最近、デジタルルームミラーを装着するクルマを多く見かけるようになった。これは従来の鏡面式ミラーを液晶ディスプレイに置き換えたもので、新車装着を中心に増えている。そんな中、今回は手軽に後付けできるKENWOODのデジタルルームミラー「LZ-X20EM」をご紹介したい。
後方視界を確実に確保出来るデジタルルームミラーのメリット
あえて条件の厳しい夜にテストを行ったデジタルルームミラー最大のメリットは、リアエンドに取り付けたカメラによって、後部座席の乗員やカーゴルームの積載状況に左右されずに後方視界を確保できるようになることだ。LZ-X20EMは、デジタルルームミラーのラインナップにKENWOODとして初めて加えられたもので、ドラレコ機能付き「ミラレコ」で培った高画質への経験を活かし、“肉眼に近い自然な見え感”の実現に注力したことが最大の特徴となる。
開発の背景には、近年になって後方をより広い視界で確認できるデジタルルームミラー型ドライブレコーダーへの人気に高まりがある。一方で、新車にはドライブレコーダー機能のないデジタルミラーの標準あるいはオプションでの装備も増加傾向にあり、その市場は今後急速に拡大すると見込まれている。さらにKENWOODによれば、ドライブレコーダーを装着済みのユーザーを中心に、デジタルミラーに特化した製品の登場を希望する声も多かったという。LZ-X20EMは、そんな状況に応える形で登場したというわけだ。
ハイフレームレートの効果で流れる様な映像に驚くLZ-X20EMの筐体は、付属のラバー製アタッチメントを使って従来のミラーの上に重ねて取り付けられる。モニター周囲のベゼルが最小幅に抑えられており、取り付けた後も違和感なくルームミラーとして使えるデザインがいい。加えて、電源を含む配線回りが可能な限り目立たなくしている配慮もある。
液晶モニターのスペックとしては、従来のミラレコ並みの10V型フルカラータッチパネル液晶を採用。解像度はフルハイビジョン対応1920×480で、この一部を切り出しつつ必要に応じて最適な範囲を表示できるようになっている。
実用性を考えて59fpsのハイフレームレートを採用
暗い場所でもしっかりと後方視界を確保する中でも注目すべきが、組み合わせるカメラのフレームレートを、より高速のハイフレームレート59fpsとしたことだ。これまでドライブレコーダーにも使われていたカメラでは、それを30fps未満とすることがほとんどだった。これはLED信号の同期こそしないものの、速い動きに対しては不鮮明となってしまっていた。
特に直近ですれ違ったクルマや風景はほとんど読み取れないレベルにあった。LZ-X20EMではこれを59fpsというハイフレームレートに対応することで、ほとんどの被写体を鮮明に映し出すことを可能としたのだ。
KENWOOD LZ-X20EMそこで1つ疑問に思ったのは、どうして一般的な60fpsではなく59fpsを採用したのかということ。事実、他メーカーの製品には60fpsで対応している製品もあるほどだ。その理由はLED信号対策にあった。
ご存知の方も多いと思うが、LED信号は直流でなく交流電源で稼働しており、眼では視認できない高速で点滅することで常時点灯しているように見せている。しかし、このことがカメラで撮影するフレームレートとの同期を生み出してしまい、無信号状態で表示される恐れが出てきてしまうのだ。
しかもやっかいなことに、日本は交流電源の周波数は東西で異なる。東日本は50fpsで西日本は60fpsとなっているのだ。そこでドライブレコーダーの多くは、このいずれにも無信号状態とならないよう、たとえばフレームレートを27.5fpsとするなど対策を施してきた。ただ、LZ-X20EMはハイフレームレートで再生することをウリとしている。そこでリアカメラとはいえ、東西のLED信号いずれにも同期しない59fpsとしたというわけである。
取材した当日は、LZ-X20EMと30fps以下のモデルとの比較デモも行われたが、その差は歴然で驚いた。30fps以下で記録した映像を見ると、近づいてくるクルマの動きや周辺の風景がぎこちなく映し出されており、1つ1つもどことなくボヤッとして見える。これは応答速度が遅いことで残像があるように見えてしまうことが要因だ。
それに対してLZ-X20EMでは、映っているすべての被写体が滑らかでクッキリと鮮明。解像度も高いことから、鏡面式ミラーとの差を感じることはほとんどないレベルだった。
Uターンして風景が大きく変わるシーンでも、本機がスムーズに映像が追従できていたことにも気付いた。ルームミラーの電子化が法律で認められたのは2016年のことだが、これは映像化されるまでの遅延が抑えられるようになったからだ。しかし実際は風景が大きく変わるシーンでは、映像での遅延が発生していた。そんな中でLZ-X20EMはビデオ処理能力を高め、遅延を大幅に減らしルームミラーとしての能力を飛躍的に高めることに成功したのだ。
KENWOOD LZ-X20EMルームミラーとしてのLZ-X20EMは、機能面でもその能力をいかんなく発揮している。その1つは映し出す映像の範囲を任意に6段階で切り替えられるようにしていることだ。これはデジタルズーム機能を使って対応したもので、画面をタッチすると現れる“+/-”キーをタッチすることで最大2倍にまで映像を拡大・縮小できる。
カメラそのものの画角は水平で約107°と決して広くはないが、この狭めの画角が却って後続車を捉えやすくしている。つまりズーム機能の組み合わせにより、後続車との距離感をつかみやすくしているというわけだ。
2つ目は表示アングルを任意に変更可能としていること。ズーム機能で映る範囲を変更すれば確認したい範囲も当然変わってくるが、そんな時でも画面上で変更操作を行えば、最適なアングルで表示できるようになるのだ。しかも後退時のリアカメラ「画角自動下降機能」も含まれていて、あらかじめリバース線を車両側と接続しておけば、シフトをリバースに入れると自動的に下向きへと切り替えてくれる。これを使えば、多くの人がその便利さを実感するはずだろう。
そして、見逃せないのがLZ-X20EMの夜間や暗い場所での表示能力である。従来の鏡面式ミラーの場合、夜間になるとほとんど後続車のヘッドライトの光しか見えないのが当たり前だった。それが本機では夜間でも車種が識別できるほど鮮明に映し出せていたのだ。しかも、この明るさなのに今までのデジタルルームミラーのようにノイズが増えたり、白飛びが目立ったりしない。
KENWOOD LZ-X20EMこれはリアカメラのイメージセンサーに、オムニビジョン社の「PureCel Plus-S」技術を搭載したCMOSを採用したことが大きい。さらに独自の映像・車載技術でチューニングする「Hi-CLEAR TUNE(ハイクリアチューン)」により、画質を総合的に向上させた。このセンサーのダイナミックレンジの広さと、KENWOODの映像技術が暗いシーンでも明るく鮮明に映像を表示してくれているのだ。ここまでの表示能力を発揮できるなら、鏡面式ミラーなら見えにくくなる雨が降った夜間でも後方の視界確保にプラス効果を生み出すのではないだろうか。
今回、LZ-X20EMを使用して感じたのは、デジタルルームミラーとしての鮮明な表示が、安全運転にプラスとなってくれることへの期待だ。後方視界に優れるだけでなく、59fpsというハイフレームレートにより、すれ違うクルマや風景までも鮮明に捉えることができるわけで、この分野では可能な限り鏡面式ミラーに近づけたデジタルルームミラーということができるだろう。
運転の安心安全には周囲の状況把握が欠かせない。その意味において、LZ-X20EMが持つこの実力の高さは、従来のミラー型ドライブレコーダーやバックモニターからさらに一歩進化した存在となるに違いない。日常の運転の安心安全を高めたいと考えている人とっても、本機は待望のルームミラーとなってくれることだろう。
KENWOOD デジタルルームミラー「LZ-X20EM」の製品情報はこちら鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。