若者のクルマ離れといわれてから久しいが、50代以上の世のおじさん世代が話していたクルマ用語のほとんどはいま、死語になっているのではないだろうか。20代のクルマ好きに「ソレタコデュアル、ダブルクラッチって知ってる?」と聞いてみたところ、「な、なんですか、それ?」こと。ということで、50代以上のクルマ好きおじさんが知ってる昭和のクルマ用語を、ぜひナウなヤングに語り継ぐべく紹介していきましょう。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部、トビラ写真(hurricanehank@Adobe Stock)

■昭和のクルマ好きが使っていたクルマ用語はもはや死語

 昭和の時代を振り返って、当時クルマ好きだった友人たちと遊んでいた時のことを思い出してみる。当時、その友人たちとの会話にはあんな言葉、こんなセリフがあった……。

 「俺のダチ公もカーキチでよう、そいつがちゅーぶるだけどスカGを買ったんだよ。ノークラじゃないよ、5スピードのヤツ。それをシャコタンにしてんだけど、けっこうイカしてるんだよな。まあ、俺のマシンほどじゃねえけどさ。

 それで、そのダチと峠に行った時にケツが流れてよう、ズバッと逆ハンかまして、カープを抜けたんだあ。その後、途中でダッセ〜、ブルがアオってきたんだけど、そいつは軽くブッチギってやったぜえ〜」。

 まさに、死語の連発だ。今使ったら正直笑える。ナウなヤングには爆笑もんだろう。でも、おじさんたちにはとっても懐かしいクルマ好きはみ〜んな使っていたのに、なぜ使われなくなっちゃったの? というわけで、昭和時代に使われたクルマ用語の死語を集めてみました。わかった数ほど、おじさん度が増していきます。レッツらゴー!

■昭和のクルマ死語初級篇

キャブレターとエアファンネル(ラッパのような形状)。このエアファンネルから空気を取り入れる(hanspeterdoedel@Adobe Stock)

 クルマ好きのおじさんに昔聞いたことある、というレベルのクルマ用語の死語初級編。どれくらいわかるだろうか? 10個中8個知っていたらおじさん確定です。

・ノークラ:オートマチックトランスミッション、つまりATのこと。クラッチペダルがないため、ノークラッチの略称。

・エンコ:エンジン故障の略。なんらかの原因でクルマが止まってしまうこと。

・キャブ:ガソリンエンジンは霧状にしたガソリンと空気を混ぜ合わせた混合気に着火して爆発させなければならない。これを電気やコンピュータを使用せず、機械的に行う装置がキャブレター(気化器)。時代とともにインジェクションが主流となり消滅。

1970年代までのクルマにはチョークレバー(右上)があり、暖気運転の時などにはこのチョークレバーを引っ張りアイドリングの回転数を上げていた


・チョーク:キャブレターの弱点は、気温や気圧といった環境の変化に弱く、冬場などはエンジンがかかりにくくなることだ。そんな時に使用していたのがチョーク(チョークレバー)。

 チョークを引くとキャブレターの中の弁が閉まり、キャブレターの取り込む空気の量が少なくなる。すると燃料が濃くなり、着火しやすくなることで冬場でもエンジン始動がしやすくなるという仕組み。

・シャコタン:サスペンションやダンパーを改造して極端に車高を低くすることで車高短が語源。

・カニ走り:ドリフトのこと。クルマを力二のように横向きにズリズリ~ッとスライドさせることから、こう呼ばれた。

・逆ハン:カウンターステアのこと。進行方向とは逆にハンドルを切るため、逆ハンドルを略してこの名がついた。

・セコハン:セコンドハンドの略で中古商品のこと。オートバックスでは現在セコハン市場という中古自動車部品専門店があるので知っている人はいるかも。余談だが2ndストリートの略称はセカスト。

・陸(おか)サーファー:1970年代のサーファーブーム。そんななかで出現したのが実際にはサーフィンをしないが、モテるためのファッションとしてサーファーっぽい見た目をするという「陸サーファー」。

 特に1980年に発売したマツダの5代目ファミリアはこうした陸サーファーたちに絶大な人気を誇り、爆発的にヒットした。特に人気だったのは真っ赤なファミリアで、サーフィンをしないのにルーフにサーフボードを乗せ、街中でナンパをする陸サーファーたちが大量に出没していた。

陸サーファーの代名詞はマツダ5代目ファミリア。特に人気だったのは真っ赤なモデルでルーフにはサーフボード、ダッシュボードにミニチュアのヤシの木を置いたりしてサーファー感を演出していた

■昭和のクルマ死語中級編

1970年代後半から1980年代の初頭にかけて人気だったスーパーシルエット

 これわかる人は、相当のクルマ好きです。当時は走り屋だった人はわかるでしょう。

・ちゅーぶる:これも中古車や中古品のこと。わざと使うことはあるが一般的には使うことはない。

・クラゲ:へたくそのこと。昔のいか天(いかす走り屋天国)で使われていた言葉でクラゲ→イカ→タコ→銀タコとうまい順に呼び方が変わっていった。

・タコ踊り:リアを左右に振っておつりがひどい状態。タコるともいった。

・猫:当然動物の猫ではない。道路のセンターラインに設置されているキャッツアイのこと。キャッツアイを踏むことを猫を踏むともいった。

・ノンスリ:「ノンスリップデフ」の略で、LSDのこと。気がつくといつのまにか正式名称のLSDが使われた。

・ソレタコデュアル:ソレックス、タコ足(等長エキマニ)、デュアルマフラーの3つをあわせた造語。当時の定番チューニング法。

・竹槍:竹槍は上向きに長く伸び、竹槍のように切り口が斜めになっているマフラーのことで、いわゆる「族車」カスタム。見た目のインパクトと爆音を求めた結果だが当然ながら保安基準に適合するワケもなく、公道を走行すれば違反となる。

・出っ歯:族車のカスタムの一つで、フロントバンパー下に装備される前方に大きく突き出したチンスポイラーというエアロパーツの俗称。

 1970年代後半から1980年代の初頭にかけて規定されていたシルエットフォーミュラ、スーパーシルエットなどと呼ばれるレーシングカーのデザインの影響を受けているとも言われている。竹槍マフラー同様に公道での走行は違法となる。

■昭和のクルマ死語上級編

 さて、クルマ死後上級編です。今ではほとんどというか、まったく聞いたことがありません。

・マル専手形:当時の信販会社が発行していた借入手形のこと。要するにローンを組むときに渡される借用書。この後、月賦というクルマのローンが普及した

・カチアゲ:シャコタンのクルマで後ろだけやたらと車高を上げてある改造をしたクルマのこと。

・チューリップ:氷上ラリーなどで使われるスパイクタイヤの種類。タイヤの表面にチューリップのようなカギ爪が付いていた。

カセットテープ以前のカーステといえば8トラだった(Edward Stephens@Adobe Stock)

・8トラ(8トラック):カセットテープの前身となる音声を再生する装置。弁当箱くらいの大きさがあって、クルマ用デッキもあった。

・1ヒメ2トラ、3ダンプ:ヒメとはオバさんを含む女性ドライバー、 トラとは洒飲んで暴れるドライバー、最後はダンプのドライバー。危ない運転をするドライバーの順位で危ないから近づくなという意味で使われていた。

・卍(マンジ):直線で後輪を左右に振りながら走ること。ドリフトの一種、直ドリともいわれる。

・神岡ターン:高速でコーナーに進入し、クルマをスライドさせ、スピン寸前でギアをバックギアに入れて挙動を安定させ、速度を維持したままコーナーを抜けるというテクニック。ラリードライバー神岡政夫が開発。

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 いかがだったでしょうか? 世代、ジャンルによっても違うと思います。おじさんはさぞや懐かしかったことかと思います。ほかにありましたらぜひコメント欄にお願いします。そして若いみなさん、ぜひ昔のクルマ用語を引き継いでいって欲しいと思います。

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