人間だってクルマだって、第一印象が大事。それだけに、フロントマスクが見る人に与える印象は非常に大切だ。その一方、後続車に見つづけられる“お尻”も重要だったりする。そこで、時代を先取りした斬新なリアビューのクルマたちを紹介しよう。

文/木内一行、写真/トヨタ、日産、マツダ、CarsWp.com

■日産・チェリー「日産初のFF車は猫背だったという事実」

クーペは、美しくダイナミックと評されるプレーンバック・スタイルを採用し、デザイン性だけでなく空力性能にも貢献する。また、丸形のテールランプは「チェリーテール」と呼ばれ、古くから旧車のカスタムに流用されるほど人気

 リアビューが特徴的なクルマは決して少なくないが、チェリー・クーペはそのなかでもなかなかのツワモノだ。チェリーは1970年に発売された大衆小型車で、当初は2/4ドアセダンとバンというボディバリエーションだった。

 そして、翌年に登場したクーペがとにかく斬新。「プレーンバック・スタイル」と呼ばれるデザインは、大きな面積のリアクォーターパネルと、そこにあしらわれる「マッハライン」が特徴的で、リアウィンドウはサンルーフのごとく空に向けて取り付けられている。こうした造形もあり、ワゴンやバンを思わせるプロポーションというか、猫背になっているのだ。

 また、独特な意匠の丸形テールランプが、リアビューの個性を引き立てていることは間違いない。

 ちなみに、日産初のFF車がこのチェリーだったということもお伝えしておこう。

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戦後と自動車 リアスタイルの美しいクルマ カタログを見る際に重要なのは? 【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

■日産・エクサ(2代目)「着せ替えは実現せずも、斬新なテールで勝負」

 1986年にリリースされた2代目エクサ。米カリフォルニアのNDI(ニッサン・デザイン・インターナショナル)が担当したエクステリアは日本車離れしたデザインで、クーペとキャノピーという2タイプを設定。Tバールーフも備え、オープンエアも楽しめた。

 そんななかで、特に斬新だったのがテールランプ。ダイアゴナルスリットと呼ばれるデザインパターンを用い、個性的なリアビューに仕立てたのだ。

 こうした遊び心あふれるデザインは「さすが北米発」と言えるもので、スピーカーグリルやペダルにもこの意匠は採用された。

 なお、リアハッチ部分は脱着式になっており、北米ではクーペとキャノピーを着せ替えることが可能だった。

 しかし、日本では法規上それが認められなかったため、2タイプのボディバリエーションを設定して販売したという。

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■マツダ・RX-7(最終型)「前から見ればスポーツカー、後ろから見れば警察官?」

 量産車で唯一ロータリーエンジンを搭載するスポーツモデルとして、四半世紀に渡って活躍したRX-7。

 3代目のFD3Sは、全長と全高を縮小しながら全幅を拡幅し、ワイド&ローが強調されてよりスポーツカーらしいフォルムになった。コンパクトなキャビンやダブルバブルルーフ、張りのあるフェンダーなども走りを感じさせる造形だ。

 そして、このスタイリングは生産終了から20年以上経った今でも、世界中で高く評価されているのだ。

 そんなFD3Sのなかで、唯一気になる部分が、スモーク処理されたテールランプとリアガーニッシュ。ジッと見ていると、なんとなく赤塚不二夫先生の某マンガに登場する警察官キャラに見えてこないだろうか……。

 美しくカッコいいスタイリングと、真逆の印象を受けるちょっぴりユニークなリアビュー。このギャップがむしろクセになる!?

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■日産・レパードJフェリー「日本では受け入れられなかった尻下がりスタイル」

ジャガーなどをイメージさせる尻下がりのフォルムは、これまでの国産車では見られなかったもの。優雅な雰囲気満点な一方、クセが強すぎて受け入れられなかった。なお、ドアハンドルやフューエルリッドも丸みのデザインで統一する

 レパードといえば多くの人があぶデカに登場したF31をイメージするだろうが、個性が際立っていたのはその次の世代のJ.フェリーだ。

 エレガントをキーワードにデザインされたエクステリアはエクサ同様NDIが手掛けたもの。クルマ全体をひとつのカタマリとして表現し、ボンネットからトランクにかけて続く緩やかなアーチラインが美しい。

 その一方、リアビューは独創的だ。「尻下がり」と表現される特徴的なシルエットを持ち、横一文字のテールランプは両サイドに向かって細くなる弓形となっている。

 これらにより、高級車の持ち味である威圧感や存在感とは無縁の柔和なデザインになってしまったのだ。また、見ようによってはナメクジのようにも……(失礼)。

 クルマとしての完成度は決して低くなかったが、デザイン面がマイナス要素となり日本での販売が低迷した不運のモデルだった。

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■WiLL Vi「独創的な絶壁ルーフは馬車をイメージしたもの」

 トヨタを含む5社による異業種合同プロジェクト「WiLL」から誕生したコンパクトカー、WiLL Vi。同プロジェクトの統一コンセプトが「遊びゴコロと本物感」だけあり、WiLL Viも遊びゴコロ満点のクルマになっている。

 エクステリアは各所に個性的なモチーフが取り入れられており、フロントマスクはおおらかなフード面に縦長の四角いヘッドライトを配して和やかな表情を構築。

 ボディサイドはエッジを効かせたブリスターフェンダーが力強さを表現。そして、なんといってもクリフカットと呼ばれる馬車を連想させるルーフエンドが最大の特徴だ。

 フロントと同じ造形をテーマとした和やかなリアデザインに、この斬新なルーフ形状を組み合わせたリアビューはまさに奇想天外。

 ちなみに、標準ルーフとキャンバストップの2タイプがラインナップされていた。

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■プリウス(先代)「先進のハイブリッド車は後ろ姿も最先端なのか」

 世界初の量産ハイブリッドカーとして1997年にデビューしたプリウス。どの世代でも、前衛的なデザインで時代をリードしてきたが、4代目でもその方向性は不変だった。

 全体的なフォルムは、プリウス伝統のトライアングルシルエットを継承しつつ、ハイブリッドカーとしての先進性を強調。

 フロントはトヨタ独自のキーンルックを取り入れつつ、さまざまな面を組み合わせることで、ダイナミックで動きのある特徴的なマスクを生み出している。

 リアもフロントに負けじと個性的だ。縦型のテールランプはブーメランのような形状で、スポイラーからバンパーサイド下端に流れる動きを点灯時に表現したという。

 これまでも縦型のテールランプは存在したが、乗用車でここまで大きいものは珍しい。しかも、点灯した際の奇抜さは唯一無二。LEDが普及したからこそ可能になったデザインだろう。

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