スバル・オブ・アメリカは「レガシィ」を、2025年モデルをもって生産終了すると発表した。1989年の初代登場以降、これまで35年7世代にわたって生産されてきたレガシィ。日本では特に5代目まで設定されていた「レガシィツーリングワゴン」が90年代の国内ワゴンブームの立役者として知られている。だが、レガシィというクルマの凄さは、ブームを牽引したことだけに留まらない。ここで改めてレガシィというクルマの凄さについて振り返ってみよう。
文:吉川賢一/写真:SUBARU、ベストカー編集部
■名機EJ20エンジンを最初に搭載したモデル
スバル「レガシィ」は、1989年に初代モデルが登場した。このころのスバル(当時は富士重工業)は経営状態が非常に厳しく、倒産危機から打開するため、スバルが満を持して開発したのがこの初代レガシィだった。
日本ではツーリングワゴンがあまりにも有名だが、初代レガシィは、WRCに参戦する車両として、セダンのRSを中心に開発されており、1990年から4年間参戦したWRCでは、1993年のニュージーランド・ラリーで優勝をはたしている。
そのポテンシャルの高さの理由のひとつが、名機といわれるEJ20型2.0リッター水平対向4気筒ターボエンジンだ。EJ20エンジンは初代レガシィに最初に搭載されて以降、30年間も改良に改良を加えながらスバルのスポーツモデルに受け継がれ、2020年に終売となった「WRX STI EJ20ファイナルEd.」まで搭載された。
エンジン本体がコンパクトかつ低重心、ピストンが向かい合うように配置された左右シンメトリカル構造など、スポーツ走行車にはうってつけのパワーユニットで、のちにWRCへ投入されたインプレッサWRXの大活躍も、このEJ20があってのこと。初代レガシィはその名の通り「レガシィ(後世に受け継がれていくもの)」をスバルに与えてくれたのだ。
このEJ20エンジンが初代レガシィツーリングワゴンにも搭載されていたことで、国内では当時ハイパワー4WDワゴンという特殊なカテゴリがブームに。全長4545mm×全幅1690mm×全高1395mm程度というコンパクトなボディサイズも、機能美と潔さを感じさせてくれていた。国内ではこの初代レガシィツーリングワゴンの大ヒットし、北米でもこのツーリングワゴンをベースに車高をあげた「アウトバック」が大ヒットしたことで、スバルは経営危機から脱することができた。
レガシィツーリングワゴンの中古車をもっと見る ≫■世界に誇れるハイパワー4WDワゴンとして成長
その後レガシィは、1993年にフルモデルチェンジ。
2代目は全長を60mm延長したことで、後席の居住性を大きく改善させたうえで5ナンバーサイズをキープ。エンジンは、GTとGT-Bの2L水平対向4気筒ターボを、ターボチャージャーを2個採用したシーケンシャルツインターボの「2ステージターボ」へパワーアップ。最高出力は250psも達した。
GT-Bはさらに1996年のマイチェンで最大出力を、5速MT仕様は280ps、4速AT仕様は260psまで向上。過激なハイパワー4WDワゴンのブームへ、さらに拍車をかけた。
続く3代目は、まずツーリングワゴンが登場し、半年遅れで「B4」の新ネーミングを得たセダンが登場。全グレードが4WDとなったほか、エンジンは最高出力280psの水平対向2.0Lツインターボ(GT-B)と、2.5L水平対向4気筒NA、2L水平対向4気筒NAに加え、2002年1月には最高出力220psの3.0L水平対向6気筒エンジンEZ30も登場。
2000年に登場した、ポルシェデザインによる専用デザインの前後バンパーを装着した「レガシィブリッツェン」も大人気となるなど、世界に誇れるハイパワー4WDワゴンとしてだけでなく、環境対策や高級感も訴求するモデルへと進化した。
■レガシィは今後もスバルを見守っていく存在になる
4代目以降は、海外需要(車内が狭いと不満を持つ米国人が多かった)に対応するため、そして高まる衝突安全性能基準クリアのため、レガシィは、フルモデルチェンジのたびにボディサイズを拡大していった。
これが影響してか、3代目以降は徐々に国内人気は落ち着いていったが、北米では、そのオフロード走破性の高さや頑丈さなどの魅力が評価され、ブランドの信頼性と販売台数が年々上昇。
いまでは全世界スバル車販売台数の7割が北米市場という状況となっている。アウトバックのほか、クロストレック、フォレスターなどが大ヒットし、外装をオフロード向けにカスタマイズした「ウィルダネス」シリーズも人気となっている。スバルによると、レガシィは北米で累計130万台以上が販売されたとのこと。レガシィは、北米でのスバル人気をつくりだし、スバルを支え続けたモデルなのだ。
スバルによると、レガシィの生産終了は、乗用車からSUVやクロスオーバーへと需要がシフトしたことや、電動化への移行を反映してとのことだという。日本の「レガシィ アウトバック」から「レガシィ」の名が今後消えていくのかはわからないが、「レガシィ」というモデルが北米でも消えてしまうのは、日本人にとっては非常に残念。ただレガシィは今後も「後世に受け継がれていくもの」として、スバルを見守っていくことだろう。
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