クルマの運転に慣れ、高速道路走行にスムーズに順応した人にはわからない高速道路走行の難しさ。特に、初心者を悩ませるのが“合流”のタイミングや速度。そこで今一度、高速道路への合流について解説する。

文/山口卓也、写真/写真AC

■高速道路は「安全な道路」って知っていますか?

カーブが少なく、ハンドル操作が少ないだけでも安全性は倍増する高速道路。ただし、走行速度は速いため、事故を起こすと大事故につながることも多い。そのため、高速道路を走ること自体に恐怖感を覚える人も

 高速道路での走行となると、一般道のほぼ倍の速度で走るため「非常に危険」と思われるかもしれないが、一度流れに乗ってしまえば一般道よりもクルマの操作がはるかに少ないことに気づく。

 実際、高速道路での死傷事故発生率は一般道の10分の1ともいわれ、イメージよりも安全な道といえるが、一般道とは速度が異なり、安全&安心に走行するために押さえておきたいこともある。

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■初心者が一番ドキドキするのが本線車道への合流

 高速道路の走行が苦手なドライバーは、合流に苦手意識を持っている人も多い。そこでまずは合流について、道路交通法ではどのように定められているのかを知っておこう。

 道路交通法第75条には、

「自動車(緊急自動車を除く)は、本線車道に入ろうとする場合(本線車道から他の本線車道に入ろうとする場合にあっては、道路標識等により指定された本線車道に入ろうとする場合にかぎる)において、当該本線車道を通行する自動車がある時は、当該自動車の進行妨害をしてはならない」

 と書いてある。簡単にいえば、「合流するクルマは、本線車道を走るクルマの進行を邪魔してはいけない」ってこと。

 合流時に、本線車道を走る本線車と加速車線を走る合流車が衝突事故を起こした場合、基本過失割合は判例から本線車3割、合流車7割といわれ、本線車に有利な過失割合に思える。

 しかし、合流車は本線車道横を走る加速車線を走っているので、本線車は合流車が本線車道に入ってくることは普通に予測できる。なので、減速するなどして衝突は回避できそうなもの。それをせずに衝突したとなれば、本線車は前方注視義務違反となることもある。

 また、合流車を入れまいとして本線車が急加速または速度違反するなどして事故に至ると、本線車の過失割合は1~2割増え、その場合は本線車4~5割、合流車6~5割となる場合がある。

 いずれにせよ、まずは合流するクルマがしっかりと安全確認することが重要だろう。

■加速車線ではしっかり加速!

 標識や標示が特にない場合の高速道路の最高速度は100km/h、最低速度は50 km/h。よって、合流時に加速車線で最低50 km/h出ていれば最低速度違反にはならない。

 しかし、本線車道を走るクルマが80km/hで走っているのに、「高速道路の最低速度は50km/hなんだからこれで充分だろう」と自分が50km/hで合流すると……速度差がありすぎて非常に危険なことはわかるはず。

 ちなみに、標識や標示が特にない場合の加速車線の最高速度は、本線車道と同じ100 km/h(2020年4月1日施行)。数年前に比べ、「大手を振ってしっかり加速できるようになった!」のだ。

 合流時に押さえておくべきことは次の4つ。

・前車との車間を空ける
・しっかり加速する
・ブレーキをかけない
・本線車道を必ず目視で確認

 これらのなかで、運転に慣れていない人がやりがちなのが“ブレーキをかける行為”だろう。

 合流車の後ろにクルマが続いている場合、連鎖反応によって最後尾のクルマは加速車線上で減速→ほぼゼロスタートを強いられてしまうし、玉突き事故の危険性もある。

「迷ったらブレーキをかける!」ことは重要だが、合流時には本線車道をしっかり確認し、ブレーキをかけることなくスムーズに合流できるようにしておきたいもの。

■覚えておきたい危険な合流を強いられる場所

首都高は加速車線が極端に短く、合流が極めて難しい箇所が多数。入れるほうも、入るほうも相応の慣れが必要だ……

 加速車線ではしっかり加速! は合流時に重要なこと。だが、世の中には加速車線がほとんどない合流場所もある。東京・神奈川エリアで有名な場所をふたつ紹介しておこう。

■昔は減速区間(出口)もほぼ直角だった…… 西湘バイパス・大磯東入口

 筆者の家のそばに、「西湘バイパス」と呼ばれる自動車専用道路がある。この辺りに住む人には有名な話だが、ここには世にも恐ろしい「加速区間ほぼゼロ、本線車道に即イン!」な合流がある。

 西湘バイパスの制限速度は区間によって50km/h~70 km/h。さらに海沿いで直線的な道路のため、本線車道を100km/h近くで走るクルマもけっこう多い。よって、覆面パトカーや白バイによる速度取り締まりの多い場所としても有名だ。

 この西湘バイパスには「大磯東の入口」があり、平塚方面への合流が問題のポイント。「大磯東IC」とは違う場所なので要注意!

 大磯東の入口には本線車道の数m手前に一時停止線があり、ここで一時停止した先に本線車道が左右に伸びている。先にも書いたが、本線車道には70~100km/hほどでビュンビュン飛ばしているクルマも走っている。それなのに「即イン!」なのである。

 自家用として使っている軽トラで遭遇してしまった時は、運転歴38年の筆者も戸惑った。「ホントにこの入り方で正しいのか? 合流できるのか?」と。

 一時停止後にクルマを少し左に向けてソロソロ進み、2速に入れてアクセルペダルをブンブンあおり……本線車道が空いた瞬間に即クラッチミート! 斜めに本線車道に入りつつアクセルペダルを目いっぱい踏んで加速。なのに、後方から来たクルマから「邪魔だ!」とばかりにパッシングを浴びた……。

 また、今は少し緩いカーブにはなったが、10年ほど前までは出口の減速区間もほぼなく、直角に一般道へ出るような構造だったので、これでも少しましにはなったといえるのだが(苦笑)。

■首都高速にも危険な合流あり! 首都高速5号池袋線・南池袋PA

 実は都内を走る首都高速にもそんなポイントがある。首都高速5号池袋線の上りにある「南池袋PAからの合流」がそれだ。

 ここも大磯東入口と似たり寄ったりで、加速車線は数m、その手前に一時停止線があるという地獄のような合流である。大磯東入口のように直交ではなく横に合流するからまだいい。だが、首都高速のためクルマの流れは非常に多い……。

 初めてここを訪れた時は「またアレかっ!?」とドキっとしたが、その時は加速に不満のないクルマだったし、一度ヤバい場所を経験していたのでなんなくクリアー!

「高速道路の合流に自信がない……」という人は、この「大磯東入口」「南池袋PA」の名前だけはアタマに入れておいてほしい。

 今回は初心者が最も苦手とする「高速道路の合流」について書いた。合流は、合流車が安全確認をしっかり行うことはもちろんだが、本線車も減速するなり事前に車線変更するなりした配慮や譲り合いが事故防止のためには重要なのではないかと思う。

 自分が初めて譲られた初心者の時は感謝の気持ちでいっぱいだった。自らも心を広くもった“譲れる側”になりたいものですね。

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