長かった猛暑の夏も一段落ですが、停車中、まだまだアイドリングストップが求められることの多いトラックドライバーは、夏の猛暑をどう過ごしてきたのか?

 車両で待機を強いられることの多い中小零細のドライバーにとって、やはり猛暑の夏は「我慢と忍耐」の試練のときのようです。長距離ドライバーのひろしさんに聞きました。

文/長距離ドライバーひろしさん、写真/長距離ドライバーひろしさん・写真AC・トラックマガジン「フルロード」編集部
*2021年9月発行トラックマガジン「フルロード」第42号より

猛暑対策は我慢と忍耐?

車内はサウナ並の温度になることもある日本の夏。トラックドライバーには我慢と忍耐力が試される季節でもある

 小倉発の長距離ランナーひろしです。

 猛暑の夏の過ごし方ですか? ええ、リアルに教えましょう。一言でいえば、それは「我慢」です! あとは夏の猛暑に耐えうる「忍耐力」です! これ以外に夏を乗り越える対処方はありません。

 430休憩や休息時間でのアイドリングストップ? 正直にいうと無理です。そんなことしたら、体力回復もできず事故の元になります。

 「夏対策で冷却シートやいろいろなアイテム使っています」って人もいるでしょうが、付け焼き刃程度の効果しかないと思います。

 最近は地球温暖化対策で、CO2削減の方針をトラック業界、荷主様も重視しています。素晴らしいことだと思いますよ。ディーラーからはオプションで「蓄冷クーラー」なども発売されていますし、荷主先では待機時に「アイドリングストップ厳守」がルール化されている現場も多いです。

 ただ、言わせていただきたいですが、まずはディーラーオプションの「蓄冷クーラー」、はっきりいって役に立ちません。新車時に新品取付けして数年は使えるのですが、そのうち壊れますね、間違いなく。まぁ電気製品なので寿命がありますし、ディーラーオプションだから壊れやすいとかいうことではないと思いますが……。

 壊れてないにしても、近年の連日30度を越える日が続く過酷な環境下だと、車内は冷えません。「若干涼しいかな?」ってレベルです。クルマのエアコンと同レベルを求めたらキツいですねー。

 ちなみに僕のクルマにも、「蓄冷クーラー」は搭載されています。すでに壊れていて、温い風しか出てきませんけどね。貴重なベッドスペースに、横幅100cm奥行き10cm程度の、壊れた蓄冷クーラーが無駄に鎮座しています。壊れていますので当然使っていません。

 待機時は窓を全開にして、ひたすら我慢しています。窓を全開にしていると虫が入ってきたりするので鬱陶しいですけどね。ちなみに車内に居るよりは、クルマの外の日陰に出ていたほうが涼しいですね。

無用の長物と化しているひろしさんのトラックの蓄冷クーラー

アイドリングストップをお願いされても……

 よくある話ですが、荷主先で待機中、どうしても我慢できずにエンジン掛けてエアコンを作動させてしまうこともあります。すると当然の話ですが、「アイドリングストップお願いします」って注意されます。

 モノの言い方ひとつと思いますが、たまに「待機中はエンジン停止ってルール、知っていますか?」って上からモノを言われることも多々あります。まぁルール破っているのはこちら側ですから、当然っちゃ当然ですよね。

 ただ我慢にも限界ってものがあります。例えば朝6時くらいに受付したとして、どんどん太陽が高くなっていきます。夏の日差しに4時間も晒されれば車内は高温間違いないでしょ? そりゃエンジン掛けてエアコン作動させますって。

 「事務所内もCО2削減のためエアコン切って仕事しています」って話なら喜んでエンジン切りましょう。でも、注意しに来た「あなた」はクーラーの効いた事務所に居て、運転手には灼熱の車内で待機って、それじゃ話の筋が通らないでしょ? 「あなたもエンジン切った運転席で4時間待機してみます?」って言いたくなります。

 ……と、屁理屈こねてみましたが、構内ルールはルールです。大人なら守らなければいけません。それに楯突いて出禁になっても困りますから、渋々言うことは聞きます。待機におけるあるある話だと思います。

 一部の荷主には、ドライバー待機室みたいなのがあって、作業できるようになったら電話で呼び出ししてくれるなどのシステムもありますが、全国的に見ても少数派です。多くの荷主は並び待機が主流ですからね。並び待機の場合、トラックから離れようものなら順番飛ばされまくりになりますからね。

待機時間が長すぎる!

 そもそも荷降ろしにしても積み込みにしても、受付から数時間待機させるのが当たり前になっていることに問題があると思います。1~2時間なら早いほう、3時間~4時間待機っていうのがザラですね。

 受付して即呼ばれるなんか奇跡に近いです。時間指定しといて指定時間に到着しても待機させられることもありますからねー。ほんとヤレヤレですよ。

アイドリングストップより、待機時間を短縮するほうがエコじゃない!?

 これもあるあるですが、どーせ待機時間が長くなるなら4時間越えてくれたほうがいいです。なぜなら4時間停まっていれば分割の休息時間になります。あと6時間停まれば「分割10時間」の休息時間になりますからね。

 デジタコで管理されているので、3時間30分くらいで呼ばれると、長時間待たされた上に、休息時間も取り直さないといけない。法律で決められている「連続8時間」か「分割10時間」の休息のために途中でまたまた停まらなければいけません。

 関東~九州間、約1200kmの長距離を、それでどれだけ進めますか? って話です。拘束時間や休息時間のために、地元に帰れず家にも寄れず、車内で寝て次の航海へ旅立つ。完全に悪循環でしょ? そんな環境のトラック業界に、憧れだけで入って来た新人ドライバーが長続きするはずありません。

 今回のテーマとは若干違った内容になってしまいましたが、運送業界は自力でいろいろな問題をクリアできる大手だけで成り立っているわけじゃありません。

 言い方は悪いですが、走ってナンボの中小零細企業の運転手のリアルな声を聞かないと、問題解決に繋がらないと思います。「炎天下のアイドリングストップ」にそんなことを考えました。

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