イギリス生まれの超高級車メーカーアストンマーティン。スポーツカーメーカーとしてはランボルギーニやフェラーリとはまた違う気品を感じさせる。今回はそんな同社を過去の名車もさかのぼりつつ、アストンマーティン独自の世界を見ていこう。

※本稿は2024年9月のものです
文:大音安弘/写真:アストンマーティン
初出:『ベストカー』2024年10月26日号

■V12ツインターボを搭載するエレガントクーペ

アストンマーティン ヴァンキッシュ。全長4850×全幅2044×全高1290mm、1910kg、5.2L、V12DOHCツインターボ、835ps/102.0kgm、8速AT、FR、定員2名、0-100km/h:3.3秒、MAX SPEED:345km/h

 歴代モデルが、アストンマーティンのフラッグシップを担ってきた名車ヴァンキッシュが、6年ぶりの復活を遂げた。

 3世代目となる新型の最大の目玉は、V12気筒のフロントエンジン車の復活だ。これまでに投入された新世代フロントエンジン車は、すべてメルセデスAMG製の4L、V8ツインターボを搭載するが、このヴァンキッシュには、アストンマーティン製の5.2L、V12ツインターボが与えられた。

 従来のV12をベースに徹底した改良を加えることで、純ガソリンのままでありながら、最高出力835ps、最大トルク102kgmというパワフルさを実現。その実力は、同社の量産モデル史上最速となる時速345kmへと繋がった。

 メカニズムには、新世代モデルでも定評のあるZF製8速AT、Eデフ、ビルシュタインDTXダンパーなどの最新技術を惜しみなく投入。さらに強力かつ安定した制動力を生むカーボンセラミックブレーキシステムも標準化している。

 その性能からは、過激なスポーツカーという印象を受けるが、内外装デザインは、美しさと贅沢さも兼ね備えた、実にアストンマーティンらしいもの。

 その優雅さを演出する秘密のひとつが、Aピラーとフロントアクスル間を長くしたロングホイールベースにあり、鼻先の長さを強調することで、往年のアストンGTを彷彿させるのだ。

 量産車であるが、年間生産台数を1000台以下に抑え、より特別な存在とする。納車開始は2025年早々の予定だが、すでに入手困難の可能性が高そうだ。

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■現在日本で新車で買えるアストンマーティン

●DBX707:3490万円

アストンマーティン DBX707

 同社初のSUVであるDBXの高性能版として、2022年に登場。車名はメルセデスAMG製4L、V8ツインターボの最高出力を707psまで強化したことに由来。過激さを増しつつも、快適さも併せ持つスーパーSUVだ。

【DBX707主要諸元】
全長5039×全幅1998×全高1680mm、2245kg、V8DOHCターボ、3982cc、707ps/91.8kgm、9速AT、4WD、定員5名

●DB12クーペ:3090万円

 2023年に登場したDB11の後継となる次世代スポーツカーの第一弾で、グランツーリスモのあるべき姿を再定義したスーパーツアラーと表現。4L、V8ツインターボと8速ATを組み合わせた2+2シートのクーペだ。

【DB12クーペ主要諸元】
全長4725×全幅1980×全高1295mm、1898kg、V8DOHCターボ、4000cc、680ps/81.6kgm、8速AT、FR、定員4名

●DB12ヴォランテ:3290万円

 DB12クーペをベースとしたオープンカーで、同等の走行性能を有する。優雅なルーフラインと高い遮音性を備える電動式ソフトトップは、俊敏な動作に加え、50km/hまで開閉が可能。シートはクーペ同様の2+2だ。

【DB12ヴォランテ主要諸元】
全長4725×全幅1980×全高1295mm、1685kg、V8DOHCターボ、4000cc、680ps/81.6kgm、8速AT、FR、定員4名

●ヴァンテージ:2690万円

 2017年のフルモデルチェンジで3代目に。2024年2月のマイナーチェンジを受け、フェイスリフト&4L、V8ツインターボを665ps/81.6kgmまで大幅に強化。現状、オープンモデルは非設定で、2シータークーペの8速ATのみとなる。

【ヴァンテージ主要諸元】
全長4495×全幅1980×全高1275mm、1605kg、V8DOHCターボ、3982cc、665ps/81.6kgm、8速AT、FR、定員2名

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■アストンマーティンの名車

 1913年に設立されて以来、数々の名車を生み出してきたが、デビッド・ブラウン傘下になって以降のモデルから7台を厳選して紹介する。

●DB4(1958~1963年)

アストンマーティン DB4

 1958年発表のDBシリーズ第2世代の2+2クーペ。軽量かつ高剛性なボディに新開発のアルミ製3.7L、直6DOHCを搭載した。

●DB5(1963~1965年)

 DB4の進化版で、映画『007』のボンドカーとして大活躍。ボディやシャシーの改良に加え、直6エンジンを4L化で高性能を図った。

●ラゴンダ(1974~1990年)

 1974年~1990年まで作られた大型4ドアセダン。直線的なスタイルと薄型フロントマスクのデザインは、1976年のシリーズ2以降の特徴。

●V12ヴァンキッシュ(2001~2007年)

 高性能なV12エンジンを搭載したフラッグシップモデルとして2001年に登場。映画『007ダイ・アナザー・デイ』での活躍も有名だ。

●ONE-77(2010~2011年:販売)

 2008年発表の限定車で、7.3L、V12・NAエンジンと6AMTを搭載する2人乗りのFRスポーツ。限定数は、その名が示すように77台であった。

●ラピード(2010~2020年)

 1960年代のセダン「ラゴンダ ラピード」の名を受け継ぎ、2009年に発表された4人乗りの5ドアクーペ。5.9LのV12搭載のFR車だ。

●シグネット(2011~2013年)

 トヨタとのコラボで生まれた同社初の小型車。ベースとなるiQを英国に輸送し、内外装を分解。内外装はアストン専用だが、パワートレーンとシャシーは共通。発売時の価格は475万円から。

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■アロンソにヴァルキリーのロードカー納車!!

専用カスタマイズが施されたAMRカラーのヴァルキリーと納車にご満悦のアロンソ

 150台限定で、究極のロードカーとして開発されたアストンマーティン初のハイパーカー、ヴァルキリーが、レーシングドライバーのフェルナンド・アロンソに納車された。

 F1マシンARM24をモチーフとしたカラーやグラフィックなど、彼の意向に沿ったビスポークが施された。同車を公道走行可能なF1と称したアロンソの初ドライブが、モナコ市街というのはF1王者に相応しい場所といえよう。

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■注目はF1でのホンダとのコラボ

鬼才ニューウェイの加入で、F1チームも大きく変わる

 アストンマーティンは1929年にル・マンに初参戦後耐久レース、スポーツカーレースに力を入れてきたが、現在は2021年に60年ぶりに復帰したF1に最も力を入れている。

 そのF1は2026年からレギュレーションの大幅変更など激変するが、パートナーとしてアストンマーティンにパワーユニットを供給するのが今やF1界の最強パワーユニットに君臨するホンダ(HRC)だ。

 さらに、F1界の優勝請負人、鬼才デザイナーのエイドリアン・ニューウェイの加入が確定している。まだF1未勝利ながら2026年以降のアストンマーティンF1には期待感しかない!

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