日本独自の規格である軽自動車。経済的で取り回しがしやすく、車種によってはボディサイズからは想像できないほどの広い室内など、多くのメリットがある。しかし、その根底にあるのはあくまでも実用性。いやいやちょっと待ってほしい、世の中にはホットな軽自動車だってあるのだ。

文/木内一行、写真/スズキ、ダイハツ、三菱、FavCars.com

■スズキ・アルトワークス 「マニアも驚愕のDOHCターボ+フルタイム4WD!」

ワークスの特徴でもある大型フォグランプを装備したエアロバンパーやボンネットのエアスクープは、ひと昔前のチューンドカーを彷彿させる。走行風を効率よく取り入れるためにオフセットされたナンバープレートもスパルタンな印象だ

 数々のテクノロジーが生まれ、多くの最新技術が投入された1980年代に巻き起こったパワーウォーズ。スポーツカーや大型車だけでなく、軽自動車やRVまで最高出力を競い合ったわけだが、そんななかで生まれた驚きの軽自動車がアルトワークスだった。

 それまでも、ミニカやミラにターボモデルやスポーツバージョンはあったが、ワークスは別格。アルトはすでにターボやツインカムを発売していたが、ワークスは軽自動車で初めてツインカムターボエンジンを搭載したのだ。

 そのF5A型は、EPI(電子制御燃料噴射装置)や大型インタークーラーなどを採用して64psを発生。しかも、レッドゾーンが9500rpm回転からという超高回転ユニットなのだ。

 そして、これがきっかけで軽自動車の64ps自主規制が設けられたことは有名なハナシ。

 また、駆動方式もFFだけでなく、ビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDが設定されたこともトピックだった。

 こうした他を圧倒するメカニズムだけでなく、内外装もそれに見合ったド派手なもの。

 エクステリアは廉価版を除き、フォグランプ内蔵のエアロバンパーやサイドステップ、バックドアスポイラーなどを装着。ボンネット上には、インタークーラーに走行風を取り入れるエアスクープも設置された。

 インテリアでも、左右非対称のバケットシートや小径4本スポークのステアリングなどを採用。市販車のレベルを超えた内外装で、クルマ好きをアッと言わせたのである。

アルトワークスの中古車をもっと見る ≫

■三菱・ミニカダンガン「市販車初の5バルブエンジンでライバルに対抗」

 軽自動車最強という称号を手に入れたアルトワークスだったが、それを猛追したのが三菱のミニカ。1989年にモデルチェンジした6代目には、歴代最強モデルのダンガンがラインナップされた。

 このダンガン、何がスゴいのかというとエンジン。軽自動車のみならず、市販車として初めてDOHC5バルブエンジンを搭載したのだ。

 550cc直3の3G81型をベースに、排気3、吸気2という5バルブヘッドを組み合わせ、ターボをドッキング。

 さらに、軽自動車初のローラロッカアームや軽3気筒エンジン唯一のバランサシャフトのほか、オートラッシュアジャスタやノックコントロール付き電子進角といったメカニズムを搭載。

 最高出力は自主規制により64psだが、市販車初の5バルブDOHCターボというインパクトはとてつもないものだった。

 駆動方式は当初はFFのみだったが、後にワークスに立ち向かうべく世界初のHCU(ハイドロリック・カップリング・ユニット)式フルタイム4WDも追加された。

 ルックスも、大型エアロバンパーやルーフスポイラー、ボンネットエアスクープなどでスポーティさと機能性を両立。マフラーのフィニッシャーは斬新なトリプルテールパイプだ。

 このダンガンがデビューした1989年といえば、セルシオやR32スカイラインGT-R、ユーノス・ロードスターなどが生まれた年。そんなビンテージイヤーには、こんなブッ飛んだ軽自動車も登場していたのだ。

ミニカの中古車をもっと見る ≫

■ダイハツ・リーザスパイダー「オープンエアと爽快な走りを楽しめるスペシャルティ」 

ハッチバック車のルーフをAピラー以降からクォーターピラーまで取り払ってフルオープン化。リアエンドにはベルトラインスポイラーが装着される。ボンネット上のエアスクープは、走行風をインタークーラーに導くためのものだ

 前出のアルトワークスやミニカダンガンがそうだったように、1980年代は軽自動車でもハイパワーが求められ、最新テクノロジーが投入された時代。そんななか、1986年にダイハツが送り出したのが軽スペシャルティのリーザだ。

 全高を抑えた半円球形のフォルムはそれまでの軽自動車とは一線を画すもので、室内もゆとりのラウンドスペースを確保。新たな軽自動車のトレンドリーダーとして話題となったのだ。

 そして、1991年にはオープンモデルのスパイダーを追加。クォーターピラーまで取り払ったフルオープンボディとし、ソフトトップを収納するためのスペースを確保するために2シーター化。基本的なデザインはクーペモデルと同じだが、見た目の爽快感は満点だ。

 インテリアもオープン化に合わせてアップデートされ、バケットタイプのシートはプリセーム(人工皮革)表皮を採用。MOMO製のステアリングも投入している。

 ちなみに、エンジンはSOHCターボのみ。軽自動車の新規格導入後に追加されたため660ccのEF-JL型で、最高出力は64psを発揮する。

 また、ボディ強度や剛性を確保するために、各部に補強部材を追加。運動性能や安全性の確保にも余念がないのだ。

 ターボエンジン搭載のオープンカーとはいえ、ワークスやダンガン、さらにはほぼ同時期に登場したカプチーノやビートとは大きくキャラクターが異なるリーザスパイダー。こんな遊び心のあるオシャレな軽自動車が再び登場してほしいものだ。

リーザの中古車をもっと見る ≫

■ダイハツ・コペン「着せ替え可能ボディが斬新すぎる、希有な軽スポーツ」

 現代の軽自動車は室内空間を追求したモデルが多く、ハイトワゴン系が主流。実用性重視のラインナップというわけだ。

 しかし、2004年にデビューしたコペンは誰もが手軽に楽しめる本格オープンスポーツとしてヒットし、今でもファンに愛されている。

 2014年に登場した現行モデルは、電動開閉式ルーフを備えるオープンボディを採用し、FFレイアウトにターボエンジン搭載という大枠は初代を踏襲。その一方で、3つの異なるキャラクターをラインナップして大きな話題を呼んだ。

 最初にリリースされたのがコペン ローブ。力強いマスクやシャープなウエストラインが特徴で、スポーツカーとしての躍動感や流麗さを表現したという。

 続いて発表されたのがコペン エクスプレイ。コンセプトを「タフ&アグレッシブ」とし、ダイナミックさを強調した外観とするとともに、室内にも斬新な意匠が取り入れられた。

 そして、最後発となったのがコペン セロで、「親しみやすさと躍動感の融合」をコンセプトにした雫のような一体感のあるスタイリングを採用。インテリアも水平基調のインパネでスポーティさを強調した。

 こうして3種のコペンが揃ったわけだが、最大の特徴は新骨格構造「D-Frame」と内外装着脱構造「DRESS-FORMATION」を採用したこと。これにより、樹脂製外板パーツや灯火類を交換することが可能となり、ユーザーが好みのデザインやカラーに着せ替えすることができるようになった。これは量産車では世界初の試みだ。

 復活したアルトワークスやライバルのS660が生産終了になるなかで、10年以上も販売されている現行コペン。希有な存在として、まだまだ頑張ってほしいものだ。

コペンの中古車をもっと見る ≫

記事リンク

前の記事

徹底的なパワートレイン効率化で驚きの30.0km/L達成 4代目ワゴンR 一部改良インプレ【10年前の再録記事プレイバック】

次の記事

N-BOX盤石の強さ スペーシア・タントとの3強は揺るがず!? 軽自動車新車販売ランキング[2024年8月期]

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。