日本の新しいリーダーが、来る2024年9月27日に選出される見込みです。候補者は9名と過去最多、政治とカネの問題や物価高対策、国防問題や地方創生、少子高齢化など、課題山積ななか、誰が次の日本のリーダーになるのかは、関心が高いところですが、残念ながら自民党員以外の人にとっては見守るしかない状況。それでも、何かが変わるかもしれないという期待は高まります。

 新しいリーダーに期待したいことはたくさんありますが、やはりクルマに関係する仕事をしているものとしては、クルマに関連する政策には注目をしています。特に、クルマにかかる税金の見直しは、日本の基幹産業を守るためにも、ぜひとも着手してほしいと思います。

文:エムスリープロダクション/アイキャッチ画像:Adobe Stock_mrcats/写真:Adobe Stock、PHOTO AC

購入・所有・使用のすべてに税金が課せられている

 クルマを購入したり、所有したり、使用したりする際に課せられる税金としては、「自動車税/軽自動車税(種別割)」「自動車重量税」「自動車税/軽自動車税(環境性能割)」「消費税」、そしていわゆる「ガソリン税」があります。もちろんクルマに関するサービス(レンタカーなど)を利用しても、消費税がかかりますし、修理や作業をお願いすれば、その部品代や技術料・サービス料に対して、また消費税が課せられます。

 これらの税金のうち、クルマの取得時にかかるのが、自動車税/軽自動車税(環境性能割)、そして消費税です。これに加えて、新車で購入する際には、「自動車重量税」も課せられます。さらに毎年4月1日時点の所有者には、「自動車税/軽自動車税(種別割)」が課せられます。

クルマの購入・所有・使用に関しては、自動車税(種別割)、自動車重量税、自動車税(環境性能割)、消費税、そしていわゆるガソリン税と、主なものだけで5種類もある(PHOTO:PHOTO AC_ ponta1414)
自動車税(種別割)は、新車登録時や車検時に課せられるもの。毎年4月1日時点の車検証上の使用者に納税義務がある(PHOTO:Adobe Stock_umaruchan4678)

 と、ここまででも何種類もの税金が複雑に課せられているわけですが、使用するためにはさらにガソリン税を納めなければなりません。「ガソリン税」は、揮発油税と地方揮発油税をあわせたもので、1.0Lあたり53.8円(本則28.7円/L+暫定25.1円/L)となかなかの税額。ガソリンにはほかにも、石油石炭税(2.8円/L)なども課せられており、本体価格とこれら税金を合わせた金額に、さらに10%の消費税が課せられています。ガソリン税と石油石炭税をあわせると、1.0Lあたり56.6円にもなります。

 たとえば、1.0Lあたり160円だとすると、このうち本体価格は、たった88.85 円(160-ガソリン税+石油石炭税56.6円+消費税14.55円)。およそ56%が税金ということになります。たばこ(紙巻きたばこ)1箱当たりの負担割合が61.7%(2024年4月現在)ですから、それに匹敵する割合で税金を納めているのです。

ガソリン単価のうち、56.6円は税金。そこにさらに10%の消費税が課せられている(PHOTO:Adobe Stock_beeboys)

当分の間税率と2重課税状態のガソリン税は、ぜひとも見直してほしいところ

 これらのことから、特にガソリン税に関しては、かねてより問題視する声が多いです。そもそもガソリン税の53.8円/Lのうち、25.1円/Lは、1974年に道路整備のさらなる拡充のため、道路特定財源として暫定で始まったもの。30年以上が経過した2009年、道路整備が進んだこともあり、道路特定財源は廃止となりましたが、同様に道路特定財源とされていた、自動車取得税、自動車重量税とともに、使途が特定されない一般財源化されました。「道路をつくるために」と徴収されていた税金が、そのままいまは違う目的にも使われているのです。それが50年以上たったいまも、「当分の間」として期間の定めなく、そのまま続いています。

 この「当分の間」税率には、レギュラーガソリンの全国平均が3ヶ月連続で高騰すると停止され、揮発油税等の本則税率(28.7円/L)が適用されるという規定(トリガー条項)もあるのですが、2011年の東日本大震災の復興財源確保ため凍結されており、昨今のガソリン価格高騰に際しても、トリガー条項の凍結解除をすることはなく、補助金を出すことでごまかし続けました。

 いったん解除してしまうと、もとに戻すのが大変だからでしょう。ガソリン税はまた、前述もしたように、本体価格とガソリン税、石油石炭税等の合計に10%の税金をかけるという、Tax on Taxの状況。なぜ課せられた税金にまた税金が課されるのか、意味がわかりませんよね。税の制度として、望ましくないかたちなのではないでしょうか。

 私たちが平和で豊かな生活をしていくためには、税金を納めることは必要なことではあります。ただ、納得できるかたちでなければ、不信感は募るばかり。「ガソリンが高いことは脱炭素を意識するきっかけになる」という意見もありますが、クルマは(人にもよりますが)生活必需品であり、日々の生活に必要なガソリンに、納得ができないかたちで、これだけの税金がかけられている現状は、ぜひとも見直しをしてほしいところです。

国力増強のため自動車産業を応援してください!!

 国民のカーライフを応援することはまた、日本の基幹産業である自動車産業を盛り上げるきっかけにもなり、ゆくゆくは日本の国力増強につながるはず。「若者のクルマ離れ」は、もちろん価値観やライフスタイルの変化という部分もあるでしょうが、やはりクルマを所有することにお金がかかりすぎるということもあると思われ、若い人がクルマから離れていくことは、国内における自動車販売台数の減少につながっていきます。

 目先の税金ももちろん必要なのでしょうが、いま100年に一度といわれる転換期にある自動車産業ですから、ここで政府が味方してくれなくては、いくら日本の自動車メーカーの技術力が高くても、海外勢に押しつぶされてしまい、その先に日本の明るい未来はないような気がします。

 岸田文雄首相は、「自動車産業は我が国の成長産業であり、クリーンエネルギー戦略の大黒柱だ」とし、CEV補助金において国内メーカーを優遇するかのような措置も実行しましたが、ユーザーとしては、もう一歩踏み込んだ納得のいく対策が欲しかったところ。このたび選出される新総理にはぜひ、もう一歩踏み込んだ対策を期待したいです。

日本の基幹産業である自動車産業を守るうえでは、クルマユーザーへの支援はぜひともしてほしいところ。新総理にはぜひ、もう一歩踏み込んだ対策を期待したい(PHOTO:Adobe Stock_tong2530)

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