎えに来てくれる!」みたいな夢を語っていた。
もちろん、アメリカや中国では無人タクシーの実証実験が盛んに行われているが、アレはあくまで「実験」の段階。ビジネスとして利益を生むまでには、いくつものハードルが待ち構えている。収益の上がるビジネスとして、自動運転サービスを提供する会社は、まだどこにも存在しない。
この状況にしびれを切らしているのが、自動運転ベンチャーに資金を供給する投資家サイドだ。
BEVはモノ造りだが自動運転はほぼソフトウェア。工場などの固定資産投資が少ないから、参入と撤退が容易にできるという特徴がある。
つまり、「見込みがない」と判断された企業からは容赦なく資金が引き上げられる。例えばGMとVWが大きな投資していた“アルゴAI”は2022年末に解散。両社合計で7000億円以上を減損処理している。
この分野におけるビッグネームは、テスラの“FSD”、GMがバックアップする“クルーズ”、そしてグーグル傘下の“ウェイモ”が御三家だが、大手といえども赤字のまま事業が存続できる保証はない。
テスラだけはBEVメーカーと一体化しているため自動運転部門単独の収支はわからないが、いずれにせよあまり楽観的な状況にあるとは言い難いと思う。
現実的な対応としては、あえてレベル3以上の高度な自動運転を目指さず、ドライバーの管理責任を残すレベル2のままADASを高機能化するというのが最近のトレンド。
完全自動運転ではなくともカメラやLIDARは必要だから、それを供給するサプライヤーは利益を上げられるし、完成車メーカーとしても事故のリスクや投資を限定できるメリットがある。
また、完全自動運転を目指すなら特定地域での低速モビリティや高速道路でのトラックのカルガモ走行など、テーマを絞り込んだほうが収益化の可能性が高そう。まぁ、あんまりデカイ風呂敷を広げないほうが、ビジネスとしては筋がいいってことですかな?
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