スライドドアをもつミニバンは、子育て世代からシニアユースまで、幅広く需要がある。しかし、マツダのカーラインナップを見るとミニバンが1台も見当たらないが、少し時代を遡ると出来の良いヤツがいたはず。そう、マルチパーパスビークルをそのまま車名にした、MPVがあったじゃないか!!
文:佐々木 亘/写真:MAZDA、ベストカーWeb編集部
■2代目のキャラ変でスターダムを駆け上がる
MPVの登場は1988年にまで遡る。初代モデルは8人乗りではあったものの、リアドアはヒンジタイプで、ボディ形状もミニバンというよりもSUVに近かった。11年近く販売を続けた初代モデルに変わって、1999年には2代目モデルが登場する。
2代目MPVは、初代とは大きく変わって王道のミニバン路線。しかし、ノア・ヴォクシーやセレナ、ステップワゴンのような箱型ではなく、エクステリアデザインは2BOXで、全高の低いスタイリッシュなものだった。
SUVからスタイリッシュなミニバンへと進化したMPVは、このボディと魅惑の装備で、一気にスターダムを駆け上がる。そして、マツダを代表する名車へとなっていくのだった。
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■多彩なシートアレンジで最高の時間を運ぶ
MPVが目指したのは移動時間を快適に、人とクルマとのコミュニケーションをより豊かにすることだ。そのための最新技術と高効率パッケージが詰め込まれていたのだ。
シートは2×2×3の7人乗り。室内のフロアは段差が無くフラットで、コラムシフトと2列目キャプテンシートを採用したことで、どの席からも自由にウォークスルーで移動が可能だ。全長4750mmのボディサイズを無駄なく使い、7名がしっかりと乗れて荷物が積める圧倒的な空間を作り上げた。
リアドアは両側スライドドアを採用。KARAKURI(からくり)シートと名付けられた多彩なシートアレンジが、MPVの機能性を大きく高めている。
2列目シートは助手席側が左右にスライドする機構を持ち、キャプテンシートにもベンチシートにもできる使い勝手の良さがあった。また、シートの背面にはテーブルを用意し、さらにダブルフォールディング機構で小さく折りたたむこともできる。
さらに3列目は床下格納式。背もたれを20度刻みで3段階リクライニングすることができ、停車時にはシート自体を後ろ向きに反転させることができるのだ。するとラゲッジスペースが外向きのソファーに変身する。SUVのようなアウトドアユースも考えられたミニバンなのだ。
現代に蘇れば、ミニバンユーザーにもSUVユーザにもウケること間違いなしである。
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■ミニバンでも愉しさを与えるドライバビリティ
MPVの魅力はパッケージングにとどまらない。エンジンらしからぬ走りも大きな特徴だった。心臓部にはV6の2.5Lエンジンを搭載。IMRC(可変吸気システム)などを使い、低回転域の1,500回転付近から最大トルクの90%を発生する。
力強さと静かで耳心地の良いサウンドが、ドライバーには愉しさを、パッセンジャーには安らぎを提供する。直4の2Lエンジンと共に、どちらもレギュラーガソリン仕様だったのも嬉しかった。
当時のミニバンと言えば、広い室内だが走りはイマイチ。お父さんは運転する楽しさをあきらめなければならなかったのだが、MPVは他のミニバンとはまるで違い、ドライビングを諦めなくていいクルマだったのだ。
MPVは、現在のマツダイズムにも通ずる車両設計だった。SUVへ全力を注ぐのも悪くないが、またマツダの本気のミニバンづくりを見てみたい。
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