うだるような暑さが続く中、冬タイヤの話をするのも早計だが、雪や凍結のない季節、スタッドレスタイヤの開発に関わる人たちはどのようにして過ごしているのかご紹介したい。
文:デグナー12(Team Gori)/写真:横浜ゴム、写真AC
■雪や凍結がない時期でも密かに開発テストは行われている
積雪路面や凍結路面でこそ真価を発揮するスタッドレスタイヤ。では冬季以外の季節では開発はストップするのか。答えは否。スタッドレスタイヤはオフシーズンでも設計や素材の開発は休むことなく続けられ、年々進化しつづけている。そのためのテスト、評価は様々な工夫や設備を駆使し、冬の条件下を想定したテストを行っている。
各タイヤメーカーがオフシーズンに行うテストとしてよく使われる場所が屋内スケートリンク。夏場でも氷上路面が確保できる上に温度も含めて氷盤の管理が徹底されており、一定の条件が保たれている。まさにテストを行う上で最適な環境といえる。ここでさまざまななパターン、素材のタイヤを持ち込み、実際にスケートリンク上でクルマの実走テストを行うのだ。
また、開発テストだけでなく、スタッドレス商戦前になると各地のスケートリンクで販売店向けの試乗会が行われている。雪が降っていない時期でも店頭で新商品に詳しい販売員に出会うことがあるが、それにはこのような試乗会で商品知識に加え、一足先に新商品を体験していることが理由。
■季節が真逆の南半球でテストを行うことも
凍結路面と積雪路面に必要な性能は背反しており、どちらかに特化しないようにバランスさせることもスタッドレスタイヤの開発の難しいところ。凍結路面のテストはスケートリンクで行えたとしても、積雪路面のテストまでは難しい。そこで、ニュージーランドなど、季節が逆の南半球の降雪地区でもテストを行うメーカーもある。
さすがに海外でのテストは期間が限られる上にコストがかかりすぎるため、主要なテストは国内で冬季に行われる。国内4社のタイヤメーカー全てが北海道にスタッドレスタイヤ開発用のテストコースを持っているように、その重要性は高い。
とはいえ、北海道のテストコースが最大限に機能を発揮するのも10月頃~3月終わり頃まで。その時期はテストや販売店向け試乗会など、プログラムは目白押しだが、それ以外の時期は草刈りなどのコースメンテナンスや翌シーズンに向けたコースの地盤づくりなどが待っている。さすがに冬季ほど多忙ではないが、オフシーズンでもテストコースは稼働中だ。
また、開発以外の部門もオフシーズンは暇ではない。テレビCMや店頭の販促ツールの製作、大手量販店への商材提案や契約は夏前には終え、スタッドレスタイヤの生産も春先から備蓄生産を進めて冬商戦に臨んでいる。温暖化の影響で降雪量は減少傾向でも、それだけの準備と労力をかけるほどタイヤメーカーにとってスタッドレスタイヤは重要なのである。
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