2024年5月に公布された「新物効法」の規定・基準値等を検討していた政府の合同会議は、とりまとめ案にパブコメ等で寄せられた意見を反映し、おおむねで内容を決定した。荷主、運送会社、行政だけでなく、トラックドライバーや消費者にも影響しそうなその内容とは?
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
「新物効法」の基準がおおむね決定
物流の「2024年問題」に代表されるように、トラックドライバーの労働環境は依然として厳しい。その改善を目指して2024年5月に物流効率化法(新物効法)が改正・公布された。
新物効法に基づいて、荷主や物流事業者への新しい規定を検討していた国土交通省・経済産業省・農林水産省の合同会議は、2024年11月11日、とりまとめ案にパブリックコメント等で寄せられた意見を反映し、今後の取り扱いを座長に一任した。
つまり、同法の公布から1年以内に施行するとされた規定、および同2年以内とされた規定など、その内容がおおむね決定したものとみられる。
新物効法では、特に荷量が多く影響が大きい事業者を、国が「特定事業者」に指定することになっている。指定を受けた大手事業者は、物流統括管理者(CLO)の選任や、中長期計画の策定、国への定期報告が義務付けられる。
とりまとめ案によると、荷主企業の指定基準値は「取り扱い貨物の重量9万トン以上」とされた。倉庫業では「貨物の保管量70万トン以上」で、運送業では「保有車両台数150台以上」だ。
この基準は、荷主企業の上位3200社程度が該当する見込みで、倉庫業では同70社程度、運送業では同790社程度が該当する見込みとなる。基準値は各種統計等から全体の50%をカバーする水準を算出したものだという。
特定事業者に義務付けられる中長期計画は、ドライバー1人当たりの運送ごとの貨物重量の増加、荷待ち時間の短縮、荷役時間の短縮などに関連して、実施する措置、目標、実施時期などを記載する。毎年度提出することを基本としつつ、中長期の計画に変更がない場合、5年1度提出する。
定期報告は「特定事業者」への指定の翌年度から提出が義務付けられ、チェックリスト形式でのルールの遵守状況や、自由記述での事業者との連携、荷待ち時間等の状況を記載する。
さらに、企業の努力が消費者や市場からの評価につながるように、物流改善の取り組みや実施状況のランク付けなど「見える化」する仕組みの創設を含め、新物効法の枠組みと併せて具体化する必要があるとされた。なおランク評価は、優良事例が他の事業者に横展開できるような方策とすることに留意するそうだ。
特定事業者への指定基準、中長期計画の策定、定期報告などの規定は、公布日(2024年5月15日)から2年以内に施行することとされている。
トラックドライバーへの影響は?
いっぽう、トラック運送サービスの持続可能性を確保するため、ドライバーの働き方の効率化を進めるという基本方針とその具体的な内容については、公布から1年以内に施行することになっている。
新物効法とりまとめ案より、トラックドライバーにも影響が大きそうな部分を一部抜粋して、箇条書き形式でお伝えする。
運送業に関して
●物流は多様な主体が担っているため、サプライチェーン全体の関係者が連携を図り、取組の効果を高める
●トラックドライバーの運送・荷役等の効率化は、安全確保を前提にする
●令和10年度までに日本全体のトラック輸送のうち、5割で荷待ち・荷役時間を1時間削減する
●1運行当たりの荷待ち・荷役時間を全国平均で2時間以内とする
●積載効率(積載率×実車率)50%を目指し、全体の車両で積載効率44%を実現する
●効率的な共同輸配送の仕組みとして「フィジカルインターネット」の実現を図る
行政に関して
●国や自治体は、自らが荷主となる場合は、率先してトラックドライバーの運送・荷役等の効率化に資する措置を講ずる
●国は、トラックドライバーの運転・荷役等の効率化を支援するため、必要な援助を講じ、これらの援助に関する情報提供を行なう
●国は、物資のトラックへの過度の集中を是正するため、モーダルシフトに取り組む事業者を支援する
●自動運転トラックやドローン物流等の技術開発・普及に努める
●官民連携により納品伝票、パレット、外装サイズ等の標準化に取り組む
●多様な人材にとって働きやすい職場環境を整備するとともに、その意義や魅力等について積極的な発信を行なう
●物流コストの転嫁や標準的な配送条件を提示しやすい環境を整備する
荷主と関連事業者に関して
●複数の荷主の貨物の積合せ、配送の共同化、帰り荷の確保に向けた適切なリードタイムの設定など、運行効率を向上する
●ドライバー1人で運べる貨物量を増やすには、車両の大型化も有効
●適切な入出荷日時の設定、トラック予約受付システムの導入などにより、トラックドライバーの荷待ち時間を短縮する
●パレットの導入、検品の効率化、荷捌き場所の確保などにより、トラックドライバーの荷役等の時間を短縮する
●これらの実効性確保のため関係者との連携・協力を行なう
●荷主は、ドライバーの運転・荷役等の効率化のため関係事業者が行なう取組に協力する
●荷主は、積載効率の向上等に伴うドライバーの負荷の軽減に取り組む
消費者と国民の理解に関して
●トラックドライバーの負荷軽減のための事業者の取り組みについて、国民の理解の増進を図る
●欠品時のペナルティの見直し、納品期限の緩和、外装等の汚損基準の見直し等、消費者の理解が必要
●ゆとりを持った配送日時の指定など、消費者としても再配達を避ける
●国や自治体は、集配中に駐車できるスペースの確保に取り組み、ドライバーの負荷軽減を図る
●消費者の物流サービスに対するコスト意識を浸透するため「送料無料」表示を見直す
その他
●荷主は、トラックドライバーの拘束時間を削減するため、高速道路の利用を促す
●レンタルパレット事業者は、標準仕様パレットの利用拡大、共同利用・共同回収の促進を図る
●国、自治体、民間事業者は、それぞれの立場からSA、PA、道の駅等でトラックドライバーの休憩環境の整備を進め、中継輸送やダブル連結トラック、自動運転トラック等のための拠点の整備を推進する
●国は、適正運賃を収受できる環境整備を進め、トラックドライバーの賃上げを促進する
●悪質な荷主、元請事業者に対しては、トラック・物流Gメンによる是正指導等を徹底する
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