ブレーキチューンといえば、まず初歩はパット交換。だが、大きく制動力をアップさせるのに重要なのはキャリパーとローター交換だ。このキャリパー&ローター交換と同時に行われることが多いのがローター径のアップである。ではなぜローター径を大きくしたいのか?

◆ブレーキローター径を大きくするメリットとは

ローター径を大きくすることのメリットは大きく分けて2つある。1つはローター径を大きくすることで、単純に制動力をアップさせられるということ。

テコの原理と同じで、回転の中心から遠ければ遠いほど小さな力でその回転を止められる。回転の中心に近いほど、大きな力でなければ、その回転を止めることができない。そのためローター径が大きくなると、これまでと同じ力でブレーキパッドを押さえつけてもブレーキが効くようになるのだ。

車種によっては純正キャリパーをそのまま大きなローターに組み合わせるキットが売られている場合もある。この場合、ビックローターとセットでキャリパーをオフセットするためのステイがついてきて、そのステイによってキャリパーをローターに合った位置にすることで、キャリパーもパットもそのまま制動力を底上げすることができる。

もうひとつローター径を大きくするメリットがある。それが大きなローターに合わせた形状のパッドを使えることだ。これにはキャリパー交換も必須になるが、大きなローターに合わせてローターのできるだけ外径の大きい部分に沿った形で長いパッド形状にすることができる。

それによってパットの面積を大きくできるので、摩擦できる面積も増えるし、ローターの外側の方をつかみ抑えることで、効率よく制動力を引き出すことができる

またローター径が大きくなると、ローター自体の体積も大きくなるので、同じ減速をして同じ熱が発生したときに体積が大きい分、ローターの温度も上がりにくくなる。そのため同じ状況で走ってもローターの温度を抑えることができ、熱のダメージを緩和することができるのだ。そのため、ローター径を大きくするとブレーキパッドへの負担が減る。

例えば、サーキット走行をしているときに、これまでかなり金属成分の多いスポーツパッドでなければ耐えられなかったようなシチュエーションでもローター径を大きくしておくと、温度が下がりそれほどの制動力も必要とされないため、ストリートパッドに近い金属成分の少ないブレーキパッドを使うことができるようになる。

そうするとブレーキパッドの価格も抑えられるし、パッドやローターも減りにくく、超寿命になる。ホイールも汚れにくくなる。

◆メリットもあればデメリットも。しっかりと理解してから交換しよう

デメリットとしては、ブレーキローターが大きく重くなることによってバネ下重量が増えてしまうことと、装着できるホイールに制限が生まれてしまうことがある。

ローターは大きく重くなるほどサスペンションのスプリングよりタイヤに近い側の、いわゆるバネ下と呼ばれる部分が重くなってしまう。この部分が重くなるとタイヤの路面追従性が悪くなりやすい。そのため制動力が十分にあり、特にブレーキローター径をアップする必要がなければ、そのままの大きさの方が足周りの路面追従性は高いので、ハンドリングは良い傾向にある。

もう一つ問題になるのは装着できるホイールだ。ローターが大きくなると、その分スペース的に厳しくなり、装着できるホイールに制限が生まれる。16インチのホイールが装着できたクルマが、17インチ以上のホイールしか装着できなくなるなど、使えるホイールが制限されてしまうのだ。

またスポークがストレートなタイプではキャリパーと当たってしまい使えない。湾曲したスポークを使ったコンケーブしたフェイスのホイールでないと装着できなくなったりする。そういったデメリットもあるチューニングがローター径のアップなのだ。

ただブレーキキャリパーやローターを交換するチューンは見た目にも大きく変わり、ドレスアップ効果も高い。またホイールいっぱいのサイズのキャリパーローターは迫力がありかっこいいと捉える人も多い。

そういった見た目の効果を狙ったブレーキ、キャリパー、ローター交換チューンと言う手もある。その場合には、バネ下重量が増えたり、ホイールを選ばなければならないなどある程度の制限もあるが、見た目と安心感のある制動力、安定したペダルタッチのブレーキを手に入れられるメリットは大きい。

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