タイヤメーカー、ミシュランのシンボル「ミシュランマン」はあまりに有名。実は世界で最も古い企業キャラクターとされているのだが、なぜこんな姿をしているのか? 調査してみると、歴史と密接に関わり、時代に応じて変化してきたことがわかった。誕生秘話とともにヒストリーを解説しよう。

  文/沼尾宏明 Webikeプラス  

1898年生まれの126歳! 当初は上流階級風だった?

 ミシュランのロゴとともに描かれる白く丸いキャラクター「ミシュランマン」は、バイクやクルマ好き以外にも広く愛されている。ミシュランが生まれたフランス本国などでは長く「ビバンダム」「ビブ」と呼ばれ、こちらの名前で覚えている人も多いことだろう。

 果たしてミシュランマンはどんな経緯で生まれたのか? キッカケとなったのは「タイヤの山」だった。時は1894年(明治27年)、フランスのリヨンで行われた万博にまでさかのぼる。

 ミシュランは1889年の創業。まだ草創期だったが、万博にブースを出展した。入口の両側に大きさの異なるタイヤが山のように積まれており、そこへ創業者であるミシュラン兄弟の弟エドワールが「腕をつけたら人間になるじゃないか」と兄のアンドレに言ったのがミシュランマンの始まりになった。

 

 

 その後、アンドレは広告デザイナーのオ・ギャロと会い、彼がビール会社のために描いたものの採用されなかったデッサンに目を留める。そこには太った男と「ヌンク・エスト・ビバンダム (ラテン語で“いまこそ飲み干す時”の意)」というセリフが。

 当時のクルマは貴重品だったが、快適性や耐久性は望めなかった。そこで釘やガラスなどを入れたグラスをタイヤ男に持たせれば「空気入りタイヤは障害物があっても乗り心地がよい」というアピールになるとアンドレは思った。

 アンドレがオ・ギャロにイメージを話し、1898年4月、ミシュランマンが誕生した。 諸説あるが、世界で最も古い企業キャラクターがこうして生まれたのだ。

 最初の姿は丸メガネを掛け、葉巻を吸い、ワインを飲んでいるが、これは当時クルマに乗ることができた上流階級の姿を反映させたためと言われている。

 

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「飲み干す」からビバンダムの名が! 体が白い理由は?

 誕生当初はまだ名前が正式に決まっていなかった。決まったのは1898年7月、パリ・アムステルダムレースが開催された時だ。アンドレが、あるドライバーに「あっ、ビバンダムが来た!」と呼ばれたのを聞き、ポスターの“bibendum(飲み干す)”でミシュランマンが知られていることを知り、以後「ビバンダム」と呼ばれるようになった。

 現在、フランス以外の国では「ミシュランマン」として知られ、公式HPなどでもミシュランマンと呼ばれているが、いまだビバンダムの愛称でも親しまれている。

 なお、ミシュランマンが白い理由は、当時高級品であったタイヤは一つ一つ白い布や紙で包まれていたからとも、当時のタイヤが真っ黒ではなかったからとも言われている。タイヤの素材で使われる天然ゴムは白。後に耐久性を増すため、カーボンを混ぜ、タイヤが黒になった。

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タイヤ幅に合わせ、体が太く変化! 表情も穏やかに

 体のタイヤが細かったミシュランマンだが、変化し始めたのは1920年代。以前に比べてタイヤの幅が広くなったことに合わせ、ミシュランマンのタイヤもワイドになり、胴体のタイヤも減った。また、体格も表情もかなり親しみやすくなっている。この傾向は時代が進むごとに顕著になっていくのだ。

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1980年代により愛らしく! 2000年代には3D CGに進化!

 1980年代に入ると、頭身が下がって一段とポップに。同時に体のボリュームもアップしている。これはさらにワイド化するタイヤに合わせたデザインだろう。この姿は1990年代も続き、「ビバンダム」と言えば、このイメージを持っている人も多いかもしれない。

 2000年代からはなんと3D CGで登場。愛らしさと新しさをミックスした印象となった。なお、2000年には英ファイナンシャル・タイムズにて世紀のロゴマーク賞に、アドバタイジングウィークで「ミレニアムのアイコン」に選ばれている。

 

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現行デザインは2017年から、姿は変化しても使命は変わらない

 そして現在のデザインは2017年に登場。少しスリム化され、スマートになった。

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 ミシュランマンは、ミシュランの親善大使であると同時にシンボルでもある。誕生当初からミシュランを代表し、世界中の至る場所に登場。ユーザーに対し、ミシュランという企業に親しみや親近感を与え続けている。

 今まで見てきたとおり、時代とともに愛らしく進化していくのが印象的だったが、使命は変わらない。誕生当初はパンクで困るドライバーを助けていたが、現在も快適性や安全性など様々な悩みを解決するシンボルとして活躍しているのだ。

 

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詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/parts-gears/369357/

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