毎日利用している路線バスを乗り継いでどこまで行けるのだろうか。今回はなるべくお金を使わず愛知県の知多半島を縦断してみた。本稿では前編としておどろきのコミュニティバスの実態をお届けする。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■刈谷駅からスタート!
スタートは愛知県刈谷市のJR刈谷駅だ。平日なので多くの通勤通学の乗客が行き交っている。橋上駅舎の改札出て地上に降りるとバス停が見えてくる。刈谷駅南口バス停からは刈谷市の公共施設連絡バス、東京駅行きの夜行バス「ドリーム知多号」、そしてこれから乗車する東浦町のコミュニティバス「う・ら・ら」が発着する。
しばらく待っているとブルーの車体のバスがやってきたので、運賃を支払い乗車する。筆者のほかにも数人の乗車があったが、15分ほどでJR緒川駅東口に到着した。途中は2停留所しかなくあっという間だ。
■100円だけど乗継券でさらにお得に!
JR緒川駅は知多半島の北部、東浦町にある。JR武豊線が町内を南北に走っているが、東西に移動する公共交通機関がないため、東浦町が運行するコミュニティバス「う・ら・ら」が活躍している。全6系統9路線のバスが12月31日と1月1日を除く毎日運行され、誰でも1乗車100円で乗車することが可能だ。
バス停を降りると何台かのバスが待機していて、順次発車していく。これらの乗り継ぎがスムーズにできるようになっているようで、利便性を考慮したダイヤが設定されているようだ。10分ほどの待ち合わせでやってきた環状線という大型の路線バスに乗車する。
ここからは東浦町を西へ、知多市や阿久比町の境まで移動する。市街地を抜けのどかな田園地帯を越えていくと東が丘という団地までやってきた。マルス東が丘店というバス停で下車する。
ちなみに違う系統のバスであれば乗り継ぎが可能で、最初のバスを降車する際に申し出ればもらえる乗継券を次のバスで渡せば無料で乗り継ぎができる。
■市町の枠を超えて乗り継げる便利さ!
マルス東が丘店というスーパーの前にあるバス停で下車し、次は隣町となる阿久比町のコミュニティバスに乗り換える。交差点の向かい側に設置されたバス停が次に乗車する東が丘バス停だ。徒歩で数十メートルという近さで、ちょうどバスがやってくるところでうまく乗車できた。
時刻表を調べた時には乗り換えは6分だったが、途中道路工事を行っていて迂回した分だけ時間がかかっていたようだった。数分の時間調整を行った後に出発した。
最初に乗車したバスもそうだが、この知多半島にある市町はお互いの路線バスがうまく乗り継ぎができるように、市町の外にもバス停が設置されている。東浦町のうららは乗車した刈谷市や大府市、知多市のバス停が設置されていて、それぞれ相互に移動することが可能だ。
■ハイエースコミューターにピンポン?
次に乗車したのは阿久比町循環バス「アグピー号」である。阿久比町は知多半島の中部に位置し、町内には知多半島道路と名鉄河和線が南北に走っているが、東西への移動にはバスが欠かせない。系統は2つあり、見分けがしやすいようにブルーライン、オレンジラインという名前がついている。
車体もカラーリング施され、どちらのバスが来たのか分かりやすい。年末年始以外は毎日運行され、運賃は無料だ。本数はそれほど多いわけではないが、利用は多いようで駅に向かうにつれてほぼ満席となるほどだ。
東が丘から約30分で名鉄阿久比駅に到着した。電車に乗り換える人が降車し、乗っているのは筆者を含め2人だけになった。ここで電車との接続のため15分ほど停車するようなので、一旦降りて撮影することができた。車両はいわゆるバスではなくワゴンタイプのハイエースコミューターで定員は14名。よって普通免許では運転できない。
車内は座席全てにビニールカバー、乗務員席との間には仕切りや除菌用アルコールが設置されており、対策がしっかり取られているように感じた。また乗降口に近いところには優先席のカバーがかけられ、各座席近くには降車ボタンが設置され、通常のバスと変わらない設備だ。
バス停名が書かれた路線図が車内に貼られているので、初めて乗車する人でも安心して確認することができる。またこの駅からはもう1つの系統であるオレンジラインにも乗継が可能で、しばらくすると後ろからやってくるのが確認できた。
出発時刻になると電車からの乗り換え客を乗せて走り出した。この先のアピタバス停で筆者は下車となった。待ち時間込みで50分ほどの長い乗車だった。
■毎日運行ではないので注意!
降車後は次のバスがやって来るまで待機する。バス停が2つ並んでいるが、ここからは半田市の公共交通バス「ごん吉バス」に乗車する。やってきたバスもワゴンタイプだが、フルラッピングされたとても派手なバスである。そして違う市町のバスに乗るので乗車時の仕組みが変わる。
運賃が1乗車100円で、車内に降車ボタンがないので乗車時に降車バス停を乗務員に伝える仕組みになっている。運賃は仕切り板の下に募金箱のようなものが置かれていて、そこへ投入する。またこのバスはごん吉バス岩滑小線、アピタルートという路線で毎日運行されているわけではない。
この路線はもう1つ半田市内にある商業施設「パワードーム半田」へ向かうパワードームルートの2つのルートがあり曜日により行き先が変わる。このアピタルートには月・水・金の日のみの運行だ。コミュニティバスは毎日運行とは限らないので、乗り継ぎには下調べも必要だ。
アピタ半田店を出発したバスは駐車場の中を走行して市内の中心部まで走行していく。7分ほど乗車して「西尾信用金庫西」バス停で下車した。
■市町をまたいでも便利なのがいい!
今回は知多半島をゆくコミュニティバスを乗り継いでどこまで行けるのかをレポートした。コミュニティバスというと運行本数の問題や、鉄道との接続がうまくいかず敬遠しがちにだが、知多半島では市町をまたいでも乗り継ぎができるようにダイヤ設定されていて、バス停が市町の外にある等、便利な一面もあった。
また使用車両にも路線や利用者の状況に応じてさまざまであり、仕様も違っているのが興味深い。今回は刈谷市をスタートして半田市まで移動してきた。この先どこまで行けるのか、次回は知多半島南部をお届けする。
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