日本を走る路線バスとヨーロッパを走る路線バス、同じ公共の乗り物でも車体サイズにはまあまあな違いはあるという。ちょっと気になるこの件を確かめてみた。

文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(ヨーロッパの大小バスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■久々の日本で乗った路線バスへの違和感(?)

SORの大型連節車NB18

 筆者は縁あって、チェコ共和国の首都プラハに住んでいる。そのプラハの主な公共交通機関はトラムや地下鉄だが、郊外の住宅街には路線バスも多数走っている。

 筆者の住んでいる自宅前にも、地下鉄やトラムの駅まで路線バスが通っており、普段からよく利用している。

 自宅最寄りの路線は、比較的狭い住宅街を抜けていくので、大通りを走っている車両より車体はかなり小さく短い、日本で言うところの「中型路線車」が使用されている。

 ところが先日、久しぶりに日本へ帰国して、東京の実家近くの路線バスに乗車した時に「なんだか幅が狭いな…?」と感じた。

 それも日本で乗車したバスは、日本を走る路線バスの中で最もサイズに余裕のある大型路線車であって、中型路線車ではない。

 車体の長さについては、ヨーロッパで製造されている大型路線バスの多くは、単車体で12m、連節車で18mとなっており、閑散路線向けに少し短い10.5mのモデルも存在する。

ソラリス・ウルビーノの10.5メートル車

 メーカーによっては、8.5~9.5mという短い車体を作っているところもある。ただ幅については、カタログをじっくり読んで調べたこともないし、普段は考えたことも無かった。

■実は小さいようでかなり大きい?

 では実際のところ、カタログ寸法で見るとどれだけの違いがあるのだろうか。

 一部の事業者で輸入され、日本でも知られているメルセデスベンツ製大型路線バス、「シターロ」のカタログに記載されている諸元表を確認してみると、車体の長さは18(連節)/12(単車体)/10.5(単車体短尺)mの3種類で、車体幅は2.55mのみ。

日本へも導入された実績があるメルセデス・シターロ

 参考までに、現行型の三菱ふそうエアロスターの車体幅は2.49m、かつて販売されていた中型車のエアロミディは2.3mなのだから、狭く感じるはずだ。

 もちろん、これは日本の道路事情を考慮して設計されたものだから当然のこと。そもそも、単車体で12mと言えば、日本であれば特注になってしまうが、ヨーロッパの一般的な路線バスは12mが標準車体で、日本の大型路線車で一般的な10.5mはヨーロッパなら短尺ということになる。

■長さ12メートルがキホンの欧州

 長さ12mという寸法は、ヨーロッパメーカーの車両ではほぼ共通のようで、筆者の住むプラハで使われているポーランドのソラリスは、大型路線バスモデル「ウルビーノ」がシターロとまったく同じラインナップだ。

 全長18/12/10.5mに2.55m幅のボディのみ、地元チェコメーカーSORの大型路線バス「NB」は、全長18/12m、幅は2.55mで、10.5mのタイプは設定がない。

SORの大型単車体車NB12

 ただ、その代わりに日本のような中型車のモデル「ICN」が用意され、全長10.5/9.5mが設定されており、幅は少し狭い2.525mとなっている。

 現行型ICNの前モデル「BN」には、全長8.5mのモデルも存在したが、車体幅は2.525mと変わらないから、ものすごくずんぐりむっくりした見た目である。

■小型路線車ってあるの?

 なお、これよりもさらに小さい、日本で言う「小型路線車」に近いサイズのモデルはないのか、という点も気になるが、日本のように同一メーカーの別車種、というものではなく、小さい車種は専門の別メーカーが存在したりする。

チェコのいすゞが販売している小型路線バスのNovo Citi Life

 実はチェコにある「いすゞ」の子会社が、全長7.8m/幅2.435mの小型路線バス「Novo Citi Life」を販売しており、ポーランドのウッチ市へ45台を納入したほか、チェコの地方都市でも活躍している。

 もちろん、いすゞと言っても日本のモデルとはまったく異なり、フィアット製エンジンとアリソン製変速機を組み合わせたものとなっている。

■道が狭くても車幅が広い理由

 ところで、そんな幅が広い車種が多いということは、さぞや道が広いのだろうと思うかもしれないが、アメリカのような広大な大陸とは異なり、ヨーロッパの多くの都市は日本と同様、かなり狭い路地が多い。

プラハ市内の狭い路地をギリギリで通過する路線バス

 それでも車体を広くする理由は、座席数の確保にあるように感じた。実際、大型車であろうが中型車であろうが、その多くは横2+1もしくは2+2配列で、座席数はかなり確保されている。

 日本と異なり、多くの路線は運転手が運賃収受を行わないため、ドア間の通路が狭くてもあまり気にしない、という点も座席数が多くできる理由だろう。

ドイツの首都ベルリンの郊外末端区間で活躍するマイクロバス

 ただし、このNovo Citi Lifeのような小型車よりさらに小型…となると、さすがにヨーロッパでもマイクロバスをベースにした車両になってしまい、実際狭い路地ばかりの都市部旧市街や、地方の閑散路線では、こうしたマイクロバスが多く活躍している。

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