海を直進して大幅なショートカットを実現する海上交通。どんなフェリーも大抵はクルマなしで利用可能ながら、ネックになるのが乗り場まで行く足と、着いてから先に向かう移動手段だ。

文・写真:中山修一
(有明海のフェリーと公共交通にまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■有明海の端っこをカバーするフェリー

30分の船旅が楽しい島原鉄道のフェリー

 熊本県と長崎県を隔てる有明海には、各所にフェリーが数種類就航していて、陸路よりも短く・速く移動できるようになっている。

 その中で、有明海の最も南寄りをカバーしているのが、熊本県・天草の鬼池港と、島原半島の南端近くにある口之津港の間およそ8.4kmを、約30分で結ぶ島原鉄道フェリーだ。

ファンネルに描かれた社紋がカッコいい

 鬼池港/口之津港ともに、大きな街からは結構離れており、マイカーやレンタカーを使っての移動でも、ボリューミーに感じるかもしれない距離感だ。

 そんな立地の港まで公共交通機関を使って、フェリーに徒歩乗船したい……鬼池港までの公共アクセス事情を先に別記事で紹介したが、今回は熊本県側からフェリーに乗って着いた先・口之津港に注目してみよう。

■何気にすごいかも!? 口之津港の公共アクセス動向

 フェリー乗り場がある口之津港の近くを、島原鉄道の鉄道線が通っていたことがある。ところが2008年に部分廃止されてしまったため、現在の公共交通機関はタクシーを除いてバスだけと言えそう。

口之津港ターミナルは、2020年3月に複合施設の機能を持たせて移転リニューアルオープンした

 中心部分に雲仙岳が聳える島原半島には、海岸線をトレースしながらグルリと周回するような形で、主要道路の国道251号線が敷かれている。

 口之津港もまた国道沿いに位置しており、バスがあるなら251号がメインルートになるのは明白に思える。

 問題はバスが半島の西回りなのか東回りなのか。東回りの場合、途中に島原の街がある関係で、最低限の公共交通が用意されていそうな印象。

 実際どうなのかと見てみれば、やはり島原が始発/終点のバスがシッカリ出ていて、島原鉄道(島鉄バス)が運行する加津佐・島原線がそれだ。

 口之津港に着いて島原方面へ行こうと思った場合、早朝便を除き行先表示に「島原駅前」と出るので分かりやすい。

 その逆、島原方面から口之津港へ来る際、日中に出ているバスの最終的な行き先は「加津佐海水浴場前」がほとんどなので少々トリッキー。

 口之津港は途中の停留所にあたり、行先表示を見て「ほんとにこれフェリー乗り場行くの?」のような、一瞬不安を覚えるかもしれない。

 道路が半島の周囲を回っているとはいえ、そこまで交通需要が大きくないローカルエリアに位置するフェリー乗り場ということで、公共交通機関は半島の東西どちらか片側を経由する路線しかないのがセオリーかな? と考えてしまう。

 ところが予想とは裏腹に、西側を回って諫早方面まで抜けるバスも用意されていて、やろうと思えばバスで島原半島をほぼ1周するプランが組めそうな熱量の高さに圧倒された。

略図ながら半島をグルっと回れそうな雰囲気タップリの路線図

 合理化で公共交通機関がどんどん廃止され、一つの目的地に対するアクセス手段がワンアンドオンリー化していく昨今、選べるほどバス路線が充実しているフェリー乗り場というのも中々すごい気がする。

■すぐ乗り継げる? それとも待たされる?

 熊本県側の鬼池港から口之津港に着いたとして、バスの路線自体は存在していても、ちゃんと繋がるかが重要なポイント。東回り・西回り各路線の出発時刻と、フェリーの到着時刻を照らし合わせてみた。

 すると、待ち時間が12分のときもあれば32分、47分、52分もあり、直近の接続可能なバスがない時間帯もあったりと、便ごとにバラバラだった。鬼池港へのアクセスと同様に、口之津港も事前に接続具合を調べておくのが安心かも。

島原方面には日野ブルーリボンIIが充当

 2024年9月に、天草市街(本渡バスセンター)→鬼池港→口之津港→島原駅前のルートを組んで行ってみた際は、10時台に本渡バスセンターを出るバスに乗車して、鬼池港で22分、口之津港で32分の待ち時間だった。

 港の所在地が半島の南端ゆえ、フェリー乗り場へのアクセス用バスとしては運行距離が長めであるのも特筆すべき点。

 島原駅前まで約35kmあり、所要時間は1時間18分で運賃は1,200円。諫早方面はさらに延びて堂々の51km・1時間39分、運賃1,650円のダイナミックな路線バス旅になる。

■長崎らしい「アレ」来ます

 口之津港発着のバスを運行している島原鉄道は長崎バスのグループ会社だ。長崎バスの特色といえば、「いすゞキュービック」をはじめ1990年代に作られた古いバス車両が今も第一線で使われているところ。

紛うことなきあのレジェンド、柿の種テールがそこに!!

 グループ会社なら、島原鉄道のバスにもネオクラシック車が混じってるんじゃない? そんな期待を抱こうとしていた矢先、「アレ」が現れた。

平成時代のいすゞキュービックが令和を走る

 現在の四角いタイプの前に普及していた汎用テールランプ(通称:柿の種)が付いた、2ケタナンバーのキュービックだった。さすが長崎、島原半島にも古いクルマが現役だ!!

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