BMWから発表された新しいR1300GSアドベンチャーは、既にシステムとしての発表が行なわれていた自動変速システム「ASA」や車高を自動調整する「アダプティブ・ビークル・ハイト・コントロール」といった最新装備ををオプション設定している。

  文/後藤秀之 Webikeプラス  

忘れかけていた土の匂いを思い起こさせた“アドベンチャー”

 BMWモトラッドにとって、「GS」というネーミングは特別なものである。初めてこのGSのネーミングがBMWの歴史に登場したのは1980年に登場したR80G/Sで、それまで小中排気量が中心であったオフロードバイクの世界に800ccという大排気量エンジンを搭載してデビュー。1984年と1985年にガストン・ライエがパリ・ダカールラリーに優勝したことで、GSは一躍BMWモトラッドを代表するバイクとなった。このGSのラインナップに1989年に加わったのが、34Lという巨大な燃料タンクを持つR100GSパリ・ダカールである。

 GSの歴史の中に「アドベンチャー」という名前が初めて登場したのは2002年のR1150GS時代である。30Lの燃料タンクやショート化された6速ギア、オフロード走行を意識したサスペンションなどR100GSパリ・ダカールを彷彿させる装備を持つこのR1150GSアドベンチャーは、この時代のGSが忘れかけていた土の匂いを纏っていた。それ以降GSシリーズにはアドベンチャーが設定されるようになり、フルモデルチェンジしたR1300GSにもアドベンチャーが設定されることが発表された。

 

 

     

重厚感を感じさせる、新しいアドベンチャーデザイン

 新しいR1300GSアドベンチャーのルックスを見て最初に気がつくのは、全体のデザインはR1300GSから大きく変更されていることだ。アルミ製の30Lタンクは、フロントタイヤの一部を隠すほど前方に大きく張り出し、横幅もかなり広い。ヘッドライのデザインはR1300GSと同様のX型のLEDだが、カウルの先端部分は分割されているように見える。タンクの前方には1250まではいかにも「後から取り付けました」という存在感を放っていたフォグランプが、ビルトインされている。R1300GSがスポーティなデザインに仕上げられているのに対し、角ばったタンクのデザインを中心にしたR1300GSアドベンチャーは大型SUVのように重厚な雰囲気を醸し出している。

 

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 シート周りも大きくデザインが変更されており、R1300GSでは大きくカウルで覆われていたシート下部分はアルミ製のリアフレームが剥き出しになったデザインへと変更され、テール部分はリアタイヤのエンド部分付近まで延長されている。このシート周りのデザインは新しいアドベンチャー専用のアルミ製サイドケースを取り付けるのに最適化されている。このサイドケースは左が37L、右が36.5Lの容量を持ち、それぞれの最大10kgの荷物を積載することが可能だ。

 

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新開発のエンジン、そしていよいよ装備されるASAが生み出す走行性能

 R1300GSアドベンチャーに搭載されるエンジンは、最高出力145PS/7750rpm、最大トルク149N・mとR1300GSと基本的には同じである。このエンジンは3600〜7800rpmの常用回転域で常に130N・m以上のトルクを発生し、あらゆる走行シーンにおいてパワフルな走行を可能にする。

 

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 トランスミッションのギア比などはR1300GSと同じであるが、このR1300GSアドベンチャーにおいて初めて自動変速システムであるASAがオプション設定されることが発表された。このASAは「オート・シフト・アシスタント」の略であり、完全自動変速とクラッチレスによる手動変速を行なうことができるシステムである。これまでもシフトアシストプロによってクラッチレスの変速機構を実現していたBMWであるが、これはいわゆるクイックシフターの延長線上にある技術であった。ここ最近ホンダやヤマハも新しいシフトシステムを発表しているが、いよいよBMWの次世代型を投入してきたという訳だ。

 このASAはマニュアルミッションをベースに、ミッションとクラッチをそれぞれ電気式のアクチュエーターで駆動することで変速を行なうようになっている。クラッチの自動操作が介入したことで停車時にもクラッチ操作の必要はなく、完全な自動変速を実現しており、クラッチレバーは完全に取り払われている。モードは手動変則の「M」と完全自動変速の「D」というふたつを切り替えて使うことができるが、「M」モード時でもシフトペダルを操作するだけで変速することが可能になっている。各部のセンサーと密接にリンクしたこのシステムは、半クラッチを含めたクラッチの断続操作を最適に行なうことが可能になっている。

 気になるのは坂道発進だが、ヒルスタートコントロールが装備されることにより、タンデムや積載時などでも完璧に坂道発進することが可能になっている。このASAは2025年モデル以降のR1300GSにもオプション設定されるということなので、そちらも楽しみな情報である。

 

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 このASA以外にも4種類のライディングモードを標準装備し、アクティブ クルーズ コントロール (ACC)、前方衝突警告 (FCW)、車線変更警告、後方衝突警告 (RECW) などがファクトリーオプションとして用意されており、安全性や快適性において極めて先進的なバイクとなっている。

 

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進化したサスペンションが、あらゆるライディングをサポート

 R1300GSのフレームは完全新設計されたもので、スチール製のメインフレームとアルミ製のリアフレームを組み合わせている。サスペンションシステムも新設計されており、R1300GSアドベンチャーはこの新しいサスペンションシステムをベースにしたものが搭載されている。

 DSA(Dynamic Suspension Adjustment)と呼ばれるサスペンションシステムは、ライディング モード、ライディング コンディション、および操作に応じてフロントとリアのダンピングの動的調整とスプリングレートの対応する調整を自動調整することであらゆるコンディションにおいて最適な走行性能を生み出すことが可能だ。R1300GSアドベンチャーにはこれに加えて、アダプティブ・ビークル・ハイト・コントロールがファクトリーオプションとして用意されている。

 その他、ブレーキはフルインテグラルABSプロとダイナミック・ブレーキ・コントロール (DBC) を組み合わせるこで強力かつコントロール性を向上、ホイールは標準装備となる新開発のクロススポークホイール以外に、エンデューロ鍛造ホイールがファクトリーオプションとして設定される。

 

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 BMWの最新技術を最大限に投入されたこのR1300GSアドベンチャーだが、先に発表されたR1300GSの標準モデルの価格が286万6000円ということを考えるとオプションによっては400万円を軽く超える価格設定となるだろう。また、現在BNWジャパンのホームページには「R1300GSアドベンチャー」、「R1300GSアドベンチャートロフィー」、「R1300GSアドベンチャーOption 719カラコルム」という3グレードが掲載されているので、このラインナップでのデリバリースタートとなるようだ。

 

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R1300GSアドベンチャー主要諸元(2025)

・全長×全幅×全高:2280×1012×1588mm

・ホイールベース:1534mm

・シート高:840-870mm

・車両重量:269kg

・エジンン:空水冷4ストロークDOHC4バルブ水平対向2気筒1300cc

・最高出力:107kW(145PS)/7550rpm

・最大トルク:149N・m/6500rpm

・燃料タンク容量:30L

・変速機:6段リターン

・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=120/70-19、R=170/60-17

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/399679/

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