西日本鉄道(西鉄)では、国土交通省の『完全キャッシュレスバス実証運行』の参加事業者としての採択を受け、観光客やインバウンドの利用が多い一部路線で実証運行を行う。完全キャッシュレスバスの定義は運賃の支払いを現金ではなくキャッシュレス決済に限定したバスだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)
■実証の概要
本実証運行では、完全キャッシュレスバスの運行実現に向けた課題把握や知見獲得を目指す。対象路線は、福岡市都心部を循環するBRT路線、福岡空港国際線ターミナルとJR博多駅を結ぶ路線の2路線で、運行期間は2024年12月~2025年2月末までを予定している。
本実証運行を通じて、バス降車時の両替をはじめとした現金取扱に伴うバス停車時間の削減による定時性確保のほか、キャッシュレス決済比率の向上などに期待している。西鉄では、完全キャッシュレスバスの需要状況を見極めるとともに、持続可能な公共交通の実現を目指したいとしている。
■完全キャッシュレスバスの実証運行
この実証の目的は、完全キャッシュレスバスの運行実現に向けた課題把握や知見獲得としている。運行期間は、2024年12月3日~2025年2月28日の予定。対象路線は2路線だ、1路線目は博多駅 ~ 福岡空港国際線で区間は博多バスターミナル・福岡空港国際線ターミナルの相互間。運転本数は全日74便。
2路線目はFukuoka BRT(連節バス)で、区間は天神・博多駅・ウォーターフロント地区。運行本数は全日83便。これら2路線で使用できる決済手段は、交通系ICカード・クレジットカードタッチ決済・各種乗車券(SUNQパスなど)になる予定で、車内で現金での支払いはできない。
■現金客は減ってはいるが…
完全キャッシュレスバスは時代の要請ともいうべきシステムで、現金を持ち歩かない若者が増えてきている現状では当然の流れなのかもしれない。
しかし現金客が少なくなったとはいえ、システムトラブルや通信インフラの停止等のイレギュラーはつきものだ。こうしためったに起こることではないのかもしれないが、可能性はゼロではないトラブルにどう対応するのかというところにも注目が集まるだろう。
また今まで現金を中心に使用してきた世代でもキャッシュレスが浸透しているとはいえ、いざと言うときの現金という心理は強い。キャッシュレスがデフォルトの決済手段としても、最後の砦として現金があることの安心感は大きい。
バスではないが、通信やシステムトラブルにより突然使用できなくなり決済不能で混乱したことは何度もある。その最後のお守り的な現金が使えない不安を払しょくするシステム構築や対応マニュアルの策定は必要だろう。
日本有数のバス事業者が実証実験とはいえ、バス王国の福岡市内で実施する意義はこのあたりにあるのかもしれない。キャッシュレス「でも」払える安心感と、キャッシュレス「しか」使えない不安には大きな隔たりがある。よって多くの知見を積み重ねて、安心してキャッシュレスバスに乗れるようになるかどうかが問われそうだ。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。