クルマに関する用語には英語が多い。しかし、日本で使われるクルマ英語には、本来の意味とは違っていたり、微妙にズレていたりするものも多い。今回は、そうした間違い英語や和製英語を紹介していこう。

文/長谷川 敦、写真/スバル、トヨタ、フォード、マツダ、写真AC、Newspress UK、Adobe Stock、アイキャッチ画像/Adam@Adobe Stock

■違う言葉を持ってきてしまった?

周囲のクルマに自車の進む方向を示すウインカー。ウインカーは英語由来の言葉だが、クルマの方向指示器の意味で使っているのは日本だけという不思議な状況に(Sivadol@Adobe Stock)

●×「ウインカー」→○「ブリンカー」

 曲がりたい方向を示すために点滅させるウインカーだが、これは和製英語。

 アメリカでは点滅の意味を持つ「ブリンカー(blinker)」を使い、イギリス英語は、日本では「指示する」「指針」にあたる「インジケーター(indicator)」を使用することが多い。

 日本でのウインカーは、片目をさっとつぶる動作のウインクが由来という推察もあるが、ドイツ語ではクルマの方向指示器を「ヴィンカー」と発音するので、こちらが起源の可能性もある。

●×「ハンドル」→○「ステアリングホイール」

 我々はクルマを左右に曲げたい時に使う円形の操舵機構をハンドルと呼んでいるが、実は英語圏では「ステアリングホイール(steering wheel)」と呼ぶのが一般的。

 英語の「ハンドル(handle)」には「操作する」や「取っ手」などの意味があり、これが間違って自動車の操舵輪に使われてしまった。

 自転車のハンドルは英語で「ハンドルバー(handlebars)」なので、ここからの流れなのかもしれない。

●×「フロントガラス」→○「ウィンドシールド」「ウィンドスクリーン」

 運転席の前にあるガラスを指してフロントガラスと呼ぶが、これも一種の和製英語であり、「前にあるガラス」だからそういう呼称になっている。

 しかし、米語では「ウィンドシールド(windshield)」、イギリス英語では「ウィンドスクリーン(windscreen)」というのが一般的で、窓(window)ではなく風(wind)を防ぐという意味なのがポイントだ。

 「フロントウィンドウ(front window)」と呼ぶケースもあるため、日本でのフロントガラスはこれが由来という可能性もある。

●×「バックミラー」→○「リアビューミラー」

 車内から後方を確認する時に使うバックミラーも「back(後ろ)」と「mirror(鏡)」と合わせた正しい英語に思える。

 だが、これもまた間違いであり、英語では「後方を見る鏡」という意味の「リアビューミラー(rear-view mirror)」が正解。

●×「サイドブレーキ」→○「パーキングブレーキ」

 駐車する時に使うサイドブレーキは、運転手の横(サイド)に位置することからこの呼称になった。

 これもまた和製英語で、本来は「パーキングブレーキ(parking brake)」、あるいは「ハンドブレーキ(hand brake)」と呼び、緊急ブレーキを意味する「エマージェンシーブレーキ(emergency brake)」も使われている。

 いずれにせよ、残念ながら英語圏の国でハンドブレーキは通用しない。

 ちなみに「ブレーキ」の発音も、カタカナで書くなら「ブレイク」のほうが近い。

■なぜか日本で広まった呼び方

ガソリンスタンドも英語由来の言葉だが、これもまた日本独自の呼び方である。海外で道を尋ねる時は「ガスステーション」や「ぺトロールステーション」を使う

●×「ガソリンスタンド」→○「ガスステーション」

 給油を行う施設がガソリンスタンドだが、これもまた日本固有の呼び方なのをご存じだろうか?

 米語では「ガスステーション(gas station)」で、イギリス英語では「ぺトロールステーション(petrol station)」の名称が一般的。

 「ガス」はガソリンの短縮系で、「ぺトロール」は「燃料」のこと。

 意味はほぼ同じで、ステーションは英米で共通している。

●×「オープンカー」→○「コンバーチブル」

 屋根がない、または屋根を折り畳めるクルマを日本ではオープンカーと呼ぶが、英語では「変更できる」という意味の「コンバーチブル(convertible)」という。

 これは屋根の開閉でクルマの形態を変えられるということから。

 オープンカーという呼称の起源はアメリカだという説もあるが、日本でなぜこの呼び方が定着したのかは不明。

■英語、それとも米語?

●日「ボンネット」→米「フード」

 日本ではクルマの前部にある開閉可能な覆いのことをボンネットというが、アメリカでは「フード(hood)」のほうが一般的。

 イギリスでは日本と同じ「ボンネット(bonnet)」を使っている。

●日「トランク」→英「ブート」

 多くのクルマでは後部に設けられている荷室がトランクで、アメリカではそのまま通じる。

 しかし、イギリスではこのトランクを「ブート(boot)」と呼ぶ。

 日本ではクルマの前後で米語とイギリス英語を使い分けているのが興味深い。

■日本で発明(?)してしまったクルマ用語

●×「リバンプ」→○「リバウンド」

 最後はクルマに関する日常会話ではあまり出てこないものの、一部で根強く使われている和製英語を紹介する。

 ほとんどのクルマに装備されているサスペンションが、沈む(縮む)方向に動くことを「バンプ(bump)」といい、伸びる方向は「リバウンド(rebound)」。

 これらの動きを規制するパーツには「バンプストップ」や「リバウンドストップ」があるが、クルマ業界では稀にリバウンドのことを「リバンプ」という人がいる。

 これは完全な間違いで、リバンプという英語は存在していない。

 おそらくバンプの反対という意味でリバンプが使われているのだと思われるが、そもそもリバウンドという適切な言葉があるのでわざわざリバンプを使う必要はないだろう。

 言葉というのはコミュニケーションの道具でもあり、それを使う人たちの間で誤解なく通じればいいという考え方もある。

 我々も日常会話のなかで「ハンドル」と言った人に「それは間違いでステアリングホイールが正しいよ」などと返したりはしないし、いちいち訂正していてはキリがない。

 とはいえ、自分が使っている言葉が本来の用法とは違うことを知っておいても損はなく、例えば海外で運転する時などにこうした知識は役に立つはず。

 今回紹介した以外にも、日本だけでしか通じないクルマ関係の和製英語はある。

 今後また機会があったら、このような和製英語をさらに見ていきたい。

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