相変わらず落ち着きなく上がったり下がったりを繰り返す円相場。円安の影響で食料品などの値上がりが増え、我々の生活にも多大なる影響が及んでいる。そうした中で、円相場は我々庶民にとっても気になる、というより放ってはおけないところだが、ちなみに自動車業界にとっては円高と円安のどちらがいいの!?

※本稿は2024年8月のものです
文:国沢光宏/写真:日産、マツダ、トヨタ、ホンダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年9月26日号

■自動車業界にとっては「円安」大歓迎

為替想定レートを155円という円安傾向に設定している日産は、円高へと進んでいる現在ではかなり不利

 我が国の自動車業界にとって円高がいいか円安がいいかと聞かれたら、瞬時も迷うことなく「円安!」と答える。160円を超える円安になれば美味しいことばかり!

 日本の工場で100万円の生産コストのクルマを作ってアメリカに持って行けば、同じクラスのライバル車より圧倒的に安い仕入れ値になる。ライバル車と同じ価格で売れば笑いが止まらないくらいの利益を出せます。

 また、現地工場で生産して販売したクルマの利益が1台あたり2千ドルなら、100万台売って20億ドル。1ドル=120円だと2400億円。これが160円だと3200億円になり大儲けだ!

 こう書くと「クルマを作る原材料の調達コストが上がる」という人もいるけれど、販売価格における輸入原材料価格の割合なんか上を見たって5%にならない。無視していいレベルです。

 円高になるとすべて厳しい方向。輸出するクルマは利益率が下がり、おそらく100円以下の円高になったら儲からない。現地で生産するクルマに関しちゃ赤字にならないが、日本円に換算すると利益率が下がってしまう。

 ちなみに自動車メーカーは「為替想定レート」で決算の予想をしている。想定レートなら予想どおり。想定レートより円安に振れたら増益。円高になると減益だ。

 もう少し正確に書くと、輸出比率の高いメーカーほど円高になったら厳しいということになります。

 ということで2024年度における各社の為替想定レートをみると、日産が一番安くて155円。すでに150円を上回る円高になっているうえ、先日発表された2024年度上四半期の利益を見たら99%減! 

 このままだと日産の2024年度決算は赤字を視野に入れた相当厳しい数字になるだろう。

 日産以上に輸出比率の高いマツダも150円で、さらなる円高になると大幅な減益になること間違いなし。

 トヨタといえば145円。トヨタの場合、輸出と現地生産のバランスが取れているため、145円を超える円高になっても耐えられると思う。

 最も円高を想定しているのはホンダの140円。しかもホンダは輸出比率ほぼゼロ。現地で上げた利益を日本円にする分だけの減益で済む。

 という点ではホンダが一番強いし、あまり困らないということになる。気になるのは「どのくらいの円高まで耐えられるか?」だ。

 考えてみたら2年前は120円台だった。4年前だと100円台。健全な経営&クルマ作りをしているメーカーなら100円になっても耐えられると思うが、円安に助けられているメーカーは相当厳しいと考えます。

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