かつてクルマにアンテナは付き物であった。今もそれは変わらないが、フィルム式があったりシャークフィンタイプであったりと姿はさまざま。とりわけ最近の新車を見るとシャークフィンが当たり前となりつつあるのはお察しの通り。でもなんでかつて隆盛を極めた”あのアンテナ”は消えてったのか!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWeb編集部
■未だカーラジオ人気は健在!! でもアンテナの姿は激変
ディスプレイオーディオが普及し、コネクティッド対応のものも珍しくなくなってきた昨今、車内でのエンターテイメントシステムも多様化している。
それまで主力だったCDやDVDといったメディアではなく、USBなどの外部メモリやストリーミングサービスを用いて音楽や映像(もちろん同乗者が)を楽しむことも珍しくなくなってきている。
その一方で根強い人気を誇るのがラジオではないだろうか? 通勤時間帯に常に聞いているお気に入りの番組がある人や、道路交通情報を聞くためにラジオのチューニングを合わせる人、または営業車にラジオしかついていないのでBGM代わりにラジオを付けている人までさまざまだろうが、未だに聞いている人は少なくない。
そんなラジオを受信するために必要不可欠なものがアンテナだが、近年のモデルはほとんどがシャークフィンタイプを採用しているが、なぜここまで普及したのだろうか?
■電動式めっちゃ憧れたなぁ…今やシャークフィンが2本なんてのもザラ
古くからクルマに乗っている人や旧車を愛する人にとって、ラジオアンテナといえば金属製のロッドタイプのイメージが強いだろう。多くの車種は運転席側のAピラーに内蔵されており、ラジオを聴くときは手でスルスルと伸ばして受信感度を高めていたのだ。
また一部の車種ではネジ式となっていて立体駐車場や洗車機に入れる際にはクルクルと回して取り外す、という作業が必要なものも存在していた。
一方、上級車種になるとアンテナも電動式となり、ラジオをONにすると自動的に伸びるのがステータスで、それらの車種の多くはトランクにアンテナが備わっていたのである。
その後は折りたたむことができるショートアンテナが採用される時代が長く続いたが、現在は一部の商用モデルや安価なモデルを除き、シャークフィンアンテナが主流となっている。
このシャークフィンアンテナとは名前の通りサメのヒレのような形が特徴的なアンテナで、2000年前後に登場すると瞬く間に多くの車種に採用されるようになった。
その理由はスタイリッシュであり、走行時に風切り音が発生しにくいといったメリットが多かったからに他ならないのだが、近年ではそれ以外の理由もあってシャークフィンアンテナの採用車が増えているのだ。
その理由とは、ラジオの電波以外のものも受信する必要が増えたからで、前述のコネクティッドシステム用の通信機能や、海外で普及している衛星ラジオの受信など、さまざまなものを受信できるような内部構造となっているのである。
そのため日産アリアではシャークフィンアンテナが2つルーフに備わっており、そのうちのひとつは衛星からの高精度測位情報を受信するためのもので、これによってより正確なナビゲーションやプロパイロット2.0のハンズオフ機能の拡充にも役立っている。
そういう観点でみると、シャークフィンアンテナを装着する車両が増えたのは時代の当然の流れということができるだろう。
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