現在も幅広~い世代から支持を受け続けているレジェンドカー、日産 シルビア S13。ドリフトもそうだが、発売当初はホンダ プレリュードの対抗馬、つまりデートカー的ポジションに位置していたとか。そんなS13は走りの面でどんな印象を与えていたのか。実際に当時の記事を20歳アルバイターがリバイバルし、当時の評価を確認してみよう!
この記事はベストカー1988年6月号(著者は徳大寺有恒氏)を転載し、再編集したものです。
■FR神話の復活!? 憧れが帰って来た!!
初代シルビアがデビューしてから28年、ついにシルビアはその頂点を極めた。それほど今回のニューシルビアは、鮮烈なスタイルと性能をもったスペシャルティモデルなのだ。
今回で5代目となるシルビアは、その完成度、熟成度ともに従来モデルをはるかに凌ぐ。それほど入念に仕上げられている。そのポイントは大きくわけて2つ。
ひとつはエレガントなスタイル。そしてもうひとつはFRならではのスポーティな走りだ。まず、そのデザインだが、これまでになく時間をかけて練られたといわれるとおり、自然なやわらかい曲線で構成されている。
人間の感覚に優しく、それでいてクルマ本来の機能、スヒード感を訴えるこのエレガントストリームライン。なかなか秀逸の出来栄えこのスタイルにも増して魅力なのが、FRという駆動方式。
すでに2L以下ではほとんどがFFに″進化”している中で、ニューシルビアはFRを採ったつまり、FRの走る楽しさを提案したわけた。そして、その要はリアサスに集約される。
新開発のマルチサスぺンションにより、その提案は単なるFR懐古ではなくなった。
新次元の洗練されたFR感覚が楽しめる高いレベルで乗り心地はもちろん、ハンドリング、走安性をバランスさせたチューニングは、スポーツマインドを熱くさせることに間違いない。
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■乗りに乗っている日産が生んだ名車!!
シルビアの最大の特徴は後輪駆動を採ったことにある。いわゆるFRという駆動システムである。このFRは1900年代のはじめにできて以来、圧倒的な多数派を誇っていた。
このFRが多数派でなくなったのは1970年代末のことで、このFRに代わって多数を占めたのはいうまでもなくFFである。FFは合理性を最大の武器としてFRを圧倒した。
我が日本の自動車も、もはや2L以下はFFと相場が決まってしまった。そのFF主流の中で、1.8LクラスのFRスポーティカーを作るというのはたいしたものだ。
これまでも小型FR車はあったが、たとえば旧カローラ/スプリンターのFRはただ古いシャシをそのまま使うただけのものなのだ。現在残っているピアッツアも旧ジェミニのシャシ流用なのだ。
ニューシルビアは違う。この後輸駆動スポーティカー(私はスポーツカーといってもよいと思っている)の為に新しくリアサスペンションを新設計したのである。後輪駆動車のポイントはリアサスペンションである。
これにコストをかけ、いいものができればFFより上等でファンなハンドリングと乗り心地が得られるのだ。世にいわれる高級車、メルツェデス、BMW、ジャグアーはすべて後輪駆動であるし、スポーツカーの一方の雄、ポルシェもすべて後輪駆動である。
ニューシルビアはこの後輪駆動である。そのことこそ最大の個性であり、魅力となっている。私はFFも嫌いじゃない。
小型2ボックスカーのデザインとしてはFF以外考えられぬと思うが、これがスポーティカーとなるとまったく逆で後輪駆動以外は好きじゃない。
今や技術の多様化でスポーティカーとひと口にいってもFF、FR、4WDと駆動方式がある。しかし、私はあくまでFRがベストだと思っている。
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■フェラーリルックを見事に消化!? エクステリア編
ニューシルビアはノッチバッククーペ、ワンボディである。やがて対米輸出用のファストバックモデルも加えられるかもしれないが、とにかくこのニューシルビアのスタイルはスポーテイでかっこいいと思う。
ニューシルビアのスタイルのポイントは”フェラーリルック″であることだ。ディノ246、BB、308/328と続いた一連のピニン・ファリーナフェラーリの特徴をうまくとらえている。
どこでそれとわかるかというと真横からが一番だ。フロントフェンダーの稜線はなだらかな丘のようだ。そしてその終わりにAピラーの下端と接する。
そこからはほぼ一直線にゆるやかにウエストラインが上がっている。このテーマはピニン・ファリーナがフェラーリで長く使っているものなのだ。
シルビアのスタイリストのうまさは、フェラーリルックをマネで終わらず、見事に消化していることである。それだからサイズも違う、条件も違うシルビアに違和感なく使えたのだと思う。
またウインドウ・グラフィックにも感動している。特にクォーターウインドウのスタイルがいい。だから斜め後ろからのルックスがとてもかつこいい。ニューシルビアのスタイルはあくまでスポーティカー。あるいはスポーツカーのものだ。
これがパーソナルカー流行りの現在の日本でどう評価されるか興味深い。しかし、このクルマはきっと街中へでると目立つと思う。低くて幅広く、それでいて、従来の日本流スポーティカーのスタイルであるロングノーズではない。
きっとこれを街で見たら新鮮だろうと思う。インテリアは外観のアグレッシブなスポーツ感覚とはまったく逆のソフィスティケートされたフランスタッチのものである。
そこにはシャープな角はひとつもなく、すべてRがついたデザインなのである。私はデザインとしてこのインテリアデザインを高く評価するがシルビアの場合、外観とは必ずしも合っていない。
やや刺激的なファクターの強いルックスと、まるで刺激性を感じないインテリアデザイン、どうもこれはしっくりこないのである。もし、このインテリアデザインをブルーバードに与えたら、あるいは新しくなると予感される。
プレーリーに与えたのならもう文句はない。メーカーの日産はこのシルビアについては、特に国内市場において、ソフトムードで売りたいと思っているらしい。
ホンダのプレリュードのビッグヒットを横目で見ての開発だからわからないでもないが、私はこのシルビアというクルマ、もっと本格的なものと受けとっている。
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■どちらがお好き? ターボ付きorNAエンジン!
エンジンは2種。すべてCA18の1.8L、4シリンダーだ。ハイパワーはターボ対の170馬力、23.0kgmノンターボは135馬力、16.2kgmである。
ブルーバードはFFだからこの170馬カエンジンを与えるために4WDを採用せざるを得なかった。しかし、シルビアは後輪駆動なので苦もなくこのハイパワーを消化できる。
このヘんが後輪駆動のよいところだ。もし、このシルビアをベースにして3L、250馬力を与えようと考えたとしても可能性としては残されている。
さて、170馬カモデルのほうだが、ブルーバードより100kg以上軽いシルビアはそれこそ胸のすくような加速を見せてくれる。メーカー発表の0~400mは15.3秒、そのへんだろうと思う。
そして、その加速感である。後ろからグッと押されるフィーリング、この加速感こそがスポーツカーの楽しみだ。こいつを味わうとFFのハイパワー車はちょっと嫌になる。
エンジンは少々ノイジーだがレスポンスはいい。それとターボをまったく感じさせないのはすごい。どこからでもスロットルに敏感にレスポンスする。
このターボコントロールという点では日産の技術は頭抜けている。だから、逆にいうとナチュラルアスピレーションのほうはただのトルクの小さいエンジンに感じてしまう。
このナチュラルアスピレーションのほうもけっこう速く、おもしろいのだが、ターボと乗り比べるとどうということのないものになる。願わくばナチュラルアスピレーションのほうはもう500回転上のほうまで回るといい。
このCA18はややトップエンドが苦しいのが難点だ。ターボではそれはハンデとはならないが、ナチュラルアスピレーションではあと500回転が勝負どことなる。2Lを望む声もないではない。
後輪駆動を利して200馬力ぐらいまでは軽く消化できそうだから、しかし、私は現在の1.8Lで充分速く、軽快だと思っている。それに、このCAエンジンはとても軽いのだ。
この軽さがこの後輪駆動のスポーティカーにメリットとなっている。シルビアに乗ると後輪駆動車のもうひとつのメリットを思い出させてくれる。それはシフトフィールのよさである。
適度なストロークと節度感、これは楽しみといえるものだ。むろん、このスポーティカーはマニュアルボックスで乗ることを勧める。
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■やっぱり走行性能が肝心っしょ!!
問題はハンドリングである。シルビアは大パワーを吸収し、しかもよい乗り心地を得るべく新たにマルチリンクサスペンションを開発した。上級車にはハイキャスも与えた。
まず、後輪駆動車のハンドリングのよさはエンジンの回転の変動になんらの影響もないことである。このことこそ多くの高級車が後輪駆動を採る理由なのだ。
ストレートの安定はハイキャスなしでも充分である。リアがしっかりしているので180km/h走行もリラックスしていられる。むろんレーンチェンジも楽なものだ。
ハイキャス付きのほうはややアンダースティアが強いが、後輪駆動にはじめて乗るというユーザーにはいいかもしれない。ハイキャス付きのほうは雨の濡れた路面などではたしかに安定していると思う。
しかし、あくまでこのほうはゆっくりとコーナーに進入し、曲がってからスロットルを踏んでやらなければいけない。ハイキャスなしのほうは、はるかにスポーティである。
前後のバランスはこのほうがいい。メーカーもスポーテイなのはハイキャスなしといっている。ドリフトをこよなく愛しているユーザーはこのハイキャスなしのほうを選ぶべきだと思う。
それにターボエンジンのレスポンスのよさは、この後輪駆動車のハンドリングを楽しくしているのだ。乗り心地はターボ系はけっこう硬い。ハーシュネスも強いほうである。
しかし、このこともこのクルマに関してはハンデとはならない。もともとスポーティなクルマなのだから。一見やわに見えるシートのサポートも充分で、私は日産のテストコースでしばし、お尻に神経を集中した。
おそらくはスカイラインや口―レルにも使われる可能性の高いマルチリンクは今のところそのポテンシャルの60%程度の開発発段階だろう。ニューシルビアは魅力的なクルマである。
後輪駆動であることだけでも心踊るというのに、このクルマは新しいリアサスペンションまでも用意したのだ。後輪駆動車も2L以上にはまだまだ数多く存在する。
しかし我々が望むのは小型、軽量のスポーツにこそなのだ。ニューシルビアに乗ってみると、この使い古されたレイアウトにもまだまだポテンシャルがあることを理解して大いに意を強くしたものである。
「後輪駆動車をマニュアルで乗る」こいつは15年前までは当たり前のことだったが、今はこいつが新しく、かっこいいことだと思わないか。
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